2012年12月05日

『高地戦』

高地戦朝鮮戦争、それは終わらない地獄。
2011年度のアカデミー賞外国語映画部門韓国代表を始め、大鐘賞・青龍賞でも高い評価を得たこの韓国の骨太戦争映画。
涙を流すほどの感動映画ではないのに、戦場シーンの見事な撮影方法や『J.S.A.』のパク・サンヨンらしい脚本に、戦争の無意味さだけが強烈に心に残る作品でした。

同じ民族なのに政治的立場の違いから朝鮮半島に死体の山を築かざるを得なかった韓国軍と朝鮮人民軍。そのあらゆる悲劇がこの映画には詰まりに詰まっていると言っても過言ではないほど、この映画は見応えがあると思うのです。

例えば防諜隊出身のカン中尉が人民軍への内通者の有無を調べるために入隊した最前線で戦うワニ中隊が人民軍と物々交換で交流をしていたという真実。これは『J.S.A.』でも描かれていた後方の高官は敵対し最前線の兵士は平和的交流を持つという皮肉を込めた悲劇なので、まだ多少心穏やかに見ることが出来るのですが、ワニ中隊の浦項での悲劇、人民軍との果てしない奪い合いを繰り返すだけのエロック高地での悲劇、そして停戦協定が結ばれたにも関わらず発効されるまでの最後の12時間まで殺し合いを続けねばならない悲劇はまさにこの世の地獄としか言い様がないんですよね。

しかもなぜ若造のシン大尉が臨時中隊長であることに誰も異議を唱えないのかというワニ中隊の異様さも、生き残るために仲間を殺したという浦項での悲劇を知ればより辛い。
エロック高地で果てしなく続く戦闘も、死体を埋めるために地面を掘れば先日埋めた死体が出てくるという現実も見ているだけでも辛い。
なのに、やっと2年以上待ちに待った停戦協定が結ばれ、川辺で「あばよ!」と別れを告げた韓国軍と人民軍が戦場でアメリカ軍の空爆により敵味方関係なく殺されていくなんて、もはや辛いも悲しいも通り越した感情しか残らないんですよ。

人民軍の凄腕女性スナイパー“2秒”が血塗れの写真を見て心痛んだ胸にナイフを刺され死んでいく姿も、「おまえらが逃げ回っているのは、戦う理由を知らないからだ。この戦争は1週間で終わる」と言った人民軍将校が戦う理由を忘れたと言って息を引き取っていく姿も、どれも戦争の無意味さをより強烈にするものばかり。

北も南もない。正義も悪もない。まだ終戦を迎えない朝鮮戦争にあるのは悲劇だけ。

そんな朝鮮戦争をドラマでは無意味な戦争と描きつつも、高地での戦場シーンではステディ・ハンディ・クレーンを見事に駆使したカメラワークで見せ、中共軍が攻めてくる恐ろしさを雷雨と照明弾を使って見事に見せ切る演出や技術の高さも見応えたっぷりだったこの映画。
改めて韓国映画の底力は凄いと実感しましたよ。

深夜らじお@の映画館は韓国政府は好きになれませんが、韓国映画は相変わらず好きです。

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acideigakan at 21:13│Comments(6)clip!映画レビュー【か行】 

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これはDVD待ちになるかなぁと思っていたら運良く鑑賞の機会を得られました。朝鮮戦争末期の激戦地を舞台に停戦協定成立から発効までの12時間の間に行われた最後の戦闘に臨んだ兵士 ...
2. 高地戦  ★★★★  [ パピとママ映画のblog ]   2013年01月20日 20:43
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3. 高地戦  [ まてぃの徒然映画+雑記 ]   2013年02月02日 12:08
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この記事へのコメント

1. Posted by かのん   2012年12月05日 22:19
とても骨太な戦争映画でしたね。おっしゃる通り感動をさそうような作品ではありませんが、とても心に深く刻まれる作品でした。

こんな無意味な戦争が未だに終戦していないという事実こそ悲劇なのかもしれませんね。
2. Posted by ジョニーA   2012年12月05日 23:30
“2秒”があと10人ほどいたら人民軍の
圧勝だったかも知れませんねー
ジオン軍のララア少尉のようでした!
3. Posted by にゃむばなな   2012年12月06日 16:21
かのんさんへ

こんな無意味な戦争がまだ「停戦」状態にある朝鮮半島。
どれだけ多くの命が失われても終わろうとしないのが虚しく感じますよ。
本当にこういう戦争映画を撮れる韓国映画界は凄いですわ。
4. Posted by にゃむばなな   2012年12月06日 16:21
ジョニーAさんへ

「2秒」が10人もいたら最強部隊ですよ。
そしてそんな北朝鮮もイヤだ〜ですわ。
5. Posted by 健太郎   2013年02月19日 23:55
2 こんばんは。こちらも、宮城では年が明けてからの公開でした。

久しぶりに本来の意味での韓流映画、内容も朝鮮戦争なので楽しみにしていましたが、期待通りでした。

戦場の悲惨さ、無情さが全編に溢れているのに、所々に在るほのぼのとしたシーンや南北の交流が切なかったです。

戦場のリアルさと悲惨さが凄まじく、キャラクターはお約束ばかりなのに、戦場での一つ一つのエピソードがどれもリアルでした。

迫力ある映像とも相まって、久しぶりに「観るべき韓国映画」でした。
6. Posted by にゃむばなな   2013年02月20日 15:20
健太郎さんへ

これが韓国映画の実力とも言うべき作品ですよね。
しっかりとした脚本に、迫力ある映像。
本当に「観るべき韓国映画」でしたね。

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