2013年11月13日

『四十九日のレシピ』

四十九日のレシピ百合っちと「あつあつ豚まんの君」ことダーリン熱田が愛した乙美先生の人物像がボヤけている。
原作未読の私にはこの問題が原作か脚本のどちらにあるのかは判断しかねますが、ただ今年母親の四十九日を迎えた者として言わせていただくと、この作品には当事者の気持ちは反映されていない。それゆえに題材はいいのに、もったいない印象しか残らない作品でもありました。

母親や愛犬だけ限らず近しい身内を亡くすと、遺族の心には数え切れにほどの後悔しか残りません。「もっと色々教えてほしかった」「もっと色々してあげたかった」と悔やみに悔やみ、それでもその数え切れない後悔の狭間から大切な思い出を少しずつ再認識していくものです。

この映画でもソースが漏れたコロッケパンを断ったことを後悔しているダーリン熱田といい、初めて継母である乙美先生と動物園で出会った時にお弁当を台無しにしたことを後悔している百合っちといい、もう乙美先生に謝ることも出来ない現実を突きつけられた気持ちは良く描かれていると思います。

そして乙美先生の言葉で救われたイモちゃんとハル君が語る「夏祭りでのダーリン熱田の通る大声で豚まんが売れた」「引き篭もらずに車に乗って外に出なさい」といった思い出話を通して、乙美先生がダーリン熱田にお見合いを断った理由を聞きに来た思い出や百合っちに迷った時は川に行きなさいと教えたことを思い出すくだりも、実にリアル。

実際、私も告別式が無事に終わったのちにご近所さんに挨拶回りをした時に教えていただいた母親との思い出話はどれもが自分の知らない母親の姿ばかりでした。息子なのに母親のことを半分も知らない。それが紛れも無い現実なんですよね。

ですから乙美先生の言葉に救われた人たちが集まる四十九日の大宴会で涙が止まらなくなるのかと思いきや、まず子供を産めない女性を蔑視する叔母のセリフで怒り心頭。しかもこの叔母が唐突に乙美先生と何の関係もないフラダンスを踊りに戻ってくるわ、参列者へのお礼の挨拶時でもダーリン熱田よりも前に出るわと無礼千万を連発。

さらにリボンハウスでお世話になった女の子たちが乙美先生人生年表に思い出を書き記しているのに、それをいつの間にか年表など関係なしに単なるメッセージボード化にしてしまっているのも残念。
そしてイモちゃんも「ありがとう」の一言も言わずに熱田家を去るのも大いに違和感を感じましたね。

でも一番の違和感はやっぱり百合っちの旦那に纏わるくだり全てですよ。
浮気相手の家にまで行っての離婚届云々のくだりは長すぎるわ、浮気相手を孕ませておいて「どちらも選べない」と無責任なことを言った挙句に百合っちに「やり直したい」と土下座するわ、それで元鞘に戻るわと理解不能なことばかり。

結局、百合っちが悩む「女としての幸せ」も描きたい、乙美先生がみんなに残した愛も描きたいと欲張りすぎているために、乙美先生の「暮らしのレシピ」も全て見せてくれなければ、身内以外が語る乙美先生との思い出話も意外と少なかったりと、肝心要の乙美先生の人物像があまり描かれずにボヤけてしまっているんですよね。
乙美先生がどんな人生を歩み、どんな気持ちで過ごし、どんな心残りを胸に秘めて旅立って行ったのか。そこまで描いてこその「四十九日」なのに、ちょっと勿体無い作品でしたね。

ただ違和感があってもそれさえも良さに変える岡田将生といい、幅広い演技力はさすがの二階堂ふみといい、不器用な団塊世代オヤジ演技は一級品の石橋蓮司といい、役者陣だけは素晴らしいと思えた映画でした。

深夜らじお@の映画館はこの題材で号泣したかったです。

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acideigakan at 23:56│Comments(2)clip!映画レビュー【さ行】 

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この記事へのコメント

1. Posted by FREE TIME   2013年11月23日 22:23
こんばんは。
自分も最後の四十九日の進行には疑問を感じてしまいました。
乙美先生の描いていたレシピ通りではなかったのではないかと…。
おっしゃる通り、出演陣に関しては素晴らしかったですね。
2. Posted by にゃむばなな   2013年11月23日 23:08
FREE TIMEさんへ

乙美先生の人生を偲ぶ四十九日なのに、乙美先生を偲ぶ四十九日になってしまっているの残念でしたね。
俳優陣はいいのに、お話がヌルかったですよ。

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