2014年11月12日

『トワイライト ささらさや』

ささらさやバカだねぇ、子供ってヤツは。親になるまで親の気持ちが分からないんだから。
これは夫婦のお話ではなく親子のお話。いや正確には親になるという意味を問うお話。だからこそ結婚適齢期に突入している独身世代や既にご結婚されている若夫婦にはあのセリフなしに続くクライマックスは涙なくしては見れないのではないでしょうか。

交通事故死した面白くない落語家ユウタロウのお葬式をユウタロウの噺家ナレーションで進めるOPから、大泉洋節で見せてくるこの作品。特に面白いことを言う訳でもないのに、なぜか飽きることのないあの不思議で独特で、そして温かい雰囲気は自然と心を和ませてくれるんですよね。

ただ前半は半テンポ遅めなうえに、ユウタロウが乗り移ることの出来る人物も4人だけという異様な少なさも重なってか、特にお話的にはあまり面白いとは思えるものはなかったんですよね。
富司純子さんが胡坐をかいては寝転びながら足をバタつかせるなどの大女優にしては物珍しいシーンが見れるとか、まさか無口なダイヤ君にも乗り移るとか、小松政夫さんはさすがだとか、中村蒼さんも頑張っているとかなど、俳優の面白さはあれどテンポは遅いのに展開は早いなぁ〜としか思えなかったんですよね。

ところが波乃久里子・藤田弓子・富司純子のスリーばあちゃんズ+リラ姐さんの双眼鏡隊があまり活躍しないどころか、石橋凌おじいちゃんの孫誘拐騒動で予定通りユウスケ君にユウタロウが乗り移って、無事に石橋親分を引っ叩いたさやママの息子奪還作戦が終了したところで語られるユウタロウの回顧録から続く石橋親分の知られざる苦労に満ちた過去。これがまぁ涙なくしては見れないこと。

我が子を嫌う親なんていない。特に父親は子供と一緒に過ごしたい時間と気持ちを削ってまでも仕事に打ち込む。例えそれが時に妻の死に目にも会えない、息子には誤解されたまま嫌われるという結果に繋がったとしても。
でも本音は淋しい。せめて落語家になった息子の晴れ舞台は見たいけれど客席には座れないから物陰から見守るしかない。息子が幸せであればそれでいいのだから。
なのに幸せになる前に旅立った息子。その葬式で出てしまった「バカヤロウ!」という本音は、息子を置いていくな、新妻を置いていくな、そして父親である自分を置いていくなという淋しさと悔しさが入り混じった複雑な親の気持ち。

そんな複雑な親の気持ちを、30代でありながら親世代の気持ちを描かせたら60代の監督よりも巧い深川栄洋監督がセピア色の画面と優しい音楽と石橋親分の演技力で見せ切るあのクライマックスは、同じ30代としては自分の親だけでなく、結婚し子供が生まれた知人や兄弟姉妹の顔を思い出さずにはいられないものでしたよ。
しかも新米ママだったはずのさやがユウタロウが乗り移ったことも気付かずにユウスケを抱きしめたというエピソードまで語られちゃ、独身の自分も早く結婚して家庭を持たねばと思ってしまうじゃないですか。

使い古されたテーマに加え、ジオラマを使っている理由もいまいち分からない作品ではありながら、喋るだけ喋って観客を笑わせておきながら黙ると泣かせる演技も出来る大泉洋さんと親世代の気持ちを描かせれば右に出る者はいない深川栄洋監督の魅力が存分に味わえるこの映画。
EDロールでの家族写真もステキだっただけに、私も早く自分の家族を持てるように婚活を頑張りたいと思いました。

深夜らじお@の映画館は神戸浩不発にはちょっと不満です。

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acideigakan at 15:54│Comments(8)clip!映画レビュー【た行】 

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□作品オフィシャルサイト 「トワイライト ささらさや」□監督 深川栄洋□脚本 山室有紀子、深川栄洋□原作 加納朋子□キャスト 新垣結衣、大泉 洋、中村 蒼、福島リラ、つるの剛士、        波乃久里子、藤田弓子、小松政夫、石橋 凌、富司純子■鑑賞日 1
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この記事へのコメント

1. Posted by BROOK   2014年11月12日 16:23
たしかに乗り移ることの出来る人物がちょっと少ないような感じがしました。
もっと次から次に…というようになるのかな?と思っていましたけど。

展開はほんわかしていて、涙だけというよりも、笑って泣ける作品になっていたように思います♪
2. Posted by Caine   2014年11月14日 20:00
親はなるもんじゃなく、子供にしてもらうもの。そんな言葉が身にしみる作品だったなと。母親経験がないがっきーだからこそこの役はハマったんだと思いましたよ。
がっきーと3ばーちゃんずの関係は役の上でも女性としてもじゃないかな。
3. Posted by にゃむばなな   2014年11月16日 23:24
BROOKさんへ

あと3〜4人ほど乗り移ってもらわないとね〜。
あれだけ大きな病院のある町なんですから。
4. Posted by にゃむばなな   2014年11月16日 23:26
Caineさんへ

ほんと、このヒロインは母親経験がないだけに不安な様子が見事でしたね。
がっきーも役の幅が広がって良かったのかも?
5. Posted by yukarin   2014年11月20日 12:39
こんにちは。
夫婦のお話かと思ったら親についてのお話でしたね。
ユウタロウと父親とのエピソードがとても良かったです。
しんみりしちゃうお話なところ、俳優陣がユウタロウになりきった演技に笑いました。
6. Posted by にゃむばなな   2014年11月20日 23:17
yukarinさんへ

大泉洋という存在が映画全体に響き渡った作品でしたね。
ほんと、俳優陣の頑張りは凄いですわ。
7. Posted by kajio   2014年11月27日 19:49
石橋凌さんが、衝動的に(しか見えなかった)赤ちゃんをさらってしまうトンデモ展開は最低レベルだった様に思いましたし、落語の要素がもうちょいあってほしかったけど、ガッキー以下役者さん達は皆良かったと思います。

8. Posted by にゃむばなな   2014年11月28日 23:08
kajioさんへ

落語の要素を期待するなら、やはり関西が舞台でないと。
他の地域では落語に対する思い入れが少ない環境が当たり前ですからね。
もうこれは仕方ないことかと。

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