2014年09月04日

『NO ノー』

NO15分枠の広告だけで独裁政権を倒す。
1988年に南米チリでピノチェト軍事独裁政権への信任投票に対して不信任票を投票するように呼びかけた若き広告マンの静かなる戦いを描いたこの作品。実話をベースにしているとはいえ、ドラマティックに出来るところをあえて淡々と描くことで評価を上げている一方で、退屈に感じてしまう部分もある映画でした。

経済発展を成し遂げた一方で、政権反対派の取り締まりを続けてきたアウグスト・ピノチェト政権。東西冷戦の終結により独裁政権への批判が高まる中、ほぼ出来レースであるにも関わらず信任投票を行うとなれば、当然野党の面々は諦めモード。国民の20%は信任投票にイエス派、70%は棄権する状況下なので、「勝ち取った15分枠をひとまず埋めるので精一杯」「国民に対して啓蒙出来れば成功だ」「所詮負け戦。勝てるはずがない」という意見ばかり。

そんな野党連中とは違い、協力を求められた若き広告マンのレネは「勝ってナンボの世界」で仕事をしている身なので、当然勝つために動く動く。
プロの仲間を集め、政権に対するネガティブキャンペーンをする野党の広告にダメ出しをし、今の時代に合った政権批判のメッセージを前面に出さないものを作る。

それは素人から見れば「ホンマにそれで大丈夫?」というものにも見えなくはないのですが、ただ政権批判のネガキャン広告と見比べると確かに未来志向のあの広告は分かり易く、かつ希望が見えるものにも見えてくるのです。
逆にネガキャン広告は「過去ばかり見ている」「自分たちの辛苦を伝えたい」といった暗いどころか、どこか自分たちのことばかり述べているようで国民目線とは言えないにも見えてくるのです。

そもそもイエス派の広告は実績アピールでも十分なのですから、現状維持が未来志向になるという広告。そんな好条件で作られた広告に対抗するためには、やはり同じ土俵、もしくは相手より優れた土俵で戦うしかない。ならば極端に明るくするのはある意味当然と言えば当然の戦略でもあるんですよね。

ですからそんな広告を作る広告マン・レネをドラマティックに描いてもいいところなんですが、チリの歴史に詳しい方の話によると、ピノチェト政権崩壊後のチリは経済格差が広がるなど決していい方向に進んだとは断言できない歴史を歩んできたとか。
つまりこのピノチェト政権打倒のノー広告がこの時代の国民に勝利をもたらしたものであっても、歴史的にはどうなのか?という疑問も残るものでもある。そこがドラマティックに描けない理由だとか。

昨今の日本もこの時代のチリと同じく諦めモードが投票率を下げていますが、深夜放送で、しかもたった15分枠の広告で世の中を変えることが出来るというのは素晴らしいこと。
ならば現代日本も広告一つで世の中が変わる可能性がある。ノーと言えない日本人でもノー以外なら言えるのなら、視点と考え方を少し変えるだけで世の中は大きく変わるのでしょう。

深夜らじお@の映画館はべっぴんさんのお願いにはノーと言えない日本人です。

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acideigakan at 11:44│Comments(4)clip!映画レビュー【た行】 

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この記事へのコメント

1. Posted by mig   2014年09月06日 00:59
私も。
>ドラマティックに出来るところをあえて淡々と描くことで評価を上げている一方で、退屈に感じてしまう部分もある映画でした。

全く同感。
まぁまぁ良かったんだけど評価されてるほど面白くもない、ちょっと演出、内容もありきたりな感じもありましたしね。
2. Posted by にゃむばなな   2014年09月06日 17:17
migさんへ

そうそう、各映画賞などの評価からするとこの地味さはちょっと意外でしたね。
いい映画なんですけど、退屈に感じるのがもったいないとも感じる映画でしたよ。
3. Posted by ふじき78   2014年09月15日 09:10
そうだそうだ。ドラマチックじゃないんだ。ロッキーのラストが盛り上がるみたいなスタローンっぽい競り上がり感が欲しかった。スタローンが主役だと得体のしれない映画になるからそこまでは求めないけど。
4. Posted by にゃむばなな   2014年09月15日 10:58
ふじき78さんへ

あの予告編からドラマチックなものを求めてしまいますよね。
でもそうじゃなかったというのは、宣伝方法の失敗ということになってしまうんでしょうかね。

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