2014年12月24日

『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』

アバウト・タイム今日という時間は一度しかない。だから愛おしく美しい。
リチャード・カーティス監督が引退作として選んだ、自分の過去にだけタイムトラベルが出来る男を主軸としたこの感動作。
良いことがあっても、悪いことがあっても、今日という日は一度しかない。このありふれた言葉がとても愛おしく、かつ美しく感じる映画でした。

21歳の誕生日にこの家系の男だけは自分の過去に限ってだけだがタイムトラベルが出来る能力があると父親から教えられた、どう見てもモテないティム。
早速その能力を使い、夏休みに我が家に泊まりに来ていた初恋の相手シャーロットに何度も告白するも結果は撃沈。

仕方なく恋のお相手を探すのは後回しにしてロンドンへ弁護士として就職。父親の友人で毒舌脚本家ハリーの家に下宿。
そんな平凡ながら順調な人生を歩んでいる時に暗闇バーで出会ったのが母親と同じ名前のキュートな女性メアリーなんですが、暗闇でお互いの顔も見えずケイト・モスに関する話などで盛り上がった後で店先で2人が初顔合わせをするくだりが凄くキュートなんですよね。本当にこれぞ運命の出会いって感じで。

ただ連絡先を聞いて帰宅すればハリーの作品が演者のセリフ詰まりで酷評。ならばあの能力で修正してあげますよ!とばかりに正確な時間と場所をタイムトラベル!無事にハリーの作品は完全な形で上演され評価も上々。

でもここでトラブル発生!なんとメアリーの連絡先が消えている!というか、それ以前に過去を変えてしまったので出逢ってもないことになっているじゃあ〜りませんか。
ならば「ケイト・モス」というキーワードを元に美術館で張り込み。無事に再会。ただ彼氏がいるだと!?
えぇ〜い、ならばメアリーが彼氏を作る前に出逢えるようにタイムトラベルしてやる!付け焼刃でタイムトラベルするたびに彼女から聞いた知識だけの薄っぺらい会話でもメアリーを口説き落としてやる!で成功したティムは、その後もセックスのやり直しを繰り返すなど、本当に下半身の頭だけで物事を考えているような、まさに典型的で十分共感できる若造クンなんですよね。

ただ久しぶりにシャーロットと再会したにも関わらず、初恋の相手のアプローチを断ってまでメアリーにプロポーズをするくだりになると、一気にこのティムが一人前の男としての格好良さを身に纏い始めるんですよね。
本来ならシャーロットと浮気をしても、タイムトラベル能力で浮気前に戻ればいいところを、あえてその能力を行使せずに愛しの眠り姫の元に向かう。

しかも赤いウェディンドレスを纏ったメアリーとの結婚式も参列者代表スピーチ以外は、例え雨で参列者の衣装がびしょ濡れになってもタイムトラベルでやり直しなど一切しないところも、徐々にティムがこの一度きりの時間を精一杯楽しもうとする姿が見えてくるんですよね。

ところが無事に娘ポージーが生まれるも妹キットカットが失恋で交通事故に遭ったことを回避しようとキットカットと一緒にメアリーにも出会う前に戻りキットカットの人生をやり直させたら、今度は自分の娘が息子に変わっているじゃあ〜りませんか!
つまり過去に戻れるのは常に家族の誰かが生まれる前まで。それ以降はこれから生まれる子供の存在自体も消えてしまう恐れがあるから、不用意に出来ないとのこと。

とまぁここまではコメディー中心で、時に嬉し涙を誘うシーンを挟みながら、イギリスの美しい風景と共にワーキング・タイトルらしい優しい音楽で見せるリチャード・カーティスならではの作品だったのですが、この映画が素晴らしいのはここから物語がティムと父親の「父子」物語へとシフトしていくこと。これが本当にいい涙を流させてくれるんですよね。

特に父親の余命を聞かされ、妻からは3人目の子供を作ろうと提案されるくだり。新たに子供が生まれれば、もうその子供が生まれる前に天寿を全うする父親にはもう会えなくなる。
父親も同じ能力が使えるからこそ、ティムの気持ちが分かる。もうこの父子だけの卓球が最後の時だということが。
親になったティムも、今だからこそ分かる。結婚式で「この息子の父親であることを誇りに思う」とスピーチをしてくれた父親のその深い愛が。

そうして父子2人で戻った過去はティムがまだ幼かった頃、2人で海岸を歩いたあの大切な思い出。息子家族の幸せを自分のために壊したくない父親と、そんな父親の気持ちを受け入れるティム。

一日を過ごしたらタイムトラベルでもう一度同じ日を過ごせ。そうすれば失敗続きの友人ローリーを応援出来る。どんなに忙しくても親切に対応してくれる店員さんの笑顔にも気付く。本当に何が大切なのかが分かる。そう教えてくれた父。

同じ日をもう一度過ごしてみて分かったこと。それは毎日が平凡で非凡な日ばかりであるということ。何かもが愛おしい。何もかもが美しい。何気ない一日が最高の一日だということが分かる。だからタイムトラベルする必要もなくなる。そう悟ったティム。

何気ない一日が掛け替えのない時間になる。
今日を生きることが好きになる。

ラストでティムの子供たちは3人とも娘というところからも、男にしか遺伝しないこの能力もティムの代で終わり、つまりはこれが本当にリチャード・カーティス監督の引退作になるというメタファーなのでしょう。
でもティムに誰と結婚するんだ?と聞いてはメアリーに誰の子を妊娠したんだ?と聞くデズモンドおじさんのような、すっとぼけたキャラクターにも愛おしさを感じさせるリチャード・カーティス監督にはもっと映画を撮ってほしい。もっと温かな涙と笑いに包まれた映画を撮ってほしい。
そう願わずにはいられない映画でもありました。

深夜らじお@の映画館にもやり直したい過去はいくらでもありますが、それでもこれから過ごす毎日を大切にしたいと思います。

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この記事へのコメント

1. Posted by Caine   2014年12月24日 19:06
このね、おやじと息子との別れってのは、身勝手な言い方させてもらうと男にしか解らない物があると思うんですわ。
男はおやじの背中を見て育つ、生まれて一番最初に目標とし、終生目標とし続けるのがおやじの背中だと。
そのおやじと会えなくなる哀しみに泣けました。
2. Posted by にゃむばなな   2014年12月26日 11:22
Caineさんへ

そうそう、父親と息子の物語は男にしか分からないモノが確実にありますよね。
特に30〜40代の男性にとっては老齢の父親と重ねてしまいますし。
そういう意味でもこの映画を見ると、私も早く結婚しないと!と思いましたよ。
3. Posted by かのん   2014年12月26日 17:21
タイムトラベルの能力について理屈は一切述べず、ただ行きたい時間を念じるだけというシンプルさ。そしてティムはその能力を主に恋愛に駆使するところがいいんですよね。何度もベッドインを繰り返すくだりで大笑いしちゃいました。
4. Posted by mig   2014年12月27日 00:00
面白かったですね、
フランクでも主演してたこの男の子がまた良かったのと、意地悪役多いレイチェルが今回とってもキュートで良かったです♪
5. Posted by にゃむばなな   2014年12月27日 14:57
かのんさんへ

前半は能力を恋愛に、後半は父親との関係に。
どちらも愛にその能力を利用しているところがいいですよね。
6. Posted by にゃむばなな   2014年12月27日 14:58
migさんへ

女優陣はみなさんキュートでしたよね。
だからこそ浮気せずに恋人の元に走るくだりが余計にティムが格好よく見えましたよ。
7. Posted by えふ   2014年12月27日 17:41
そういえばティムの子供たちは娘だったんですね。
彼の代でタイムトラベルは終わりなのか〜。
タイムトラベルを通して、父親との関係がよかっただけに残念。。。
8. Posted by YUKKO   2014年12月28日 09:01
この映画9月に見たので、自分のブログで復習しましたよ。家族の関係とか、本当の幸せって何かとか考えさせられました。にゃむばななさんのブログ見て子供が全員女の子って気付きました。
9. Posted by きさ   2014年12月28日 10:47
時間SFは好きなのでどうしてもSFファンとして見てしまいますが、その点は割とさらっとしてます。
過去を変えたために変えたくない現在が変わってしまったり、SF的な処理もありますが、やはりラブストーリー、そして家族の映画として見るべきでしょうか。
ヒロインのレイチェル・マクアダムスはやっぱり魅力的です。
父親役のビル・ナイがいいです。
やはり父と息子の映画なんでしょうね。
10. Posted by にゃむばなな   2014年12月28日 22:58
えふさんへ

これでタイムトラベル能力も終わりというところに、ティムの男としての、父親としての不退転の表れがあるのかも知れませんね。
同じ男性としてはそこがまたいいんですよね。
11. Posted by にゃむばなな   2014年12月28日 22:59
YUKKOさんへ

何気ないことが幸せってよく言われますけど、こうやってタイムトラベル能力というフィルターを通して見ると、それがよく分かりますよね。
12. Posted by にゃむばなな   2014年12月28日 23:01
きささんへ

父と息子の物語だからこそ、SFの部分はさらっと流したのかも知れませんね。
何をテーマとして描くか。
リチャード・カーティス監督はその辺りが常に明確ですよね。

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