2014年02月10日

『スノーピアサー』

スノーピアサー白い外界と暗い車内。本当の方舟はどちらなのか。
フランスのSFコミックを韓国のポン・ジュノ監督がアメリカやイギリスの名優を揃えて描くこの作品。
これまでの監督作品と比べると緊張感や笑いのセンスに多少の物足りなさはあるものの、やはりあのラストは秀逸。
「恨の感情」をご存じでない方には不評のようなので、是非事前勉強を。

地球温暖化を止めるために散布した薬品CW-7によって氷河期が訪れてしまった近未来の地球。生き残った人々が乗り込んだ極寒の大地を高速でひた走るノアの方舟と化した列車では階級差別があり…となると、当然貧困層は汚く、富裕層はきれいに描かれるものですが、これは原作の面白さなのか、それともポン・ジュノ監督のセンスなのか、貧困層は映像的に汚く、富裕層は精神的に汚く描いているところが面白いこと。

例えば最後尾の貧困層車では反逆者の腕を車外に出して凍らせた後にハンマーで壊すという無慈悲があり、貧困層用の食料を作る車内ではその食料の原料が虫という気持ち悪さがあり、反乱軍と治安部隊が鉄棒と斧で激突する中間車では文字通りの血みどろの殺し合いが繰り広げられる一方で、富裕層用サウナ車内では子供がすっぽり隠れるほどに太った人間がいたり、さらに前方の車内ではクスリで発狂する若者たちがダンスに興じていたりなど、同じ人間が住む世界とは思えないほどの格差を様々な「汚さ」で描いているんですよね。

またそんな汚さに時折挟まれるポン・ジュノ監督ならではのブラックユーモアのセンスもこれまた面白いこと。
まるで幼稚園児に話すように綺麗事を並べる出っ歯のメイソンがいれば、血みどろの殺し合いの最中に新年を迎えたり、笑顔で子供たちに人間味の欠片もないことを教える女性教師が突然ゆで卵の籠の中からマシンガンを取り出して暴れたりなど、いい具合に笑いを挟んでくれるんですよね。

ただそんなポン・ジュノ監督の魅力が味わえる一方で、敵の暗視スコープに松明で対抗するというくだりの面白さに少々の盛り上がり時間が足りないなど、これまでの監督作品と比べると、どこか物足りなさを感じるシーンが多かったのも事実。

しかしその物足りなさを再び人間の汚さ・弱さで補ってくれるのは、やはりポン・ジュノ監督作品の面白さでもあると思うんですよね。
特に地上で17年、列車内でも17年ほど過ごしてきたカーティスがナムグンに語る列車に乗り込んだ当時の話。食糧不足の先に人肉を食べようとした結果、自分を慕ってくれたエドガーが赤ん坊だった頃に彼の母親を殺したこと、ギリアムを始め自分の身体の一部を食料として差し出した者がいたなど、セリフで聞くだけでも気持ち悪いことばかり。

しかもその汚さを意図的に作りだした張本人ウィルフォードが語る、ギリアムと共に画策した後継者探しの実態も、これぞ狭い世界で起こる自分勝手な理論で汚らしいこと。

そんな汚い世界に対し、カーティスがターニャの息子ティミーを救い出し、ナムグンと共に身体を張ってナムグンの娘ヨナとティミーを列車の爆破から守り抜いたラスト。
これは韓国の精神文化「恨の感情」から見ると、さすがポン・ジュノ監督と思いましたね。

地上で生まれ育ったカーティスとナムグンが命を賭けて守り抜いたのは、列車内で生まれ育ったため大地を知らないヨナとティミー。
その2人がナムグンの読み通り、人が住めるほど温かさを取り戻しつつある外界で見つけた白熊の力強さ。
果たして自分が生まれ育った気候的には温かいが人間的には冷たい狭い車内がノアの方舟なのか、それとも気候的には厳しいが人間的には力強く生きることも出来る広い外界がノアの方舟なのか。
大地を知る者はその答えを知っているが、この2人はその答えを自ら探さねばならない。それこそ本当の意味での「生き残る」ではないか。

そんな意味深なラストがポン・ジュノ監督はいくらハリウッド俳優をキャストに選んでもポン・ジュノ監督。自分の流儀は崩さない格好良さにも思える映画でした。

深夜らじお@の映画館はメイソンのような綺麗事を並べただけのお説教が凄く苦手です。

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この記事へのコメント

1. Posted by BROOK   2014年02月10日 19:48
あのエンジンの中に入って行ったアンディがどうなったのか、ちょっと気になりました。
ヨナとティミーが助かったのは良かったけれど…。

作品は韓国映画の演出がかなり効いていて、面白かったです♪
2. Posted by にゃむばなな   2014年02月11日 17:40
BROOKさんへ

この作品自体が韓国映画ですからね。
でもキャストが豪華でも自分の流儀を変えないポン・ジュノ監督はさすがでした。
3. Posted by AKIRA   2014年02月12日 10:36
「恨の感情」を流しながら生き続けるラスト見事でしたね!

英語なのに韓国映画の雰囲気満点。


ソン・ガンホ良い役者だなぁ。
4. Posted by にゃむばなな   2014年02月13日 14:30
AKIRAさんへ

英語作品でもその魅力を失わないソン・ガンホ兄貴。
本当にいい役者ですよね!
5. Posted by yukarin   2014年02月15日 22:55
こんばんは♪
韓国の監督であのキャストを集められる監督もすごいですね。ほぼすべてが英語というのも面白いと思います。
あのラストの2人のその後が気になります。

6. Posted by にゃむばなな   2014年02月15日 23:56
yukarinさんへ

この監督がハリウッドに進出すると、どうなるんでしょうね。
そんな作品も見たくなる魅力がこの映画にはあったように思えました。
7. Posted by mig   2014年02月20日 00:02
面白かった♪
なんの予告もみなかったので
とくにわくわくして観れました。
私はお気に入りですー
8. Posted by にゃむばなな   2014年02月20日 22:53
migさんへ

ポン・ジュノ監督作品というところで注目しちゃうと、ちょっと物足りなさはありますが、それでも十分に面白い作品でしたね。
9. Posted by きさ   2014年02月27日 22:53
見ました。
何年間も線路のメンテナンスなしで列車が走り続けられるのかとか、エネルギーはともかく資源はどうなっているのかとか、突っ込み所は多いですが、まあ列車は格差社会を象徴しているのでしょうね。
結構、精神的にこたえる描写も多いですが、ビジュアルのすごさと演出の勢いで見せます。
主人公の精神的な師をジョン・ハート、列車の支配者をエド・ハリスが好演していました。
ティルダ・スウィントンの怪演にもびっくりでした。
10. Posted by にゃむばなな   2014年02月27日 23:25
きささんへ

この世界観をポン・ジュノ監督が作り上げているのがいいですよね。
そして名優陣たちの演技も。
11. Posted by ふじき78   2014年03月06日 12:13
こんちは。
息もつかせぬアクションと、くだらない設定と、ビックリのラストで、かなり単純に堪能してしまいました。
あのラスト、考えようによっては北と南の頂上が手を結んでみたいな物か(まあ、違うけど)。
12. Posted by にゃむばなな   2014年03月06日 18:08
ふじき78さんへ

確かにあのラストは資本主義と社会主義が手を結んでみたいな印象は受けますよね。
その辺りも監督はどういう意図を持たれていたんでしょうね。
13. Posted by 健太郎   2014年03月16日 11:40
3 こんにちは。

僕的には汚さがどうにもなりませんでした…
見た目の汚さも、精神的な汚さもどうにもならず、おかげでほとんど楽しませんでした…
斧や棍棒の肉弾戦が韓国映画チックなのと、ソン・ガンホはどんな映画でも存在感があったぐらいで、後は…
14. Posted by にゃむばなな   2014年03月16日 13:14
健太郎さんへ

まぁこういうのが苦手な方には仕方ないですよね。
でもそういうのは誰にでもあることですし、しゃぁないですわ。
15. Posted by ジョニーA   2014年06月23日 04:52
全編ほぼ列車の中という閉鎖的空間での
ストーリーの割には、目先が変わって
飽きずに最後まで乗車し続けることがで
きました♪いまごろ、天国の水野さんも
「その手があったか!シベリア超特急!」
とか言って、悔しがってるかもしれませんw
16. Posted by にゃむばなな   2014年06月23日 18:07
ジョニーAさんへ

確かに水野先生なら「これなら伝説の退屈シリーズなんて言われずに済んだのに!」って思われたかも知れませんね。
いや、今ならボンちゃんが思ってはるかも?

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