2013年01月18日

『もうひとりのシェイクスピア』

もうひとりのシェイクスピアウィリアム・シェイクスピアに纏わる作者別人説だけを扱った歴史ミステリーかと思いきや、実はエリザベス1世を巡る愛憎劇や後継者問題をも巻き込んだ見事なミステリー。ただ映画として突き抜けた面白さがないのは、ローランド・エメリッヒ監督による新境地開拓という弊害なのでしょうか。

500年近くに渡り、英文学最高峰と称賛され続けているウィリアム・シェイクスピア。しかし人物像がよく分からないうえに学歴から見て法律や古典の知識が必要とされる作品を書いたとは思えないなど、作品と共に多くの謎も残しているんですよね。

そんな劇作家が書いたとされる名作は全てオックスフォード伯エドワード・ド・ヴィアによって書かれたのではないかという「作者別人説」に歴史的興味を抱いたのでこの映画を見たのですが、まさかこの一見何の関係もなさそうな「シャイクスピア別人説」と「オックスフォード伯とエリザベス1世の秘めたる愛憎劇」と「エリザベス1世の後継者争い」が最後の最後で最もドロドロした真実を明かすという形で繋がるとは思いもしませんでしたよ。

特にチューダー家の性癖が狂っているのは有名ですが、ただエリザベス1世とオックスフォード伯の子供がサウサンプトン伯だけならまだしも、まさかオックスフォード伯までもがエリザベス1世の子供だったとは…。近親相姦もここまで来ると逆に驚きよりもそれ以外の感情が先に来ちゃいますね。
そしてよくよく考えれば、オックスフォード伯もサウサンプトン伯もエセックス伯も全員異父兄弟であり、この3人に敵視されながらもこの中から王位継承者を選ぼうとしていたウィリアム&ロバート・セシル親子は実は本当にいい人だったというのも、何か複雑な感情ですよ。

逆にウィリアム・シェイクスピアは本当にどうしようもないくらいにズル賢く、金に汚い小物でしたね。
他人の作品を自分のものと偽るだけでなく、真の作者に恐喝までするんですから。そりゃこんなズルをしてまで名声を得ようとする男を見ていたら、ベン・ジョンソンが自暴自棄になるのも分かりますよ。カール・ルイスでなくてもその悔しさは分かりますよって、それはまた別のベン・ジョンソンでした。

しかしそれにしても四大悲劇にチューダー朝を立て直すための市民蜂起を促す意味を込めたりなど、単にオックスフォード伯が自分の実力を知りたいだけの浮世貴族とは描かずにここまで政治色を混ぜてくるとは思わなかっただけに、いやはや当初思っていた歴史ミステリーとは違った歴史ミステリーとして楽しめましたよ。

ただ見終わった後に何か心に深く残るものがなかったのは残念なところ。単なる歴史劇として描かず、現代の舞台で語られるお話という形で見せてくれるところなどが凄く「匿名」というミステリー要素を醸しだしていただけに、ちょっと勿体無いという感想も残ってしまいました。

深夜らじお@の映画館が調べたところ、シェイスピア夫人の名前はアン・ハサウェイだそうです。

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7. 「もうひとりのシェイクスピア」  [ YUKKOのI LOVE MOVIES ]   2013年01月22日 23:42
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8. 「もうひとりのシェイクスピア」みた。  [ たいむのひとりごと ]   2013年02月09日 16:28
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9. 映画『もうひとりのシェイクスピア』を観て  [ kintyre's Diary 新館 ]   2013年04月16日 23:40
12-103.もうひとりのシェイクスピア■原題:Anonymous■製作年、国:2011年、ドイツ・イギリス■上映時間:129分■観賞日:12月22日、TOHOシネマズシャンテ■料金:0円(1カ月フリーパス) □監督・製作:ローランド・エメリッヒ◆リス・エヴァンス(オックス
10. もうひとりのシェイクスピア 難解ながら見応えあり!  [ 労組書記長(←元)社労士 ビール片手にうろうろと〜 ]   2013年04月25日 09:07
 16世紀のイングランド。エリザベス一世統治下のロンドン。宰相として権力を振るい、王位継承者にスコットランド王ジェームスを据えようと企むウィリアム・セシル卿は芝居を忌み嫌い、それが民衆にもたらす力を恐れて弾圧する。それを目の当たりにしたオックスフォード...
11. もうひとりのシェイクスピア  [ いやいやえん ]   2013年06月18日 09:43
「シェイクスピア別人説」を元にした作品。 現代。なにやら急ぎ駆けつけた語り部が物語を語り始めると、舞台は一気に16世紀へ。 第17代オックスフォード伯エドワード・ド・ヴィアは伯爵という立場のため自分の名前で戯曲を発表出来ずにいたため別人を装って発表しよ
12. もうひとりのシェイクスピア  [ 悠雅的生活 ]   2014年01月29日 20:39
羽根ペンと空白の紙。暗黒と異端。ある秘密。

この記事へのコメント

1. Posted by ノルウェーまだ〜む   2013年01月19日 17:50
にゃむばななさん☆
途中から登場する愛憎劇など、サプライズで楽しませてくれる中々のミステリーだったにも関わらず、ちょっと物足りないかんじがしたのが本当に残念でしたね。
2. Posted by にゃむばなな   2013年01月19日 22:16
ノルウェーまだ〜むさんへ

これなら作者別人説だけでも良かったのでは?とも思うのですが、脚本としてはそこそこ巧いと思っただけに、ローランド・エメリッヒ監督の新境地開拓は前途多難な感じがしますよ。
3. Posted by YUKKO   2013年01月22日 23:54
私こういうイギリス貴族のドロドロ大好きなんです。はまってしまいました。若き日のエドワード・ド・ヴイアを演じたジェイミー・キャンベル・バウアーにも少々くらくらしました。しかしイギリス貴族社会なんでもあり!でしたね
4. Posted by にゃむばなな   2013年01月23日 14:52
YUKKOさんへ

こういうドロドロした愛憎劇がお好きですか。
まぁ本当にイギリス王室って何でもありだと思える内容でしたね。
5. Posted by オリーブリー   2013年01月25日 01:47
こんばんは。

ミステリアスなシェークスピア別人説と、まさかのドロドロ劇に思いのほか楽しんでしまいました(笑)
英国王室、最近は落ち着いてますね(苦笑)
6. Posted by にゃむばなな   2013年01月25日 21:10
オリーブリーさんへ

ほんま、最近の英国王室はこの頃と比べると平和ですよね〜。
というか、この時代が凄すぎただけでしょうけどね(苦笑)
7. Posted by たいむ   2013年02月09日 16:32
英国王室とこんな風に絡んでくるなんてね。
しかも最後のは痛恨の一撃。
切り先ジャックだけでなく、シェイクスピアまで王室関係者のされちゃった(笑)
8. Posted by にゃむばなな   2013年02月09日 18:29
たいむさんへ

あの最後はまさに「痛恨の一撃」そのものでしたね。
ほんと、あの国の王室は凄いですわ。
9. Posted by 悠雅   2014年01月29日 20:50
わたしはかなり楽しんで観れましたよ。
ドロドロはかなり苦手だけれど、
別人説が主題ではなく、一人の男の物語だと思ったことや、
その時代らしい芝居小屋や舞台劇の有名なシーンやグローブ座なども登場したり、
冒頭にデレク・ジャコビが案内人で登場して、芝居仕立てにした構成も面白かったです。
10. Posted by にゃむばなな   2014年01月30日 16:37
悠雅さんへ

個人的にはこのドロドロとした人間関係の末に重いものを期待していたんですよね。
それがなかったのはちょっと残念でしたわ。
でも芝居仕立ての構成は私も好きです。

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