2014年05月04日

『旅立ちの島唄〜十五の春〜』

旅立ちの島唄15歳で人生の岐路に立つ。
沖縄本島から東へ360km離れた南大東島。島には高校がないため、進学を選ぶ子どもたちは15歳になると島を出なければならない。そんな実話から生まれたこの感動作。
わずか15歳で涙を流しながら家族を想う。わずか15歳の子供の旅立ちを見送らねばならない。そんな淋しさを成長の糧にする家族の絆に涙が止まりませんでした。

大阪から富山までが約360km、電車移動で4時間強。対して沖縄本島から南大東島までは同じ360kmでも移動時間は船で約13時間。一度島を出ると、そう簡単に帰って来るのが難しくなるこの距離。

就職した兄、結婚して娘を授かった姉、訳あって別居状態の母が住む沖縄本島に進学する。それは15歳の優奈にとっては嬉しいこと。
でも自分が島を出ると家には父親一人になる。それは末娘の優奈にとっては淋しいこと。

そもそも15歳というのは身体の成長の割には精神は幼稚で潔癖。弱い自分を隠すかのように、周囲に「綺麗さ」を求めてはその写し鏡で自分の無力さを知るお年頃。

北大東島との交流がきっかけで出来た彼氏クンが家庭の事情で進学を諦め漁師として島に残る決意と聞けば、15歳にして人生の一択しかない選択肢を選ぶしかない怖さに言葉を失い、沖縄本島で久しぶりに家族に会えば、仕事で忙しい兄や新しい伴侶を求めようとする母に言葉に出来ない怒りを覚える。しかも頼りたいはずの年上の友人は沖縄本島で彼氏持ちになり変わってしまって声も掛けれない。

昨年母が他界し父と2人暮らしの私も優奈と似たような立場にいるので、彼女の気持ちはよく分かります。自分が成長のため一歩踏み出せばそれは父親の孤独を招き、でもその一歩を躊躇すれば自分が負担を全部背負っていると家族に思わせてしまう。
生半可な幸せなんてない。全ては自分の決断に覚悟と責任を持つのみ。そんな現実に直面する15歳の少女の淋しさや不安。

でもこの少女はその淋しさや不安を成長の糧に覚悟を決めていくのが何とも格好いいこと。
離婚寸前からヨリを戻した義兄には「ねぇねをお願いします」と深々と頭を下げ、父親が学生時代には島出身者が自分だけだった話にも動揺せず、一人暮らしを選ぶことで母親には島に戻るように説得し、でも離婚を決めた両親の選択を娘として静かに受け入れる。
特に希望高校での面接試験で優奈が家族のことを話すくだり。また独りぼっちになる父親のことを心配し、静かに涙を流す。娘として、最後まで父親と一緒に暮らした子供として、どれだけ家族を大切にしているか。「自分のことよりも親のことを」というその想いを聞くだけで涙が止まりませんでしたよ。

そして子供が親を想うように、また親も子供を想うもの。「子供は親を選べない。だから守ってあげないと」という父親の言葉にも隠されている「自分のことよりも子供のことを」という想い。

そんな親と子供の絆をこの南大東島の文化は大切にしているシーンもこの映画でしっかりと描かれているのがまた嬉しいこと。
もちろん両親への感謝の想いを謳った島唄を披露するくだりも良かったのですが、中学卒業後に親と一緒に鍾乳洞に泡盛を貯蔵しに行くくだり。5年後の開封を2人で約束するというのは、それが子供が親元に帰る一つのきっかけであり、親にとっても子供が旅立った淋しさを埋める大事な存在でもある。

だからこそ優奈の旅立ちの日、お世話になった先生や漁師の兄ちゃん、叔母さんにはきちんと別れの挨拶をしても、父親には一言「行ってきます」といつも通りの出掛けの挨拶をする。必ず帰ってくるよという想いを込めて。もうこのくだりでも涙が止まりませんでしたよ。

八丈島からの移民と沖縄からの開拓民によって歴史を紡いできた南大東島。琉球と大和の架け橋となるこの島から毎年15歳になって旅立つ若人は、14歳の後輩たちにその想いを託す。そして家族のような島にまた戻ってくると約束して船から紙テープを投げる。
そこには盗んだバイクで走り出すような15歳の姿などはない。あるのは元服を迎えたような立派な15歳の姿のみ。そんな15歳たちを島から見送るシーンをEDロールに使うセンスも素晴らしい映画でした。

深夜らじお@の映画館はセリフ廻しが不得手な現地の方を俳優として起用するのは演出的にマイナスだと思いました。エキストラで十分。

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acideigakan at 18:25│Comments(2)clip!映画レビュー【た行】 

この記事へのコメント

1. Posted by kajio   2014年05月05日 02:12
小林薫さんと大竹しのぶさんという現在進行形のバリバリの演技派をフル活用した素晴らしい作品でありながらも、全くハッピーエンドではないところが心に残りました。

吉田康弘監督はかつて、井筒監督の作品の脚本を書いていたそうなので、今の井筒監督ではおそらく作れないであろう人情喜劇を作ってほしいです。


2. Posted by にゃむばなな   2014年05月07日 01:19
kajioさんへ

ハッピーエンドでないところがこの映画のいいところですよね。
現実はそんな甘いもんじゃない。そのしょっぱさのある青春をきちんと描いている。
それが心地のいい映画でしたよ。

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