2014年10月11日

『ふしぎな岬の物語』

ふしぎな岬の物語大丈夫、大丈夫。大事な人にだけ効く、心が温かくなる魔法の言葉。
これは人生初のプロデュースにも挑んだ吉永小百合さん主演でなければ成り立たない映画です。そしてこの年齢を重ねても「吉永小百合」という美しさを失わない女優を敬愛する俳優陣によって虹のように様々な色合いを醸し出した、ほっこりした映画です。

ヴェネチアやトロントの国際映画祭に欧米映画が流れるためアジア映画が中心になり、国際映画祭としての開催意義が問われ始めている第38回モントリオール国際映画祭でグランプリを受賞したこの作品。
同じく東映・TBS・モントリオール国際映画祭グランプリ受賞の『おくりびと』と比べても観客を捉まえるほどの魅力はないものの、「吉永小百合」という女優の存在価値を知る映画ファンにはある意味必見の作品だと思います。

というのも、現代の日本映画界において吉永小百合さんほど世代や性別を問わず敬愛されている女優は存在しないと思います。
同世代には理想の女性であり、若い同性にはこういう風に歳を重ねたいという憧れ、そして若い異性には安心感を漂わせている母性の象徴。女優としてもブレない美しさを長く保たれているだけでなく、その美しさが歳を重ねると共に微妙に変化しているからこそ、いつまで経ってもこの美しさに飽きることがない。

まさにこの「女優:吉永小百合」に対する想いが物語として具現化されたのがこの作品であり、不動産社員のタニさん、漁師の徳さん、何でも屋で甥の浩司、出戻りのみどりの「岬カフェ」の店主・悦子さんへの想いが「女優:吉永小百合」への思いでもあると思うのです。

ですからタニさんの左遷相談など本来なら俳優の表情を描くべきシーンでもなぜか俳優を背中越しにしか撮らないカメラワークも、吉永小百合さんを敬愛する成島出監督作品だからこそ、これは「サユリスト」による別世代の「サユリスト」のための「サユリスト」としての礼儀。逆にここで表情を描くのは「サユリスト」としては無礼にあたるということなのでしょう。

だからこそタニさんの横断幕への感謝も、徳さんの病床での珈琲タイムも、泥棒さんの柳葉包丁餞別も、みどりの「おいしくな〜れ」修行も、陶芸家と超能力娘の虹の絵引き取り話も、浩司の生涯見守り使命も単なるエピソードとしては描かず、それぞれの世代から見た「女優:吉永小百合」への想いをして敬意を持って描いているんですよね。

そして下手すれば神格化してしまいそうな「女優:吉永小百合」に対しても決してスーパーウーマンとしては描かず、どこにでもいる実は孤独に怯えている女性として描くことで、どこにでもいるようで実はそうはいない女性と母性を兼ね備えた、どの世代からも愛される女性として描いているところに、改めてこの映画は吉永小百合さんでなければ成り立たない作品だと思いましたよ。

えっちゃんが浩司の伯母という説明が遅すぎる、みどりの元夫が映像ではダメ男に見えない、堆肥の匂いがダメで離婚したバカ花嫁の話は不必要、ヨシキサン先生にもエピソードが欲しかった、床に落ちた火が一気に燃え広がるのは不自然など、映画としての完成度は決して高くないものの、モントリオール国際映画祭グランプリ受賞作品としてではなく「女優:吉永小百合」が日本映画界にいてくれる喜びを描いた作品としては素晴らしい映画でした。

深夜らじお@の映画館もこういう母性も女性も兼ね備えた年上女性がいる環境で過ごしたいです。

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acideigakan at 14:19│Comments(6)clip!映画レビュー【は行】 

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9. 『ふしぎな岬の物語』  [ 京の昼寝〜♪ ]   2014年10月18日 07:58
□作品オフィシャルサイト 「ふしぎな岬の物語」□監督 成島 出□脚本 加藤正人、安倍照雄□原作 森沢明夫□キャスト 吉永小百合、阿部 寛、竹内結子、笑福亭鶴瓶、笹野高史■鑑賞日 10月11日(土)■劇場 チネチッタ■cyazの満足度 ★★★☆(5★満点、☆
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この記事へのコメント

1. Posted by ふじき78   2014年10月13日 00:47
> 堆肥の匂いがダメで離婚したバカ花嫁の話は不必要

同意(笑)。PART2が出来て『エイリアン2』みたいにアクション映画に移行した時の敵役になるんだな、きっと(嘘)。
2. Posted by にゃむばなな   2014年10月13日 14:52
ふじき78さんへ

ほんま、何であのエピソードを描いたのか…。
しかも無名女優を起用していないのも不思議でしたわ。
3. Posted by kajio   2014年10月20日 00:18
事務所の大先輩・吉永さんに頼まれたら絶対断れないのもわかりますが、いい加減阿部ちゃんは裸芸から卒業させてほしいです…

4. Posted by にゃむばなな   2014年10月20日 22:49
kajioさんへ

寛さんの裸芸は確かに卒業させてあげたいですね。
ただ本人はどうなんでしょう。
多少なりとも楽しんでいるようにも思えなくもないのですかが…。
5. Posted by FREE TIME   2014年11月13日 23:56
こんばんは。
吉永小百合さんの為にあるような映画でしたね。
自分も、あのバカ嫁の行動にはゲンナリしました。
花屋に嫁いだなら、そのくらい事前にわからなかったのでしょうか?
6. Posted by にゃむばなな   2014年11月16日 23:25
FREE TIMEさんへ

サユリスト映画なのにあの意味不明な花嫁。
いったい何だったんでしょうね?

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