2013年04月01日

『アンナ・カレーニナ』

アンナ・カレーニナ男の不倫は気弱な遊び、女の不倫は強欲な本気。
リアリズムの巨匠レフ・トルストイの代表作を文芸作品だけが得意なジョー・ライト監督がリアリズムとは真逆の舞台劇のような展開で映画化したこの作品。第85回アカデミー衣装デザイン賞を受賞しただけあって登場人物の心理状態に合った見事な衣装が何とも素晴らしい映画でした。

恋と愛の違いは何か。人は恋をすると周りが見えなくなり、愛を知るとその愛を周りに振り撒こうとするもの。つまり他人の忠告さえも耳に入らなくなったヴロンスキーとアンナの間に芽生えたものは愛ではなく恋、ヴロンスキーに振り回されるも結ばれ看護や草刈に精を出すリョーヴィンとキティの間に芽生えたものこそが愛。

故にこの映画は宣伝文句では不倫という神の掟を破る行為に走った女性の悲劇的な運命の愛を描いているように謳っていますが、その実は恋と愛の違いを一人の憐れな女性と一人の真摯な愛を貫く青年を用いて描いた作品でもあると思うんですよね。

ですから恋を愛と履き違えたアンナ、カレーニン、ヴロンスキーが登場するくだりでは彼らを滑稽にも見せるかの如く舞台劇のような演出を多用する一方で、アナグラムで真実の愛を語るリョーヴィンとキティのくだりは丁寧に真摯に描く。
リアリズムの巨匠の代表作であるからこそ、周囲から見た時のリアリティも映像という形で表現する。ここがこの映画の面白さでもあると思うのです。

加えてオスカーを受賞しただけあって登場人物の深層心理を衣装の色で表現しているのもこの映画の面白いところ。
例えば精液を意味するかのようなヴロンスキーの白い軍服、処女に戻って劇的な色恋沙汰に身を委ねたいというアンナの赤いドレス、擬似性行為のような激しいダンスに酔いしれてしまった本音を隠すように着る黒いコートはある意味この2人が恋と愛の違いを知っていないというメタファーでしょう。

特に白色の使い方は面白く、貞操のないアンナが着る衣装の白をくすんだ感じに見せたり、喫茶店でアンナに向けられるご婦人方の白い衣装以上に白い視線を強烈に感じさせたりする演出は見事だと思いましたよ。

てな訳で最後まで恋を愛と履き違えたアンナは疑心暗鬼からヴロンスキーと出逢った時を思い出すかのように汽車に身を投げた憐れな最後を迎えた一方で、アンナが産み落としたヴロンスキーの娘を自分の子供として育てるカレーニンを偽りの愛に満足した男として舞台劇のように滑稽に描くラスト。

恋と愛の違い。これを知らぬ者は憐れな人生しか歩めぬ。それが何とも悲しくも滑稽である映画でした。

深夜らじお@の映画館の個人的な感覚では女性は半開きの目で童顔に癖毛に髭のイケメンに嵌りやすいような気がします。

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この記事へのコメント

1. Posted by ノラネコ   2013年04月02日 00:39
一歩間違えれば古臭いメロドラマになっちゃう所を、なんともオリジナリティ溢れる手法で見事に現代化しました。
まあ描いてるテーマそのものは普遍的だし、だからこそこういう奇策に走っても物語が受け止めてくれるのでしょう。
2. Posted by にゃむばなな   2013年04月02日 17:00
ノラネコさんへ

やはりジョー・ライト監督は文芸作品になるとその力量を如何なく発揮してくれますよね。
こういう演出もなかなかいいもんだと思いましたよ。
3. Posted by mig   2013年04月02日 23:19
こんばんは。
舞台劇風の演出が面白くみせてあきさせませんでしたね。
さすがジョーライト。
キャストもハマってたし。
4. Posted by にゃむばなな   2013年04月03日 11:49
migさんへ

やっぱりジョー・ライト監督には文芸作品が似合いますよね。
もうこの方はこのジャンル以外は撮らないでほしいですよ。
5. Posted by オリーブリー   2013年04月03日 14:28
>男の不倫は気弱な遊び、女の不倫は強欲な本気。

いいですね、これ!!(笑)
アンナの地味な兄嫁やキティを対比させることで、アンナ自身がどういう女性なのか分かりやすく、また舞台仕立てがユニークながらも当時の社会を感じることができました。
やっぱりジョー・ライトの古典は良いですよね♪
6. Posted by にゃむばなな   2013年04月03日 15:01
オリーブリーさんへ

恋愛に関しては女性の方が恐ろしいですからね。
それをもジョー・ライト監督は見事に描いてましたね。
7. Posted by yukarin   2013年04月04日 22:16
こんばんは♪
本当に衣装は豪華で素敵でしたね〜
にゃむばななさん、衣装の色でそこまで分析してたなんてすごい!
8. Posted by にゃむばなな   2013年04月05日 17:27
yukarinさんへ

オスカーを受賞した理由を考えると、やはり衣装の色に意味を持たせたのでしょう。
それをこうも巧く見せる素晴らしさ。
やはりジョー・ライト監督は文芸作品だけで頑張ってほしいですね。
9. Posted by 悠雅   2013年04月13日 19:10
『プライドと偏見』は、英国版のドラマが好きなせいもあって、
原作をあれもこれもてんこ盛りして、いっぱいいっぱいな印象を受けてしまったけれど(個人の感想です(^^;)、
『つぐない』は小説の世界をとても上手く映画化されたと思っていました。
さて、今回はどうかしら、と思っていたら、
長大な小説を上手く纏めることに一役買った、驚きの演出。
ヒロインに共感できにくいお話を、面白い作品にしてくれました。
虚構の舞台に閉じ込められた恋よりも、
雄大な風景の中に解放された愛のほうに心惹かれるお話でした。
10. Posted by にゃむばなな   2013年04月13日 20:47
悠雅さんへ

ほんと、この監督は文芸作品に関してだけは巧いですよね。
仰るとおり、不倫を舞台劇に閉じ込め、純愛を雄大な風景に放つ。
この演出は素晴らしいですわ。
11. Posted by YUKKO   2013年04月13日 21:21
ジョー・ライト監督が、好きなので見に行った作品です。演出が斬新なのと、キーラ・ナイトレイの演技は、良かったかな。でも、アーロン・テイラー=ジョンソンが、薄っぺらすきる!「野蛮なやつら」の方が彼は良かったと、思います。しかし、アンナは、哀れですねえ。
12. Posted by にゃむばなな   2013年04月13日 22:05
YUKKOさんへ

まぁ不倫相手役ですからね。男性視点としてはあれくらい薄っぺらくて十分だと思いましたよ。
そしてアンナに関しては哀れというよりもアホな女やなという印象が強かったですね。

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