2013年06月27日

『インポッシブル』

インポッシブルルーカス、よく頑張った!長子としてよく頑張った!
2004年末に発生したスマトラ島沖地震による津波で離散するも再会するまで諦めることなく希望を抱き続けたとある家族の絆を描いたこの作品は、決して安易に泣かせようとはしない凄く丁寧な映画。そして津波の恐ろしさ、生き延びた人たちの生々しい傷や憔悴していく表情、希望を抱くことがいかに強い心を要するかをも言葉ではなく映像でしっかりと見せてくれる映画でした。

何よりも津波のシーンが生々しく恐ろしいがゆえに、マリアとルーカスが津波に流されながらも何とか再会し抱きしめ合うくだりだけでも涙腺が緩むこの作品。実際に津波を経験された方には非常にショッキングな映像にも映るかも知れませんが、ただ津波の恐ろしさを言葉でしか知らない者にとっては、この映像はまさに「百聞は一見にしかず」そのもの。

そして2度の津波を乗り越え、原住民の助けを経て病院に送られると、今度は希望を描くことでルーカスの心の不安をより色濃く描いてくるのも素晴らしいのですが、同時にルーカスの長子としての頑張りを描いているのも素晴らしいんですよね。
母親の言葉に従い、自分にも出来ることをと病院内を歩きながら離散家族を再会させることで母親に希望を持って帰ろうとすると、その母親がいないという不安。他人に希望を与えながら、その希望はルーカスにそっぽ向くのかという恐怖。
しかも病院の手違いとはいえ、憔悴した母親に対し病院関係者からはまるで「手術は困難。諦めてくれ」と言わんばかりに「体力がついたら手術する」と不可解なことを言われる始末。

でも父親がいない間は母親を守るのは長子の責任とばかりに母親を気遣いながら、自分たちを探しに来た父親ヘンリーをやっと見つけたルーカスが人ごみの中で必死に叫ぶ声に幼い弟たちが、全身傷だらけの父親が駆け寄ってくるあの再会シーン。
ただ単に離散した家族が再会出来たからではなく、長子として必死に頑張ってきたルーカスの想いが神様に通じたかのような嬉しさと安堵感にこれまた涙なくしては見れないんですよね。

さらに家族全員との再会を果たしてもルーカスが長子としての責任に背を向けることは一切ないのがいいんですよね。母親の言葉や想いを父親に伝え、今度は母親がいない間は父親を支える長子として、愛する女性の命が危うい中で親として頑張らねばならぬ父親の気持ちも汲み取り、幼い弟たちを不安にさせないように泣き言を一切言わずに、ひたすらわずかに残った希望を信じる。そのルーカスの姿に同じ長子として、またまた涙なくしては見れないこと。

そしてそんなルーカスの想いに神様が応えてくれたかのように無事に母親の手術が成功し、保険会社が用意した専用機で被災地を離れるラスト。ここでもルーカスは母親を不安にさせないように、幼い弟たちの世話で手が離せない父親に代わり母親にたくさんの愛を伝える。それがあの津波の中から救いだしたダニエル少年の笑顔の話。このシーンもまた涙が自然と流れ落ちてしまうんですよね。

ヘンリーにケータイを貸してくれただけでなく心配している親にきちんと状況を伝えるようにと言ってくれた松葉杖さんの家族、病院の手違いでマリアの腕に書かれた別人の名前。これらはこの津波で亡くなったかも知れない方の名前。そしてこの一家にとっては自分たちは生かされていると痛感せずにはいられないもの。

そんな想いを心に刻みながらこの一家が乗った飛行機の真下に広がる静かな海。まるで津波など発生していなかったように皮肉な表情を浮かべる静かな海に時として人は母の愛を感じるのもまた皮肉に思える、でも素晴らしい映画には違いない作品でした。

深夜らじお@の映画館は同じ長子としてルーカスを応援せずにはいられませんでした。

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acideigakan at 17:43│Comments(8)clip!映画レビュー【あ行】 

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この記事へのコメント

1. Posted by 一夫巣   2013年06月28日 08:07
続けてコメントするのをお許しください。私はこの作品をいたく気に入りました。極限の状態で人と人がしっかりとつながっていく。これは社会関係資本を描いた作品でしょう。地味な内容ですが鑑賞後もそして今も静かに胸のうちに広がる漣を感じます。ナオミワッツの迫真の演技あってこそ、なのでしょうね。いい女優さんです。
2. Posted by えふ   2013年06月29日 16:58
なんとも胸が苦しい内容でしたが、
長男のルーカスの頑張りに胸がいっぱいになりました。。。
3. Posted by にゃむばなな   2013年06月29日 18:06
一夫巣さんへ

人と人の繋がりってこういう状況下の時ほどよく分かりますよね。
いかに他人を思いやれるか。あのケータイを貸して「ちゃんと伝えるべきだ」というシーンなどその象徴だったと思いますよ。
4. Posted by にゃむばなな   2013年06月29日 18:11
えふさんへ

私は地震の揺れは経験していても津波は経験していないのですが、この津波のシ−ンを見ると、本当に胸が苦しくなりますよね。
でもだからこそ、そんな状況下で頑張るルーカスを応援せずにはいられませんでしたよ。
5. Posted by オリーブリー   2013年06月30日 21:10
日本人にはキツイかと思いますが、出来れば多くの人に観て頂きたい映画でした。
生きるとは、人間とは、家族とは、それこそ絆がしっかりと描かれていたと思います。
6. Posted by にゃむばなな   2013年06月30日 23:21
オリーブリーさんへ

確かに津波を経験された方にとってはキツい映像だと思います。
でも少なくとも津波を経験していない者にとっては、この作品は見るべき映画ですよね。
「絆」という言葉が忘れ去られようとしている今だからこそ、余計にそう思いますよ。
7. Posted by ノルウェーまだ〜む   2013年07月03日 00:19
にゃむばななさん☆
とても真摯な映画でしたね。
そしておっしゃるように長男の成長振りに涙が溢れました。
知り合いでこのスマトラ津波を実際に体験した人がいるのですが、話を聞いて半分くらいしか想像できてなかった自分がいて衝撃を受けました。
8. Posted by にゃむばなな   2013年07月03日 22:21
ノルウェーまだ〜むさんへ

震災などの自然災害は実際に経験しないと分からないことだらけのなか、ここまで映像で表現できたことにまず驚きでしたよ。
そしてそんな状況下での長男ルーカスの大いなる成長。これには涙が溢れましたね。

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