2013年05月01日

『ハッシュパピー〜バスタブ島の少女〜』

ハッシュパピー親は子に「強く生きろ」と願い、子は親に「長く生きて」と願う。
わずか200万ドルで製作したインディ作品がオスカー候補になっただけでなく、主演のクヮヴェンジャネ・ウォレスがわずか6歳にしてアカデミー主演女優賞候補になったことでも話題になったこの作品。もう少し分かり易い作品にしても良かったかなと思いつつも、この雰囲気が何とも心地のいい映画でした。

ルイジアナ州南部で撮影されていることからも恐らくハリケーン・カトリーナの被害を受けた地域が舞台で、ハッシュパピー親子たちが住む通称「バスタブ島」というスラム街も水没危険のある居住禁止区域なのでしょう。
でもスラム街と聞いて連想する違法行為の数々はこのバスタブ島にはなく、むしろ土手と呼ばれる文明社会から切り離された独自のコミュニティといった感じ。なので父親ウィンクの言葉遣いが決してよくないにも関わらず、何となくこのコミュニティはハッシュパピーにとっても居心地が良さそうに見えるのです。

特にそれを強く感じたのは行政から強制退去させられた医療施設でのシーン。
本来なら清潔で衣食住の心配もいらない環境下で暮らすのがいいはずなのに、病状の悪化で鼻に管まで通されたウィンクは文明社会的なワンピースを着せられたハッシュパピーを不憫に思ったのか、娘を施設から脱出させ、また娘も娘でまるで父親が死ぬ場所はバスタブ島以外にあり得ないと分かっているかのように父親の説得を強烈に拒むどころか、逆に説得して島に連れて帰る。

つまりウィンクは娘にとって最も居心地のいい場所はバスタブ島だと確信しており、またハッシュパピーもバスタブ島は父親といてこそ最も居心地のいい場所だと確信しているのでしょう。
我々の人生を振り返っても、やはり最も居心地の良かった場所って引越経験の有無に関係なく、この6歳頃に親と楽しく過ごした場所だと思うんですよね。小さな路地で遊んだ程度の狭い世界でも、そこは温かな記憶で満ち溢れた大切な場所。

採った魚は殴れ!とか、蟹はナイフを使わずむさぼれ!など様々な「強く生きる」術を教えてくれた父親に自分が強く生きている成長を見せるため、自分と同じように家族を守るために旅をしている大猪にシンパシーを感じたハッシュパピーが旅に出た先でもらったパンを持って帰ってくるラスト。父親が涙を流しながら娘がくれたパンを食べて「ウマい」と言い残す姿に悲壮感は微塵も感じることがなかったのは、ハッシュパピーが父親の教え通りに強く生きているからなのでしょう。

文明社会は他人との競争が必須の栄枯盛衰の世界。自然界は自分の力だけで生き抜くことが掟の弱肉強食の世界。本当の意味での「強く生きる」とは何か。その答えがこの映画にはあるような気がしました。

深夜らじお@の映画館も強く生きていくように頑張りたいです。

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acideigakan at 21:09│Comments(8)clip!映画レビュー【は行】 

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この記事へのコメント

1. Posted by オリーブリー   2013年05月05日 13:13
こんにちは。

とても力強い映画でしたが、心に響いてくるものはあまりなかったです。

オスカーノミネートのクヮヴェンジャネ・ウォレスはともかく、父親役にビックリでした。
どちらも素人演技とは思えませんね。
2. Posted by にゃむばなな   2013年05月05日 15:19
オリーブリーさんへ

ほんと、素人の演技とは思えませんでしたよね。
ただこれでもう少し心に響いてくるものがあれば良かったのですが。
3. Posted by 悠雅   2013年07月03日 22:34
こんばんは。
こちらでは今公開中です。

強制的に収容された場所で新たに生きてゆく道を見つけるのかな?と一瞬思ったけれど、
やはりバスタブを選ぶハッシュパピーたちにちょっと驚き…
どうしても、今の自分の生活を基準に考えてしまうので、
そこは将来的に大丈夫なのか?と親心で見てしまって(^^ゞ
それも含め、6歳の女の子の目を通した世界から、
いろいろに感じた作品でした。
4. Posted by にゃむばなな   2013年07月04日 22:35
悠雅さんへ

大人の目線から見ると、あの環境での生活はどう考えても推奨できないですよね。
でもそれが6歳の女の子の目を通すと別の世界に見える。
それがこの映画の魅力なんでしょうね。
5. Posted by kajio   2013年07月14日 03:30
遅ればせながら観てきました。

思うところはほぼブログに書きましたが、とにかくハッシュパピーと子供達の横の繋がりがほぼスルーされていたのは勿体なかったなぁ、と思いました。

父と子の繋がりとは別に、スタンドバイミーっぽい方向に広げていく手もあったでしょうに…

ただ、監督の次回作は楽しみですけどね。

6. Posted by にゃむばなな   2013年07月15日 23:44
kajioさんへ

この作品は見る人を選ぶ映画ですよね。だからこそ「勿体無い」という感想は私も持ちましたよ。
でも仰るとおり、この監督の次回作は楽しみですね。
どんなジャンルに挑戦するのかも含めて。
7. Posted by yukarin   2013年12月03日 11:55
主演の女の子はとても良かったのですが、いまいち感動するまでにはいかなくて残念でした。
ほんともうちょっと分りやすく作られてると良かったですよね。
8. Posted by にゃむばなな   2013年12月03日 16:40
yukarinさんへ

もう少し分かりやすい作り方であれば、もっといい映画として受け入れられたであろうと思われるだけに、ちょっともったいなかったですね。

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