2013年03月27日

『ザ・マスター』

ザ・マスター相互依存の先にある自由。
新興宗教サイエントロジーをモデルにしているとはいえ、これはカルト教団を描いた作品ではなく、心の自由を得ようともがく2人の男が過ごした長い時間を描いた作品。それゆえに一般ウケはしないと思われますが、それでもPTA好きにはこの素晴らしさを存分に味わっていただくことが出来る映画だと思います。

人間というのは弱い生き物です。しかも心が傷ついたり、何かを失わなったりしない限り、そのことに気付きもしない面倒臭い生き物です。
人間というのは自由を求める生き物です。でも自分の弱さに気付かない限り、本当の自由が何かも分からない、アホな生き物です。

自分には多くの友達がいて、みんなで楽しく生きている。だから自分は弱くないし、自由でもあると考えている人がこの世の中にはたくさんいますが、ただそういう人に限って誰も本当の自由を知らないと思うんですよね。
例えるなら一緒に行ってくれる人がいないから見たい映画が見れないのを自由と言えるのか。本当に自由を得た人間なら一人でも見に行けるだろうということ。

この映画で描かれている2人。戦争や母親の入院によるアルコール依存症により心の自由を失ったフレディと、洗面所での手コキによって妻に支配されている教祖ドッド。
一見すると荒くれ者で一箇所に留まらないフレディは自由を謳歌する強者、教祖であり多くの人から慕われるドッドも権力者という名の強者です。

でも2人とも自由ではない、強者でもない。ただの心の拠り所がない淋しい男たち。
だからフレディはドッドに依存するのです。この男なら退行催眠療法で自分の心の奥底を抉り出し、自分を悩ます問題を解決してくれるだろうと期待して。
またドッドもフレディに依存するのです。この男が作る密造酒を飲めば、この男が自分の傍で反対派を暴力で抑えつけてくれれば、誰にも支配されることはないだろうと期待して。

しかし相互依存だけで自由を得ることが出来ないのは自明の理。
それに気付いたフレディはバイクに乗ってドッドから去るのです。本当の意味での自由を得るために。イギリスに呼び寄せてくれたドッドが「前世ではソウルメイトだった」「来世では敵になる」と依存に執着心を見せても去るのです。心の自由を得るために。

そして砂浜でのラストシーン。OPと同じように砂で作られた女体の隣で眠るフレディ。その砂で作られた女体はもはや元恋人のドリスではない。ただ彼の心が最も安らぐ場所。そんな場所を得た彼はついに自由を得たのです。誰にも依存しない自由を得たのです。

てな訳でホアキ・フェニックスとフィリップ・シーモア・ホフマンの一歩間違えればいつでもゲイ映画になりかねない強烈で微妙な関係性を見事に演じきった様を見るだけでも十二分に価値のある映画でした。

深夜らじお@の映画館はやはりPTA作品は奥が深いと思いました。

※お知らせとお願い
【元町映画館】に行こう!

acideigakan at 13:22│Comments(6)clip!映画レビュー【さ行】 

この記事へのトラックバック

1. ザ・マスター  [ 心のままに映画の風景 ]   2013年03月29日 23:38
第2次世界大戦後のアメリカ。 軍病院のメンタルテストで問題を指摘された元海兵隊員のフレディ(ホアキン・フェニックス)は、アルコール依存を抜け出せず、トラブルを繰り返しす日々を送っていた。 あ...
2. ザ・マスター / The Master  [ 我想一個人映画美的女人blog ]   2013年03月30日 09:46
ランキングクリックしてね ←please click 男たちの関係性を巧みに描き 第69回ヴェネチア映画祭4冠達成(銀獅子賞 監督賞・主演男優賞W受賞・国際批評家連盟賞) マニア&評論家ウケの良い、PTA ことポール・トーマス・アンダーソンの 「ゼア...
3. 過去への旅〜『ザ・マスター』  [ 真紅のthinkingdays ]   2013年03月31日 06:07
 THE MASTER  第二次大戦に水兵として従軍していたフレディ(ホアキン・フェニックス)は、 退役後もアルコール依存から抜け出せずにいた。職を転々としながら放浪して いた彼は、密航...
注・内容、台詞に触れています。『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』のポール・トーマス・アンダーソン監督、昨年のベネチア国際映画祭で銀獅子(監督)賞、男優賞に輝いた5年ぶりの新作『ザ・マスター(The Ma
5. ザ・マスター  [ 映画的・絵画的・音楽的 ]   2013年04月02日 21:54
 『ザ・マスター』をTOHOシネマズシャンテで見ました。 (1)本作は、ヴェネチア国際映画祭で様々の賞をとった作品だということと、フィリップ・シーモア・ホフマンの姿が見られるということで映画館に足を運びました。  舞台は1950年代のアメリカ。  職もなく彷徨い歩...
6. アメリカクラシック映画の域で  [ 笑う社会人の生活 ]   2013年04月07日 00:48
24日のことですが、映画「ザ・マスター」を鑑賞しました。 第2次世界大戦後のアメリカ、アルコール依存の元海軍兵士のフレディは 宗教団体の教祖ドッドに出会い関係を深めていくのだが・・・ 鬼才 ポール・トーマス・アンダーソン監督作品 作り 流れ的には前作のテイス...
7. 映画好きの、新作映画紹介!「ザ・マスター」  [ 菊次郎の映画おぼえがき ]   2013年04月09日 06:03
毎週映画好きの菊次郎が、皆さんにおすすめの映画をご紹介する動画企画「暇人映画。」今回私がご紹介している映画は「ザ・マスター」です!
8. ザ・マスター ★★★.5  [ パピとママ映画のblog ]   2013年05月11日 18:20
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』のポール・トーマス・アンダーソンがメガホンを取り、新興宗教サイエントロジー創始者をモデルに人間の深層心理に鋭く迫る問題作。第2次世界大戦後、精神に傷を負った元兵士が宗教団体の教祖と出会い、関係を深めていく様子をスリリング...
9. 映画『ザ・マスター』を観て  [ kintyre's Diary 新館 ]   2013年08月04日 22:01
12-29.ザ・マスター■原題:The Master■上映時間:138分■製作年、国:2012年、アメリカ■観賞日:3月31日、TOHOシネマズシャンテ(日比谷)■料金:1,800円 □監督・脚本・製作:ポール・トーマス・アンダーソン◆フィリップ・シーモア・ホフマン(ランカ

この記事へのコメント

1. Posted by かのん   2013年03月27日 18:24
フレディがバイクに乗ってそのまま走り去ってしまったとき、何が起きたのかよくわからずキョトンとしてしまいましたが、今思えばあれはドッドによって心を癒したフレディの真の自立への一歩だったのかもしれません。

たしかに宗教には救済という意義は存在するんですよね。でもその目的をはき違えると暴走してしまうかもしれませんね。
2. Posted by にゃむばなな   2013年03月29日 16:55
かのんさんへ

そうですね。いつまでもドッドに依存すべきではないという彼の意思なんでしょうね。
宗教は人が立ち直る一つのきっかけにしか過ぎませんからね。
依存しすぎたり、その団体が暴走したりすると危険なだけで、本来は無害なはずですもんね。
3. Posted by オリーブリー   2013年03月30日 00:07
あのバイクのシーン、何気に塩平原のレースを思い出したりしたのですが(苦笑)二人の共存の違いみたいのものが分かりましたね。
飛ばしても戻る場所を分かっていたトッドと切れたタコのように突っ走ったフレディ。
元々フレディはトッドの宗教観(?)なんてどうでも良かったのでしょうね。
一般ウケは良いとは思えないけど、役者の芝居は見応えありましたねぇ!!
4. Posted by にゃむばなな   2013年03月30日 17:27
オリーブリーさんへ

そうですね、フレディはドッドの宗教観などはどうでもよかったのでしょう。
彼の存在そのものが大事であって、でも彼にばかり依存する訳にもいかず。
PTAらしい面白い映画でしたよ。
5. Posted by mig   2013年03月31日 09:21
信頼し合っているようで、そうではなく
依存し合ってるようでそうでもなく
近年のPTA作品は、評論家ウケ狙いなところがあってフツウに楽しめる作品ではなくなってきたなぁって印象です。
ブギーナイツが懐かしい。。。
6. Posted by にゃむばなな   2013年03月31日 10:54
migさんへ

確かに近年の作品を見るとそんな感じですよね。
個人的には『ブギーナイツ』のような作品もたまに撮ってほしいですわ。

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
昨日の訪問者数
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

※オススメです♪※
『KANO~1931海の向こうの甲子園〜』主題歌
ぷろふぃ〜る

にゃむばなな

Twitter始めますた
nyamu_bananaをフォローしましょう
livedoor 天気
ちょいとした広告掲載