2014年08月28日

『プロミスト・ランド』

プロミスト・ランド会社を信じちゃいけないよ。
信じちゃいけないものは噂だけではないのです。会社も信じちゃいけない。その辺りを理解していない綺麗事主義の脚本が残念でならなかったこの作品。
中小零細企業に勤めている人間としては、この時価総額90億ドルの大手エネルギー会社の幹部候補生の仕事ぶりは素晴らしいと思えても、会社に対する考え方はダメダメでしたよ。

ガス・ヴァン・サント監督とマット・デイモンのオスカー作品以来の組み合わせと聞いて楽しみにしていましたが、相変わらず風景シーンは美しいものの、肝心の脚本に関しては大手企業によくいる「会社LOVE人間」視点でしか描かれていないので、どうしても中盤以降、物語に説得力がなくなってしまっているこの作品。

その象徴的なくだりがアテナという環境団体からやってきた謎の環境活動家から発せられる情報と妨害工作に対するスティーヴたちの対処法。

そもそも家の前で遊んでいる子供に「君が地主さん?」と冗談から入って、貧しい町の住民に地下に埋蔵されているシェールガスを掘り起こせば豊かになると説いては契約を取って来るスティーヴとスーは凄く優秀な営業社員だと思います。

ただ突然現れては妨害工作を行うダスティンへの対処法は優秀とは程遠い無能さすら感じるほど。
例えばスティーヴたちが務めるグローバル社がシェールガスの採掘時に環境を汚染した事例があると写真を使って訴えかけるダスティンに対して、スティーヴは会社への問い合わせを一切せず、「会社が情報を隠すはずがない」と信じ込む始末。ダスティンの示す情報の真偽をまず調べればすぐに済むことなのに、会社への問い合わせなど一切しない。
しかも変なタイミングでダスティンの情報が偽物であると会社から資料が送られてきたことにも疑いを持たない。

さらにスティーヴたちのレンタカーのフロントガラスにまでパンフレットを張って視界を覆い隠すのも完全な営業妨害行為。そんなことも警察に訴えればすぐに済むことなのに、なぜか怒りを抑えてダスティンと接する始末。

結局ダスティンは住民の意思操作のために、スティーヴやスーが知らない状況下でグローバル社が送り込んだ偽の環境活動家。反対勢力がヘマをすれば自然と勝利が舞い込んでくる状況を作り出すために、グローバル社がわざと送り込んできたグローバル社の社員。
まるでそのことを知っているかのように、ダスティンに対して遠回りな対処法しか用いないスティーヴのやり方は個人的にはどうしても理解出来ないんですよね。

確かに大手企業の社員さんには盲目なほど会社のことを全て信じる「会社LOVE人間」が結構いますが、そういう社員さんほど会社をブラック化していく要因でもあるんですよね。
ですから本当に会社のことを考えている人間は、必ず会社からの情報を全て鵜呑みにはしないもの。状況に応じて「会社は所詮人の集まり。嘘も往々にしてあるもの」と考えるのが良き社員のはず。

ですからある意味汚れのないスティーヴのような純真な人間がいくら売り上げを稼ごうが、会社は自分たちの悪行がバラされれば容赦なく「会社LOVE人間」でもクビにするのが現実。

エネルギー確保のために環境を破壊することもあれば、エネルギー確保のために住民への情報操作も行うこともある。シェールガスがいい悪いではなく、人として何が正しくて何がダメなことなのかを見つめ直す作品としてはいいかも知れませんが、ただこんな人を疑う事を知らない主人公ではその説得力も欠けてしまうもの。

風景も美しい、物語も美しい、テーマも美しい。ただ主人公のキャラクターだけは美しすぎて現実味が薄れてしまっている。
汚い世界を知っているからこその美しさを知っているはずのガス・ヴァン・サント監督だけに、少々残念に思えてならない映画でした。

深夜らじお@の映画館にとって残業大歓迎・ノルマ大好き・職場環境無視の「会社LOVE人間」は天敵です。

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acideigakan at 17:48│Comments(2)clip!映画レビュー【は行】 

この記事へのトラックバック

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14-71.プロミスド・ランド■原題:Promised Land■製作年、国:2012年、アメリカ■上映時間:106分■料金:1,100円、TOHOシネマズシャンテ(日比谷)■鑑賞日:9月1日 □監督:ガス・ヴァン・サント□脚本・製作:マット・デイモン、ジョン・クラシンスキー◆
11. プロミスト・ランド / Promised Land  [ 勝手に映画評 ]   2014年11月30日 16:51
世は、“シェールガス革命”と言われていますが、その【革命】の負の部分を描いた社会派作品。マット・デイモンが、主演のほか、制作にも関わっています。 マット・デイモンが、良いですねぇ。オーシャンズシリーズでは若手で皆にからかわれ、ボーンシリーズでは超人的なエ.

この記事へのコメント

1. Posted by ノルウェーまだ〜む   2014年09月01日 00:06
にゃむばななさん☆
私もいまひとつぐっとくるものに欠けるなぁと思っていたのは、途中寝てしまったからだけではなかったのですね(笑)
やっぱり会社を信じちゃいけないのも確かに…ですが、会社はそもそもどうしてスティーブに最初からそういう作戦だと言わなかったのでしょうね。
騙しておいてあっさりとクビを切るアメリカの会社って怖いわ…
2. Posted by にゃむばなな   2014年09月02日 01:35
ノルウェーまだ〜むさんへ

ブラック会社が増えている昨今、会社が嘘を言わないなんて世間知らずだけが語る戯言ですからね。
その辺りを分かっていないこの脚本では説得力はありませんでしたよ。

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