2014年04月05日

『1/11 じゅういちぶんのいち』

1/11失って初めて分かる青春という贅沢な時間。
これは青春時代を謳歌された方にも、そして後悔ばかりだった方にも是非見ていただきたい、もう二度と戻ってこない時間と分かっているからこそ心の中に自然と生まれる優しさに溢れた「大人の青春映画」。
狭い世界しか知らない。でもその狭い世界を本気で楽しむ。だから青春はいつもキラキラなのです。

いつもお世話になっている「我想一個人映画美人blog」のmigさんの弟さんであられる片岡翔監督の商業映画デビュー作品ということで、前情報ほとんどなしで見てきたこの作品。

まず商業映画とはいえデビュー作品ということで荒削りな部分、資金不足であろう部分は多少なりともありますが、それ以上に映画全編に渡る登場人物に向けられた優しいカメラワークがとても心地いいこと。
世間体を気にしたことしか言わない人物は全体像で、自分の気持ちに正直になろうとする人物は表情を重点的に見せることで、観客に登場人物を自分自身に置き換えるようなことはさせず、素直に目の前で頑張ろうとしている若者を応援したくなる気持ちにさせる。
そう、これこそ高校サッカーや高校野球が好きな大人が青春真っ盛りの若者に向けるあの優しい視線そのものなんですよね。

ですから野球部万年補欠だった凛哉が千夜子の撮った写真を機に丸坊主になってソラに謝罪と入部を申し出るシーンは、青春という時間の大切さを知るソラの嬉しさと怖がらずに前に進もうと震える凛哉の勇気が見事に映し出されているので、早くもこの優しい視線で描かれたキラキラな2人の表情に私の涙腺は決壊状態。

また演劇から一度は挫折したサッカーに戻ろうと悩む瞬、その瞬を見送ることを決めた演劇部の先輩2人、部活より勉強を優先する父親の反対に立ち向かうマネージャーの仁菜にも、彼ら彼女らが狭い世界で悩み、でもその狭い世界で本気で取り組んでみようと決める時にも、この大人の優しい視線というカメラワークはしっかりと存在しているので、映画も全体的に凄く心地いいんですよね。

そして後半に語られる一度は挫折したソラが本気でプロサッカー選手を目指そうとした一ヶ月前の出来事。
物語的にはよくあるパターンのお話ですが、ただこのソラが本気で若宮四季とサッカーをするくだりでの一瞬ソラが四季に見蕩れるワンカットと、その後飛行機事故で亡くなった四季が生前にTVインタビュー収録後で見せた「思い出の彼」を語るワンカットだけは、ソラと四季の恋愛に重きを置いたものになっているのが逆に「一瞬一瞬がキラキラしている青春はもう二度と戻ってこない」ということを強調されているようで、これまでの優しい大人視線とは一転、大人に青春の苦味を思い起こさせるような不思議な感動もありましたよ。

青春とは大人になると味わえない贅沢な時間。若くして人生を終えた津吉四季にも十分に味わえなかった大切な時間。
だからこそ若人は青春を味わえない人たちの分まで青春を謳歌せねばならない。

ソラが言っていた「【じゅういちぶんのいち】になりたい」というあの言葉。もちろんサッカー部の一員という意味ともう一つ、1人1人が担ぎ手となって1人を持ち上げる「1/11」の「1」になりたいという思いもあったのはないでしょうか。
地味に誰かを支えるのも「1」、誰かの希望となり晴れ舞台で活躍するのも「1」。

自分のために、大切な誰かのために、狭い世界しか知らない若者はその狭い世界を本気で楽しむ。それが人生で一度しかない青春。
他人との勝負なんて必要ないことをサッカーの試合が始まるくだりで映画を終わらせる演出で描いているところにも、片岡翔監督の大人の優しさを感じずにはいられませんでしたよ。

深夜らじお@の映画館はこの映画のパンフレットに物申します。片岡翔監督を始めスタッフに対する記述が少なすぎる!

※お知らせとお願い
【元町映画館】

acideigakan at 23:38│Comments(8)clip!映画レビュー【さ行】 

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この記事へのコメント

1. Posted by mig   2014年04月05日 23:52
にゃむばななさん、

早速観ていただき嬉しいな!
感想、毎度ながらしっかりみていて捉えていて感服ですが今回は弟の作品ということで
正直反応が怖かったのですが
嬉しいです☆


青春とは大人になると味わえない贅沢な時間。若くして人生を終えた津吉四季にも味わえなかった大切な時間。

本当にそうですね。
素敵なレビュー、ありがとうございました!
2. Posted by にゃむばなな   2014年04月06日 10:51
migさんへ

いえいえ、こちらこそステキな映画をご紹介していただきまして、ありがとうございました。
見終わった後に幸せになるあの温かな気分。
片岡翔監督のお人柄が素直に映画に現れていたように思えましたよ。
3. Posted by q うるうるしたわ   2014年04月08日 21:12
うるうるしたー
「そういえば・・・あのころの自分は」だったり
「いま、青春真っ只中」だったり
年齢それぞれが通っている道でしょ
個々で思い入れがあると思ってたら
自分の事とか思い出してしまい
自然と 涙が うるうる
そして不安定な時を
実際に若いい役者達皆が
見事に演じてたのも、うるうるの元
この不安定な皆を
監督の温かく穏やかに見守る視線を感じて
ほわーっと包まれて ほっこりしたな〜
「きいろいぞう」も好きな作品なの
4. Posted by にゃむばなな   2014年04月08日 23:03
qさんへ

監督の優しい眼差しが全編に漂ってましたよね。
本当にいい映画でした。
5. Posted by ノルウェーまだ〜む   2014年04月10日 00:07
にゃむばななさん☆
荒削りな部分も含め、キラキラと初々しさが眩しい映画でしたね。
翔監督らしい透明感がありました。

千夜子の写真と、演劇部部長のところ、私も涙涙でした〜
6. Posted by にゃむばなな   2014年04月10日 18:12
ノルウェーまだ〜むさんへ

片岡監督ご自身も純粋な方なんだろうと思わせる映画でしたね。
大人の優しさと思春期の透明感。
その両方を併せ持っている感じさえしましたよ。
7. Posted by yukarin   2014年04月11日 12:55
こんにちは♪
片岡監督の人柄があらわれた作品になってるように思いますね。
見終ったあとに温かい気持ちになれました。
いい作品でしたね。
8. Posted by にゃむばなな   2014年04月14日 10:09
yukarinさんへ

ほんと、片岡監督のお人柄が出ているようでしたね。
こういう作品が撮れる監督さんの今後も楽しみですよ。

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