2015年01月25日

『ビッグ・アイズ』

ビッグ・アイズティム・バートンならウォルター・キーン目線で描くべきでしょう。
1960年代にアメリカで実際に起きた、ウォルター&マーガレット・キーン夫妻間のゴーストライター事件ならぬゴーストペインター事件。
お話としては決して退屈ではないのですが、ティム・バートン作品としては退屈。その理由はやはりマーガレット・キーンを主役で描いているからではないでしょうか。

『エド・ウッド』以来の伝記モノに加え、ティム・バートン自身も「ビッグ・アイズ」と呼ばれる目を大きく描いたユーモラスでグロテスクな画風作品が大好きということで楽しみしていたのですが、正直これがティム・バートン監督作品でなければ特別な期待もせずに楽しめたのではないかと思います。

要はまだまだ女性の立場が弱かった時代、画才はあるが自立心も決断力も男を見る目もないマーガレットが描いた独特な画風の作品を、画才はないが商才と口八丁には長けたウォルターが自分の作品と偽り名声を得たことで、「絵を描く妻」と「絵を売り込む夫」の関係が「絵を描かされる妻」と「絵を売り捌く夫」へと変わってしまった。そしてその歪みがやがて夫婦間の亀裂へと変わっていった。それをマーガレットの目線から描いているのがこの作品。

でもマーガレットが娘の応援によって起こした裁判でのウォルターが一人で被告と弁護人の二役を演じる姿を見ていると、これがクリストフ・ヴァルツのコミカルな名演も相俟ってか、やはりこのお話はティム・バートン作品だからこそウォルター・キーン目線で見たかったと思えてくるんですよね。

当初は美術商のルーベンにも「妻の作品だ」と売り込んでいたことからも、マーガレットの画才目当てで近づいたのではないはずのウォルター。
ところがエンリコの店で騒動がきっかけで「ビッグ・アイズ」にも注目が集まると商才が邪魔をしたのでしょう。内気な妻がしどろもどろになって応対するよりも口八丁の自分が応対した方が売り込みはスムーズに行くはず。画才がなくても最低限の知識はあるのだから無問題。そんな浅はかな考えがやがて後戻り出来ない状態にまで至り、人生を終える直前まで「ビッグ・アイズ」は自分の作品だと偽り続けた。

確かにウォルターがいなければ、内気で「夫との共犯関係」という言葉にもビビってしまうマーガレットが表舞台に出ることはなかったかも知れません。「ビッグ・アイズ」という画風がここまで注目を浴びることもなかったかも知れません。

つまりティム・バートン作品が好きな者にとっては、キャラの薄いマーガレットよりも滑稽で皮肉たっぷりに描くことの出来るウォルターを主役に据えた方が、映画としてはもっと面白くなっていたのではないかと思えて仕方ないんですよね。

実際に絵を描けば誰が作者かが分かるという裁判の場でも肩が痛いだの言い出しては、敗訴後も自分が作者だと言い続けてきたみっともなさ。それを皮肉たっぷりに滑稽に扱き下してこそのティム・バートンだったはずが、彼もすっかり丸くなってしまったということなのでしょうか。
映画の中身とは違う場所で少々の淋しさを感じてしまった映画でした。

深夜らじお@の映画館はティム・バートン監督にはいつまでも「もやしっこ魂」を持っていてほしいです。

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{{{[http://eiga.com/movie/80081/ eiga.com 作品情報 『ビッグ・アイズ』]}}} {{{: ■解説:「アリス・イン・ワンダーランド」「チャーリーとチョコレート工場」のティム・バートン監督が、1960年代アメリカのポップアート界で人気を博した「ビッグ・アイズ」シリーズをめ

この記事へのコメント

1. Posted by Caine   2015年01月25日 18:00
そうですね。お話としては別につまらないワケじゃないし普通に楽しめましたが、だったら別にティム・バートンに監督してもらわなくても良くなかった?って感じ。
要するに何も情報なしで見たらティム・バートン作品だと気づかなかっただろうなって思います。
2. Posted by BROOK   2015年01月25日 19:36
たしかにマーガレットよりもウォルター目線で描いた方が面白かったような気がします。

今作も決して飽きはしませんでしたが、
至って“普通”の作品になっていました。
バートンらしさはありませんでしたね…。
3. Posted by にゃむばなな   2015年01月25日 22:52
Caineさんへ

ほんま、そう思います。
だからこそ逆にティム・バートン作品と期待して見ると期待外れになってしまうんですよね。
いったいこの監督さんに何があったのでしょうかね?
4. Posted by にゃむばなな   2015年01月25日 22:53
BROOKさんへ

“普通”の作品を撮らない監督が“普通”の作品を撮っても何の意味もありませんからね。
ティム・バートン監督には彼独特の色があるんですから、それを示してもらわないと。
5. Posted by mig   2015年01月26日 23:05
うん、にゃむばななさん言うのもそうだと思うんだけど
実話だから取材すること考えたら
存命の奥様マーガレット=本当の作者に聞くしかない、
旦那ウォルターも死んでるし
やはりそっちの真実を描くにはマーガレット主体じゃなきゃダメだったんでしょうねー。
それにしても普通に楽しめたというくらいで、バートンらしさがなかったですね。
6. Posted by にゃむばなな   2015年01月27日 23:39
migさんへ

実話だから、しかもマーガレットさんがご存命だからというのがティム・バートンらしさを消してしまいましたよね。
マーガレットさんの許可を得て、ウォルター目線で描ければ良かったのにって思いましたよ。
7. Posted by きさ   2015年02月07日 08:20
主演のエイミー・アダムスとクリストフ・ヴァルツは良かったですね。
特にクリストフ・ヴァルツのアクの強い演技が光ります。
ラストのウォルターの末路はちょっと哀しい、、
これはこれで十分に面白い映画でしたが、個人的にはバートン監督にはやはり実話ではなくキレのあるファンタジー映画を作って欲しいです。
8. Posted by にゃむばなな   2015年02月08日 11:29
きささんへ

そうですね、私もこの監督には実話よりファンタジー路線で頑張ってほしいですよ。
特に彼の思い入れが強ければ強いほどいい映画になる過去の実績を考えてもね。
9. Posted by ジョニーA   2015年10月20日 02:37
このマーガレット・キーンさんの絵柄の
ファンだったらしきティムが、奥さんの
味方をしちゃったのが何よりの誤算です
か。終盤、裁判所のシーンでヴァルツが
一人二役の大立ち回りを始めたあたりで
最高潮に盛り上がったのに、あっという
間に収束、ジ・エンドですもんねーー。
消化不良でした!「リーガルハイ」の
古美門研介ばりに、卑怯な手を使いま
くって、もう少し抵抗して欲しかったで
すねーーーー。
10. Posted by にゃむばなな   2015年10月20日 23:47
ジョニーAさんへ

ティム・バートンもどうしちゃったんでしょうね〜。
昔のもやしっ子魂を思い出してほしいですよ。

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