2013年03月16日

『愛、アムール』

愛、アムール愛する人との別れが迫った時に見えてくる真実の愛。
第85回アカデミー外国語映画賞に輝いたこのミヒャエル・ハケネ監督の作品。老老介護を扱っていながらも介護問題ではなく老夫婦の愛を主軸に描いているのですが、個人的には今一つ乗り切れない映画でした。それは私がまだ未婚者だからなのか、それともまだ真実の愛を知らないからなのかは分かりませんが。

まずこの作品を見て感じたこと。それは同じく死が夫婦の仲を引き裂こうとする『ラスト・プレゼント』とはある意味対極にある映画だということ。
というのも死を迎える妻視点で描かれた韓国映画に対して、こちらのオーストリア映画は残される夫視線。となると当然まだ死を迎える立場にない我々は後者の方を身近に感じるはずなのですが、ただ問題なのはこの残される夫の行動に共感できるか、もしくは理解できるか。ここでこの映画の評価は分かれてくると思うのです。

で、個人的にはこの夫の行動はちょっと共感しにくい部分があるんですよね。これは見る人の考え方や生き方にも関することなので別にこの夫の行動が悪いとは言いませんが、でも日を追うごとに病状が悪化していく医者嫌いの妻を自宅で介護し、徐々に自分自身も憔悴していくことが「本当の愛」と言えるのかとも思えてくるんですよね。

もちろん死を迎える愛するパートナーの我儘を聞いてあげること、自分を犠牲にしてまでも聞いてあげることは「愛」と言えるでしょう。でもそのパートナーの我儘を制し、施設に預けるという相手を思うが故の自分の我儘を押し通すことも「愛」だと思うのです。相手を思うからこそ自分自身も大切にすることも「愛」だと思うのです。

既婚者の方からすれば未婚者が何を言っているのだ、本当の愛をまだ知らんのねと思う方もいらっしゃると思います。こればっかりは身内の死や性行為と同じで経験しないといくら考えても分からないこと。想像の範囲内では分からないものがある世界。

でも自分の介護により憔悴していく夫を見て妻は喜びはしないと思うのです。つまり死を迎える者の我儘を叶えてあげたいという『ラスト・プレゼント』に対して、残される者の我儘を押し通そうとするこの作品は既婚者ではない第三者的視点からしか見れない私にとっては「これもまた愛なのかな」としか思えないんですよね。

てな訳で最後に愛する妻に対して「尊厳死」を選ぶ夫の行動も、第三者的視点からしか見れない私にとってはそうするしかなかったのが辛いとしか思えない結末。これもまた私が人生経験を重ねれば違う見方が出来るのかも知れませんが、現時点での私には評判通りの傑作としては映りませんでした。

深夜らじお@の映画館はまだまだ人生経験が足りないようです。

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acideigakan at 17:43│Comments(6)clip!映画レビュー【あ行】 

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この記事へのコメント

1. Posted by オリーブリー   2013年03月18日 22:00
こんばんは。

夫婦の事はその夫婦にしか分からないですからね〜(笑)
その数だけ愛の形があるってことで、それを全うしたと思ってあげようと思いました。
2. Posted by mig   2013年03月19日 01:31
こんばんは

>愛する人との別れが迫った時に見えてくる真実の愛

コレに尽きますね。

けどにゃむばななさんは好きではないんですね。
私は、これまでのハネケ作品としては正統派で、癖がないけどこれも傑作だと思います。
3. Posted by にゃむばなな   2013年03月19日 16:19
オリーブリーさんへ

なるほど、こういう愛もある。そう捉えるべきなんですね。
私もまだまだ人生経験が足りませんわ。
4. Posted by にゃむばなな   2013年03月19日 16:20
migさんへ

私は未婚者ゆえにまだ子供の立場でしか夫婦というものを見ることが出来ないので、好きにはなれませんでしたね。
でも既婚者になったらまた見方が変わるのかも知れませんね。
5. Posted by 一夫巣   2013年03月19日 23:32
出だしの強烈な映像。その後の淡々と日常を描く映像。凄いカメラワークだと思いましたが。リアリティが凄い。教え子が訪ねてきたときの二人の輝きもきれいに描かれていました。知的な作業に従事してきた二人は人生を生ききったといえるのでしょう。
なんどか挿入される、お使いごとのひととその人にいくばくかのお金を渡すシーン。いいですねえ。
6. Posted by にゃむばなな   2013年03月21日 17:31
一夫巣さんへ

なるほど、そういうところにもこの夫婦像というのを垣間見ることが出来るのですね。
こういうご指摘を頂戴すると私の未熟さを痛感しますよ。

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