2014年11月20日

『6才のボクが、大人になるまで。』

6才のボク6才のボクが大人になるまでに必要なこと。それはたくさんの人たちからたくさんの愛を受けること。
劇的な展開がある訳でも、クライマックスに向けて何か大きな感動がある訳でもないのに、見終わった後に時間が経てば経つほど心に広がってくるこの不思議な感動はいったい何なんだろうか。
独身者にとっては、いつか親という立場になった時に改めて見直したいと心から思える映画でした。

エラー・コルトーレン、ローレライ・リンクレター、パトリシア・アークエイト、イーサン・ホークを1つの家族として毎年数日ずつ撮影すること12年。数人の俳優を用いて一人の人物を描くのではなく、本当に一人一役で12年の歳月を掛けて作りあげたこの作品。
しかも年齢毎にセクションを設ける訳でもなく、ただ淡々と6才のメイソン少年が18才のイケメンへと成長していく様を、姉サマンサ、母オリヴィア、父メイソンSr.と共に描いていくので、どこか親戚の立場のような不思議な感覚で見ることが出来るんですよね。

始めは近所の友達とエロ本で盛り上がり、別居中の父親との週末面会を楽しみにする、普通に可愛らしい少年だったメイソン。
ただ母親は急な引っ越しを切り出すわ、男を見る目がないばかりに酒呑みで暴力を振るう大学教授と再婚して新しい姉弟とも別れざるを得ないわ、またまた男を見る目がないばかりに教え子の元軍人と再婚しては子供に窮屈な想いをさせるわと、頼りないことばかり。

一方で父親になる覚悟も出来ぬままに子供を作ってしまったがゆえに父親になり切れていないメイソンSr.は、親というよりは年上の友達のような感覚で子供たちと付き合う、こちらも決して頼りになるとは言い切れない存在。

でもこの再婚とメイソンやサマンサにとっての異母弟の誕生により、ようやく父親としての自覚が出てきたメイソンSr.と、再婚と離婚を繰り返し娘と息子を振り回しながらも大学教授として頑張ってきたオリヴィアの言葉には、親として手探りでやってきた不安、子供を苦しめてしまった後悔、自分の道は自分で切り開く子供になってほしいという希望など、様々な親としての感情が詰まっているんですよね。
だからこそ本当にメイソンもサマンサも立派に育ってくれて良かったと心から思えてくるんですよね。

継父たちとの窮屈な時間を思えば、メイソンもサマンサもグレてしまってもおかしくなかったはず。
でもイケメンに成長したメイソンは写真という自分の道を見つけ、べっぴんさんに成長したサマンサは笑顔のステキな女性になってくれた。
そんな子供たちの姿を見ていると、特別な言葉や行動がなくても親が子供を本気で心配し愛している限り、親の愛は必ず子供に伝わるものだと分かるんですよね。
そして同時に自分の親も同じことをしてくれたことが分かり、いつかは自分もそういうことをする立場にならなければとも思えてくるのです。

子供の頃は誰でも目に映る世界は狭いもの。でもそれは親になったばかりの大人も同じ。狭い世界しか知らない者同士が家族としてスタートを切る。
ただ子供が成長するように、親も成長する。子供は未来を見ながら成長するが、大人は過去の過ちを後悔しながら成長する。

メイソンは両親から受けた愛を写真という形で表現していくのだろう。
サマンサはそのステキな笑顔で両親から受けた愛を次世代へと伝えていくのだろう。
オリヴィアは旅立つ子供に淋しさを覚えながら、次はおばあちゃんになるべく成長する準備に掛かるのだろう。
そしてメイソンSr.はサマンサやメイソンに十分に注ぐことの出来なかった愛を、新たな息子に注いでいくのだろう。

父親がくれると約束した車を売ってしまったことに、父が自分よりも異母弟を気に掛けていると分かった時の淋しさ。
母親が大学寮へと引っ越す当日になって淋しさをぶつけてきたことに、母がどれだけ必死に子育てをしてきたかが分かった時の有難味。

親の愛や想いは直接子供に伝える機会はそうはないもの。だからこそ何度も開かれるパーティ。そこに集えば、親戚や友人たちが教えてくれる。自分がどれだけ親の愛を受けているかということを。

この映画は165分で終わりますが、この家族の物語はこれからも続く、何年何十年と続く。観客もこの家族の関係者としてずっとこの家族を見守っていきたい。
そんなステキな体験が出来るこの映画。時間が経てば経つほど、そのステキさは増すばかりです。

深夜らじお@の映画館も早く結婚して子供が欲しいです。

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この記事へのコメント

1. Posted by Caine   2014年11月20日 23:43
アメリカの話なのに、古きよき日本を観ているような気すらしました。
自分は自分だけで生きてる訳ではない、両親の、周囲の愛情に抱かれて成長してきたわけで、自然とそういうことを理解している。
親は親で、子どもに親にしてもらうとはよく言ったもので、時とともに成長していく。優しく淡々とその姿を見つめ続ける作品ですが、自分自身を振り返りながら、一緒に歩んでしまったような作品でした。
2. Posted by mig   2014年11月21日 10:17
うんうん、感慨深い作品になってましたねー。
映画だからって、特別なにか見どころや事件を作り引きつけるわけではないけど、
日常のなかに大切なものがあると
しっかり伝わる素敵な映画でしたよね!
イーサンも相変わらず良かった!
3. Posted by かのん   2014年11月21日 21:43
そうなんですよね、この家族の姿が何故か不思議と身近に感じられてしまうんですよね。それはきっとどこの国や文化でも共通するような家族の大切なものをこの作品が描いているからなのかもしれませんね。
4. Posted by にゃむばなな   2014年11月22日 11:50
Caineさんへ

ほんと、家族の在り方に国境も人種も関係ないことがよく分かる作品でしたね。
子供に親にしてもらうという言葉も、この映画を見ていると凄く納得しますよ。
5. Posted by にゃむばなな   2014年11月22日 11:52
migさんへ

この映画を見ていると、本当に日常そのものが一番大事だと思えてきましたよ。
もっと日々感謝して生きていかないと。
6. Posted by にゃむばなな   2014年11月22日 11:59
かのんさんへ

親子関係・家族関係に人種も国境もない。
まさにこれ以上にない平和そのものですよね。
そういう世界にずっと浸っていたいと思えるのも、この家族を身近に感じた証拠でもあるんでしょうね。
7. Posted by ノルウェーまだ〜む   2014年11月28日 01:02
にゃむばななさん☆
実に素敵な映画でした。
観終わってからじわじわと感動が広がっていく、本当にそうですよね〜
子供は愛し過ぎて構い過ぎてもダメ、時には距離を置いて見守らなくてはならない。
判っていても難しいですが。
ママはあとは葬式だけって言ってたけど、子供の結婚、孫の誕生とまだまだ時は続いていくのですよね。
8. Posted by にゃむばなな   2014年11月28日 23:12
ノルウェーまだ〜むさんへ

この映画を見終わってから小さいお子さんのいるご家庭に対して温かな眼差しを向けてしまいますね。
私はまだ独身者ですが、既に姪っ子ちゃんたちを可愛がりたくてウズウズしている状態に陥ってます。
9. Posted by ノラネコ   2014年12月05日 22:41
自分の子供時代を思い出して、子供世代目線でも観られるし、親目線でも見られる。
人生はそのままでもドラマなんだなあというのが良く分ります。
オンリーワンのチャレンジが作り上げた、最高に素敵な作品でした。
10. Posted by にゃむばなな   2014年12月06日 23:37
ノラネコさんへ

ほんと、人生そのままがドラマですよね。
私はまだ親という立場にはいないので、これから先また立場が変わった折には見たくなる映画になりましたね。
11. Posted by オリーブリー   2015年01月17日 23:23
こんばんは。
大変遅れてしまいましたが、今年もどうぞ宜しくお願いします。

家族の歴史は、良いこともそうでない事も家族の宝ですね。
ほぼ親目線で観ていましたが、自分の十代を思い出すと、すっごく幼稚だったと思います(苦笑)
12. Posted by にゃむばなな   2015年01月18日 00:44
オリーブリーさんへ

今年もよろしくお願い致します。

この映画を見て思ったのは、大人になる=親という立場へと近づいていく=親の気持ちが分かるようになるということ。
これが家族の心の繋がりなんでしょうね。
13. Posted by YUKKO   2015年02月18日 21:43
アカデミー賞前に滑り込みでなんとか見ました。見て本当に幸せになれました。私もこうやって息子を育てた事自体一つの物語なんだと思いました。12年間よく撮れたなあなんて、感慨深かったです。愛情がすべてです。
14. Posted by にゃむばなな   2015年02月19日 22:46
YUKKOさんへ

これは親という立場にいる方から見るとまた感慨深いものなんでしょうね。
自分にもこんな物語があるということを子供と親、両方の立場から思えるんですから。

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