2014年07月03日

『チスル』

チスル国家に対する怒りが聞こえてこない。
韓国史上最大のタブーと言われている済州島四・三事件を済州島出身のオ・ミョル監督映画化したこの作品。白黒映像で見せることで芸術性を高めているのはいいものの、理由も分からず殺された人々を通して国家への怒りをあまり描かこうとしないその低温ぶりがどうも好きになれない映画でした。

祖国分断に繋がる南朝鮮単独政権樹立選挙を島民が阻止しようとしたがために、約2割に当たる6万人が虐殺されたという済州島四・三事件。
祖国を憂う者が祖国の兵士に殺される。それはまさに『シルミド/SILMIDO』と同じく、あまりにも理不尽な韓国の黒歴史。
となると、当然この映画には祖国に対する怒りが聞こえてきてもいいはず。しかも済州島出身の監督が撮った作品となれば、その怒りは激しかろうが静かであろうが燃えていてもいいはず。

でもこの映画からはそんな国家への怒りが全く聞こえてこないんですよね。それどころかEDロール手前でこの事件は米軍と韓国政府による悪行とはいえ、米軍の最高責任者はいまだに沈黙しているとだけテロップを出されても納得出来ないんですよね。
別に劇中に米兵が登場している訳でも、会話にアメリカが出てきている訳でもない。しかも韓国政府の責任者についてはEDロール前テロップでも言及されない。
それではいったいこの映画は何を描きたいのか。それがあまり見えてこないのです。

理由も分からず殺される運命にある島民たちは2〜3日洞窟に隠れれば何とかなるだろうと楽観的なので、会話も全然緊迫感がなくユーモラス。
対して島民をアカの暴徒と勝手に決めつける韓国軍は下級兵士には「食事がしたければ暴徒の首を斬れ」と暴言を吐く上官がいれば、真冬の屋外に部下を全裸で放置したことも忘れる上官がいる有様なので、当然上官は横暴を働き、下級兵士は理由も分からず島民に銃を向けては発砲するくだりはあまりにも悲惨。

そんなユーモラスと悲惨さを白黒映像で見せることで、時には何が起こっているのかわからない不満もあれど、暗くて見えないがゆえの悲惨さも伝わってくるなど、監督の手腕や作品としての芸術性の高さは感じるだけに、ここで『シルミド/SILMIDO』のように悲しみというファクターで国家への怒りを描くなど、何らかの形で真実から目を背ける祖国に対して「済州島民として一言申し上げる!」というものが欲しかったですね。

てな訳でじゃがいもを意味する「チスル」が最も印象的だった、年老いたオモニが洞窟行きを拒み、じゃがいもが散乱するくだりの切なさが涙に繋がって欲しいとも思えた、退屈ではないけれども面白いとも思えなかったインディーズ映画でした。

深夜らじお@の映画館は韓国映画にも国家に対する怒りをもっと描いて欲しいです。

※お知らせとお願い
【元町映画館】に行こう!

acideigakan at 23:26│Comments(0)clip!映画レビュー【た行】 

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
昨日の訪問者数
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

※オススメです♪※
『KANO~1931海の向こうの甲子園〜』主題歌
ぷろふぃ〜る

にゃむばなな

Twitter始めますた
nyamu_bananaをフォローしましょう
livedoor 天気
ちょいとした広告掲載