2014年04月11日

『アデル、ブルーは熱い色』

アデル、ブルーは熱い色物足りないから焦る。これが恋の物語。
第66回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した作品は「素晴らしい」という評価では物足りないくらいに素晴らしい、まるでドキュメンタリーとフィクションの中間に位置するような生々しさとフランス映画ならではの芸術性の高さ、そして決して満たされることのない恋の物語。
こんな美しい映画、見たことない!

史上初主演女優2人にもパルムドールが贈られたことでも話題になったこの作品が描いているもの。それは肌寒ささえ感じる、あと一歩で愛に昇華したはずの恋の物語。アデルが通う高校の授業シーンでも語られた「物足りなさから来る焦り」がキーワードになる恋の物語。

年上男子と肉体関係を持つも何か物足りない。焦って関係を持った結果、彼は代用品でしかなかったとアデルは悟る。
友人女子からのキスで舞い上がる。物足りなさを隠し、これが本物だと信じて焦った結果、友人は「そんなつもりはなかった」とアデルを拒絶する。
そしてハングドラムの音色と共に横断歩道で青髪のエマと出会う。一目見ても物足りなくて何度も振り返る。彼女のことが知りたくて会いたくてゲイ・バーで探す。でもエマと再会しても、その焦りを隠すようにしか会話できない。
まさにこれこそ本物の恋。レズビアンとか関係なく描かれるリアルな恋心。

そうして恋に落ちたアデルとエマの、まるで私生活も本当のレズビアン・カップルではないかと思ってしまうくらいに生々しく描かれる、10分間に及ぶ大胆なベッドシーン。
恐らくこの2人は実際に互いの性器を舐め合っているに違いない!貝合わせでオーガニズムを感じているに違いない!と邪推しつつも、ここでも男性器を持ち合わせていない物足りなさを埋めるように激しく求め合う2人に感じるどこか焦りにも似た切なさ。
そう、この映画にはこれだけ長時間全裸の女性が絡むシーンを見せられても一切いやらしさを感じることはないんですよね。

それよりも大人になった2人の間に少しずつ生まれる距離。これをフランス映画ならではの芸術性のある演出で描くシーンが素晴らしいこと。
特に芸術会話が出来ないばかりにエマとの会話に入れないアデルの疎外感をホームパーティ会場で上映されていた白黒映画のヒロインの表情で描き、教師としての仕事よりもエマに依存するアデルと、アデルにも自分と同じように才能に挑戦して満たされて欲しいと願うエマとの埋め難い距離をしっかりと描いていく演出。

これが自身の浮気によりエマと破局したアデルがエマとの復縁を望み、尽くブルーを意識するも、それが叶わぬ想いであることを知らされていく終盤の切なさに見事に繋がっていること。
海で大の字になって浮かびながら見上げた青い空、復縁の願いも叶わず完全に別れを選ぶこととなった青色の店、そしてエマの個展を訪ねたアデルの青い綺麗な衣装。

エマを想い、エマを求め、エマとの復縁に僅かな希望を抱く。
でもそれがどう足掻いても叶わぬことをアデルが痛感せざるを得ないラスト。
エマがいない物足りなさから来る焦りさえ感じないアデルの淋しげな背中と、あのハングドラムの音色が語る恋の終わり。

恋は美しい。でも愛に昇華しきれない恋は切ない。

アデルに幸せが来て欲しい。でもその幸せはアデルの帰路とは逆方向に彼女を探しに行ってしまう。せめてどこかの街角で、横断歩道で無事に再会して欲しい…。そう願わずにはいられない美しくも切ない恋の物語でした。

深夜らじお@の映画館はカンヌ国際映画祭での審査員全員一致でパルムドール受賞に納得です。

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acideigakan at 23:00│Comments(4)clip!映画レビュー【あ行】 

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4. [映画『アデル、ブルーは熱い色』を観た]  [ 『甘噛み^^ 天才バカ板!』 byミッドナイト・蘭 ]   2014年04月22日 01:55
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 LA VIE D'ADELE - Chapitres 1 et 2    BLUE IS THE WARMEST COLOR  どこか満たされない思いを抱えていた高校生、アデル(アデル・エグザルコプ ロス)は、ある日街ですれ違った青い髪の女性に激しく惹かれる。彼女は美大 生エマ(レア・セドゥ)。
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この映画を一言でいうと、出会い→激恋→別れ、そして焦燥。 あれ? ネタといては実にフツー(笑) だが! 他との違いは、この激恋は、レズビアンの2人によるもの. で、そこを徹底的に突く監督がいる。 話題になっている強力な濡れ場は、確かに過去にない迫力がある..
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アデル、ブルーは熱い色 '13:フランス ◆原題:LA VIE D’ADELE CHAPITRES 1 ET 2 ◆監督:アブデラティフ・ケシシュ「 ◆主演:レア・セドゥ、アデル・エグザルコプロス、サリム・ケシュシュ、モナ・ワルラヴェン、ジェレミー・ラエルト、オーレリアン・ルコワン、カトリ...
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6日のことですが、映画「アデル、ブルーは熱い色」を鑑賞しました。  文学好きで教師を夢見る高校生アデルは、運命的に出会った青い髪の画家エマに魅了され、2人は情熱的に愛し合うようになる しかし、時の流れとともに2人の気持ちは次第にすれ違っていき・・・ 女性...
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【概略】 高校生のアデルは、交差点ですれ違ったブルーの髪の女性エマと視線を交わした瞬間、心を奪われた。偶然にもバーで再会を果たし、知的でミステリアスなエマにますます魅了されていく。週末、ふたりきりでデートに出かけ、見つめ合い、キスを交わし、そして互いを求
12. アデル、ブルーは熱い色/ほとばしる愛に心が苦しい  [ MOVIE BOYS ]   2014年12月18日 21:13
第66回カンヌ国際映画祭のパルムドールを獲得した作品。この時史上初めて主演女優2人にも同賞が贈られた。フランスの人気コミックを原作にアブデラティフ・ケシシュ監督が実写映画化したこの作品は、『マリー・アントワネットに別れをつげて』のレア・セドゥと『黄色い星の子

この記事へのコメント

1. Posted by ノラネコ   2014年04月15日 22:29
少女アデルの心をずっと覗き込んでいたような濃密な3時間。
前評判どおり、実に見応えのある初恋を巡る青春ドラマでしたし、話題のベッドシーンも長くて赤裸々だけどしっかりと全体にフィットしておりました。
でもおっぱい対決はレアたんに軍配をあげます。
2. Posted by にゃむばなな   2014年04月16日 00:08
ノラネコさんへ

本当に素晴らしい映画でしたよ。フランス映画ならではの芸術性の高さに加え、その芸術性が全然見易いことも素晴らしかったです。
で、ノラネコさんはエマ役のレアたん派ですか。私はアデル役のアデルちゃん派ですね♪
3. Posted by Caine   2014年12月18日 23:44
そうなんです。決してエロくない。
だってあれだけむき出しの愛情を見せつけられたら、身体を、快感を求め合うというよりは、愛を求め合っていると素直に納得できてしまうから。
が、俺もにゃむばななさん同様アデルちゃんに一票ってことで(笑)
この辺が我々はやっぱ男ってことですな^^;
4. Posted by にゃむばなな   2014年12月18日 23:56
Caineさんへ

そうそう、本当に愛を求めあっているっていうところが男女の絡みとは微妙に違うところなんですよね。
しっかしアデルちゃん派だのエマちゃん派だの、やっぱり我々男はどう足掻いても男ですな♪

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