2014年10月01日

『ジャージー・ボーイズ』

ジャージー・ボーイズ「君の瞳に恋してる」に込められた様々な想い。
元はブロードウェイミュージカルだったものを舞台俳優をそのまま映画俳優として起用した、この良くも悪くもクリント・イーストウッド監督作品らしく、楽曲は素晴らしいがストーリー展開に深みを持たせない傾向が強い作品。
でも見終わると不思議とスッキリするんですよね〜。

「フォー・シーズンズ」と聞いて浜崎あゆみさんしか知らない世代でも一度は聞いたことのある「シェリー」などのザ・フォー・シーズンズの名曲。そのザ・フォーシーズンズの結成から栄光を経ての転落までを描いたどこにでもあるタイプの映画なんですが、これがフランキー・ヴァリとボブ・ゴーディオが製作総指揮として関わっているからでしょうか、様々な酸いも甘いもを経験された方が持つ「人生を達観したがゆえの大らかさ」というものを見終わった後に感じるんですよね。

本来ならこれは成功を手にしたグループの宿命である友情と不和、栄光と挫折の物語。当然いつまで経っても田舎小僧から抜け出せないどころか、グループで一番音楽の才能がないにも関わらずそれを認めない「不努力のトミー」に対する恨み節が延々と綴られていてもおかしくないはず。
「作曲の天才でもあるボブ」の才能すら分からずに初めてのセッションでも最後に入ってきただけでなく、リーダー風を吹かせながらも「低音のニック」とホテルを10年間も同部屋で過ごしても気遣いすることなども全くないどころか、「天性の歌声を持つフランキー」のように大人として成長していくことも全くなかった「グループの癌細胞」をもっと扱き下ろしても良かったはず。

でも例え15万ドルという借金を肩代わりすると申し出ても反省の色さえ見せない仲間でさえ見捨てない「ジャージーの流儀」どころではないフランキーの友情は、もはや「相手がどうではなく、自分がどうしたいか」という人生論にまで達したもののように感じられるもの。
『ドリームガールズ』などのような「私たち、こんな経験してきたのよ」レベルではない、「そういえばワシら、こんな経験したな。今となってはもうどうでもいいけど」レベルに達したものになっているんですよね。

だからこそ、娘をドラッグで亡くしたフランキーが立ち直るためにもという想いで挑んだボブ作曲の「君の瞳に恋してる」を披露するくだりには、この「君」が娘や別れた妻だけではない、袂を分かちあったトミーやニックも含めた様々な人たちへの想いが込められているように思えて、楽曲は凄く明るいはずなのになぜか凄く切ないものにも聞こえてくるのです。
かつてはABCラジオ「ミュージックパラダイス木曜日:エンジェル小縣のミスターキューピッド」のコーナーテーマ曲として、「ふぐりクラブ」募集のBGMとして流れていた楽曲と同じものとは思えない感動さえあったのです。

そんな感動も冷めやらぬうちに迎える再び4人が授賞式という形とはいえ集まるラストも、「もうわだかまりなどありまへんねん」という人生達観論が息づいているからでしょうか、何だか見ているだけの我々も心がスッキリしてしまうんですよね。
まさかジョー・ペシが古くからの友人で、トミーは落ちぶれてからはその映画俳優の運転手をしていたとかも「あぁ、左様か。まぁええんちゃうの」以外は何も思わない清々しささえ感じるほど。

ですからザ・フォー・シーズンズの栄光と挫折を描いた作品と期待した方にとってはどこか物足りなさも感じる作品でもあると思います。ただこの作品は人生を達観した世代が撮った作品。クリント・イーストウッド、フランキー・ヴァリ、ボブ・ゴーディオといった人生経験豊富な3人が作った映画。
人生の晩年をこういう風に達観して迎えることが出来るのもステキだと思える映画でもありました。

深夜らじお@の映画館はトミーのような成長知らずな人間は凄く苦手です。

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acideigakan at 23:58│Comments(8)clip!映画レビュー【さ行】 

この記事へのトラックバック

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この記事へのコメント

1. Posted by きさ   2014年10月02日 22:41
ブロードウェイ版と同じくリードボーカルのフランキー・ヴァりを演じるジョン・ロイド・ヤング始め、配役が素晴らしい。
みんなさすがに歌がうまいです。
クリストファー・ウォーケンが渋い演技を見せるのもうれしい。
イーストウッドの演出も快調。最後のミュージカルシーンが楽しかったです。
ホテルのテレビに「ローハイド」の若きイーストウッドがちらっと登場するのも楽しい。
個人的には現時点で今年の洋画ベスト3に入る快作です。
どうでもいい話ですが、ジョン・ロイド・ヤング、顔が爆笑問題田中にちょっと似てませんか。
2. Posted by YUKKO   2014年10月04日 22:09
イーストウッド作品は外せません。この時代の音楽を知らないので懐かしさはなかったけれど、でもとっても心地よかった。
後半の「君の瞳に恋してる」の場面が私の中のクライマックスでした。どちらかといえば達者な技の映画という感じがしました。
3. Posted by にゃむばなな   2014年10月05日 11:43
きささんへ

確かに似てますね。田中さんを欧米顔にしたら、あんな感じかも。
やはりブロードウェイでの役者そのままで映画を撮るのが一番ですよ。
4. Posted by にゃむばなな   2014年10月05日 11:48
YUKKOさんへ

この時代の音楽をご存じの方なら、もっと感動出来たのかも知れませんね。
私は特に感動ということはなかったのですが、でもクリント・イーストウッド作品は外せないのは同感です。
5. Posted by FREE TIME   2014年10月26日 18:21
自分も「ザ・フォーシーズンズ」の事を、よく存じませんでしたが、劇中で流れる歌を聞いていて「あの曲か」と思う事がありました。
当時はビートルズ並みの人気だったようです。
イーストウッド監督らしさの詰まった作品でした。
6. Posted by にゃむばなな   2014年10月26日 22:51
FREE TIMEさんへ

名曲というのはどんなに時代が変わっても語り継がれるものなんですよね。
それをこの映画を見て改めて思いましたよ。
7. Posted by kajio   2014年11月17日 00:15
トミーがラスベガスに幽閉されている間の短編のスピンオフが観たくなりました…

が、福本先生のカイジみたいになりそうな気もするので、別にいいですかね(苦笑)

8. Posted by にゃむばなな   2014年11月18日 23:35
kajioさんへ

そのスピンオフは是非見たいですね。
しかも短編というところがいい。
だって大した話はなさそうですもんね。

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