2013年07月03日

『プレイス・ビヨンド・ザ・パイン/宿命』

プレイス・ビヨンド・ザ・パイン格差社会において、蛙の子は蛙にしかなれないのか。
モホーク語で「松林の向こう側」という意味を持つニューヨーク州スケネクタディで銀行強盗と新米警官として出会ってしまった親同士の過ちが、15年の時を経てそれぞれの子供たちに報いとなってしまう因果を描いたこの作品。ジェイソンがバイクに乗って走り去るラストをどう見るかで評価も大きく別れる映画だと思いました。

前作『ブルーバレンタイン』と同様に青み掛かった映像に独特の淋しさを表現するのが上手いデレク・シアンフランス監督。

この作品でも移動遊園地でのバイクスタントしか生業に出来ないルークが密かに自分の息子を産んでいたロミーナと再会することで急に父性愛に目覚める前半から、どんなに頑張っても負け組の世界から抜け出れないような閉塞感が漂うこと。
ルークはただロミーナと息子との3人で暮らしたいだけなのに、それが様々な要因で叶わぬ悔しさと淋しさ。その反動として息子のためという名目で銀行強盗に手を染め、ロミーナと別れてくれない黒人の恋人を殴ってしまう。
そしてそんなルークの行き着く先は警察に追われ、逃げ場を無くして射殺されてしまうという幸せとは掛け離れた世界。

一方でそのルークが発砲する前に射殺してしまったことを打ち明けることも出来ずに英雄扱いされていく出世欲の強いエイヴリ−を描く中盤。前半とは違う青み掛かった淋しげな映像は真実を語る勇気を持てないがために閉塞感に苛まれるエイヴリーを描きつつも、同時に悪徳警官とはいえ仲間を売るという別の勇気で閉塞感から抜け出そうとするエイヴリーの情けなさも描いているんですよね。
ですから本当に必要な勇気を履き違え、勝ち組の世界で卑怯とも思える方法で出世していくエイヴリーを見せられると、観客までもがその閉塞感に巻き込まれそうになるのです。より負け組の世界で死んでいったルークが哀れに見えてくるのです。

そしてこの閉塞感が希望に変化するのか、それとも世襲されるのか。それがこの映画の大きな評価の分かれ目になる、事件から15年の時を経てルークの息子ジェイソンとエイヴリーの息子AJが出会ってしまう後半。
ここにはあまり青み掛かった映像は使われていないのですが、それでもAJのバカ息子ぶりとジェイソンの真実を教えてもらえない孤独を通して見えてくるのが勝ち組や負け組の世界から抜け出せないという閉塞感。

負け組生まれのジェイソンを見下すAJは嘘で塗り固められた父親の当選演説の席でぬるま湯を閉塞感と感じずに生きていく。
ルークとエイヴリーの関係を知り、銃で脅したエイヴリーから財布を奪ったジェイソンはその財布に仕舞われた一枚の写真で真実の愛を知る。

本来なら泣きながら真実を語ったことで閉塞感から抜け出せたはずなのに、その強い出世欲からまた無意識に閉塞感に戻ってしまうエイヴリーに対し、真実を知った後に母の元から去ったジェイソンは実父ルークと同じようにバイクに乗って走り去って行く姿を「ルークと同じ道を歩む」と見るか、それとも「自分の力で道を切り開こうとしている」と見るか。

ルークを追うパトカーの運転席から見た緊迫感ある映像も、悪役が似合うレイ・リオッタに森の中に連れ込まれる車の運転席から見た緊張感ある映像も、ジェイソンには無縁であってほしい。
そう願ってしまうこの映画の邦題はやはり「宿命」ではなく「運命」の方が合っていたと思います。

深夜らじお@の映画館は勝ち組とか負け組という分け方が嫌いです。

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acideigakan at 02:09│Comments(2)clip!映画レビュー【は行】 

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1. プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命  [ 心のままに映画の風景 ]   2013年07月04日 17:43
移動遊園地のバイク曲芸ライダー、ルーク(ライアン・ゴズリング)は、元恋人のロミーナ(エヴァ・メンデス)と再会する。 彼女がルークの子供を生んでいたと知り、その日暮らしの気ままな生活から抜け出...
2. プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命  [ 晴れたらいいね〜 ]   2013年07月08日 02:25
ライアン・ゴズリングとブラッドリー・クーパーの共演となると、気になってしゃーなかった(笑)しかも「ブルーバレンタイン」の監督さんだしねぇ。プレイス・ビヨンド・ザ・パイ ...
3. プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命★★★★  [ パピとママ映画のblog ]   2013年07月30日 13:36
数々の映画祭で高い評価を得た『ブルーバレンタイン』のデレク・シアンフランス監督とライアン・ゴズリングが再タッグを果たした人間ドラマ。妻子を養うため犯罪に手を染めるバイクレーサーと彼を追う野心的な警官をめぐる因果が、15年後の彼らの息子たちへと世代を超えて...
4. 「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命」  [ ここなつ映画レビュー ]   2013年10月04日 11:20
ライアン・コズリングを観たくて鑑賞。私の中でライアン・コズリングは「君に読む物語」の人ではなくて、「ドライヴ」で強烈な犯罪者役者としてのデビューを飾り、「L.A.ギャングストーリー」でそのポジションを不動のものとした、とにかくイケてる犯罪者。そして女を守る
 【ネタバレ注意】  公開前に何度も予告編を観ていたけれど、予告編はわざと劇中の時系列をぼかしていたので、てっきり銀行強盗と警察官が対決する話だと思ってしまった。まずは物語の構造が判らないように予告編を編集してくれたことに感謝したい。『プレイス・ビヨン

この記事へのコメント

1. Posted by ちゃぴちゃぴ   2013年07月08日 02:35
こんばんは〜♪
あら?この映画は一番乗りコメント。
なかなか記事にまとまらなかった映画なんですが、そう閉塞感だったんだわっと気づきました。
妙に息苦しく切ない気分になった映画で、「親」でもある自分に重ねすぎたのかなぁ。
ルークの息子には、彼なりの人生を新しく切り拓いていって欲しいと願わずにいられないし、まず無事で生きてと母心で願ってしまいました。
2. Posted by にゃむばなな   2013年07月08日 23:15
ちゃぴちゃぴさんへ

ジェイソンには彼なりの人生を切り開いてほしいですね。
まぁルークも道を踏み外さなければ…だったんですけど、何とも人生とは上手く行かぬものですね。

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