2015年01月17日

『アゲイン 28年目の甲子園』

アゲイン一球入魂。一球人魂。
甲子園への出場という若き日の夢が叶わなかった三十路超えの元高校球児たちが再び夢の聖地を目指す大会:マスターズ甲子園。
この今年で12回目を迎える、参加者がオッサンだらけの「究極の全員野球」も立派な高校野球。製作陣を含め、高校野球に対する愛が詰まった作品だけに、高校野球ファンは必見です。

関西では毎年のようにニュースで流れる、別名「秋の甲子園」とも言われるマスターズ甲子園。90分という時間制限の中、29〜50人編成のチーム全員が試合に出ることや4回以降は35歳以上の選手のみの出場などのルールの下、地方予選を勝ち抜いたチームだけが甲子園でプレーをすることが出来る、まさに高校球児アゲインな同窓会を兼ねたこの大会。

そんな秋の甲子園に挑むこととなった川越学園野球部元主将で三塁手の坂町、現無職で元エースの高橋、ドカベンではなく山プーと呼ばれた捕手の山下にとって、チームメイトだった松川典夫があの夏に起こした暴力事件は甲子園出場という夢を断たれた思い出したくない過去。
でもそのノリの娘でマスターズ甲子園のボランティア事務員を務める美枝にとっては、東日本大震災で消防団としての活動中に亡くなった父が毎年のように「一球入魂」を書きながらも送ることもなかった年賀状に込められた想いを知るたった一つの術。

お話としては正直そんなに練られたものでもないので、西岡馬会長が地方大会一回戦後の打ち上げで暴露した「ノリがマネージャーの裕子を妊娠させた」というくだりで、裕子を守るために自分が泥を被ったことは簡単に読めてしまいます。
逆にレギュラーを目指すほどの野球好きでムードメーカーなノリがそんなことをするはずがないと、チームメイトの誰もが真相を調べようとしなかったことに違和感を感じるほど。

でも裕子の吐露により、ようやく川越学園マスターズが野球に打ち込める環境が整うと、まるでマシンガン打線かの如く、次から次へと高校野球ファンが喜ぶ要素のオンパレード。もうこれがたまらんのですよ。

「負けるなら、ちゃんと負ける」の精神で温情出場を拒み、正々堂々の勝負を挑む。打ちたい気持ちを抑え、チームのために送りバントを決める。スタンドで見守る息子のために同点アーチを放り込む。
どんな大ピンチを迎えようともマウンドに集まれば自然と思い出話で談笑し、気持ちと集中力が高揚すればどんな衰えていても若き日に体に叩き込んだサード横っ飛び捕球からのダブルプレーも実現出来る。ルーズヴェルト・ゲームも制することが出来る。

さらに甲子園への出場が叶えば、全員見た目は中年でも気持ちと瞳は高校球児に戻り、一球一球に足取りも軽やかになっていく清々しさに加え、そんな高齢な球児たちを高校時代と同じように「クン付け」でアナウンスするウグイス嬢や高校野球中継と同じ目線でバッテリーと打者の勝負を見せてくれるカメラワーク。平凡な内野ゴロでも激走・ヘッドスライディングする打者の後ろで一塁手のカバーに走る捕手の姿。打ちたいからこそ死球ではないとゴネる逆・達川光男状態の西岡会長の執念。

それらを全て聖地・甲子園で見せる。それは甲子園には甲子園でしか見られないマジックがあるということをしっかりと理解されている人間がこの映画に携わっているという証拠。
恐らく役者だけでなく、スタッフの中にもいたであろう元高校球児たちは全員が全員、初めて甲子園の土を踏みしめた時に静かに涙を流したのでしょう。そんな静かながらも熱い想いがこの映画にはふんだんに込められているんですよね。

私も数年に一度の割合で甲子園へ高校野球を見に行きますが、やはり高校野球は試合を見るなら準々決勝、球児を見るなら各校にとって初戦である25試合だと思うんですよね。
特に初戦の25試合の1回表裏の守備に散らばる選手たちの憧れの聖地で野球が出来る喜びを全力疾走など全身で表す姿は甲子園でしか見れない光景。

今まで応援してくれた家族への、地域への、恩師や友人への恩返しのために甲子園で全力プレーを見せる高校球児。そんな球児の姿を見て、年齢や立場も忘れて全力で応援するスタンドにいる家族や関係者たち。
高校野球には球場の中にも外にもドラマがある。それは元高校球児たちが全力プレーをするマスターズ甲子園でも同じ。

様々な父親と娘の話を織り交ぜながら、市立西宮高校プラカードOG会や花咲徳栄高校の協力を得て作り上げたこの作品。級友・親子・夫婦など大切な人との甲子園でのキャッチボールで大会を締め括るシーンをしっかりと描きながらも、最後は夢を沙奈美に譲った美枝とノリのグローブでキャッチボールをする坂町との疑似親娘のシーンで終わるあたりも、高校野球好きの熱い想いを感じずにはいられませんでしたよ。

深夜らじお@の映画館は偽変態仮面の負けた悔しさを思い出したというセリフにも高校野球愛を感じました。

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この記事へのコメント

1. Posted by Caine   2015年01月17日 18:02
百の言葉に勝る一球のキャッチボール。正に一球人魂。そこに込められているのは野球をスポーツを越えて信じている人たちの魂。つくづく野球は日本人に根ざしたスポーツなのだなと思えました。
仰るとおりで、作り手も出演者も、野球を愛している人たちの情熱が込められた作品だったと思います。
2. Posted by にゃむばなな   2015年01月17日 22:58
Caineさんへ

山プーを演じた村木さんを始め、甲子園入りしただけで感極まった方も大勢いたことがスクリーンを通して伝わってくるんですよね。
本当に愛のある映画でしたよ。
3. Posted by かのん   2015年01月18日 11:51
たんにスポーツ映画だけで括れない作品ですよね。勝ち負けを競い合うだけではない、数々の人間ドラマを生み出す高校野球、甲子園の魅力がこの物語に描かれていたようにも感じました。
4. Posted by にゃむばなな   2015年01月20日 23:21
かのんさんへ

そうなんですよね、高校野球を題材にした作品は今までもあれど、甲子園の魅力を描いた作品はなかっただけに、高校野球の魅力を分かっている人間が作ると違うなぁ〜と思いましたよ。
5. Posted by FREE TIME   2015年01月26日 20:08
こんばんは。
自分は野球経験者ですがキャッチボールの大切さを再確認する映画でもありました。
試合終了後に甲子園のグラウンドでキャッチボールするシーンは自分もやってみたいと思いましたね(笑)
甲子園は何年経っても憧れの舞台です!
6. Posted by にゃむばなな   2015年01月27日 23:38
FREE TIMEさんへ

試合後のキャッチボールは高校野球が本当に好きな方が企画したんでしょうね。
あれは野球愛なくしては企画出来ない素晴らしきものですよ。
7. Posted by kajio   2015年01月30日 11:40
話の緩急をつける為に、山プー親子のエピソードをもうちょっとだけ足しといてほしかった気もしますが、素晴らしい映画だったと思います。波瑠ちゃんもかわいかったですし(笑)

8. Posted by にゃむばなな   2015年01月30日 22:47
kajioさんへ

確かに山プー親子の話はもう少しあっても良かったかも。
息子がヤル気になって実績が伴い始めるとかね。
9. Posted by ミスターシネマ   2015年02月26日 18:11
お久しぶりです!
先週見ましたが、ものすごく感動しました!
試合は原則90分以内だったり、4回以降は35歳以上の選手しか出場できないなど、独特なルールがあるのも斬新でした!

捕手の山下が居酒屋で「おれはコントロールよりも今はコレステロールが気になる」と言っていましたが、今の現役の球児も何十年後かにはそういう親父ギャグを言うんでしょうね(笑)

絶縁状態だった娘と笑顔でキャッチボールをするシーンには、僕も泣きました。
野球好きはもちろん、そうでない人も感動できる作品でしたね。
10. Posted by にゃむばなな   2015年02月26日 22:54
ミスターシネマさんへ

お久しぶりです。
ほんと、これは野球好きもそうでない人も楽しめる映画ですよね。
とにかく高校球児に戻る親父たちの楽しそうな姿が眩しいこと。
それが本当にいいんですよね〜。
11. Posted by ミスターシネマ   2015年02月27日 00:48
5 個人的には選抜が開幕される直前に上映してほしかったですね!!
そうすれば、この作品はもっと地注目されたと思うんですよね!!

この映画をきっかけにマスターズ甲子園に参加するチームが増えるといいですね!!

4年半ぶりにブログを再開したので、厚かましいお願いかもしれませんが、よろしければ、相互リンクをしていただけないでしょうか?
12. Posted by にゃむばなな   2015年02月27日 22:52
ミスターシネマさんへ

相互リンクは大歓迎です。
よろしくお願いします。

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