2015年03月14日

『博士と彼女のセオリー』

博士と彼女のセオリースティーヴンとジェーンの不器用なラブストーリー。
ブラックホールの消滅など現代宇宙論に多大なる影響を与えた「車椅子の天才物理学者」スティーヴン・ホーキング博士と、彼を長年支えてきた元妻ジェーン・ワイルドとの互いを想いやり過ぎた愛が美しく、切ない。
これぞシンプルでエレガントな英国映画です。

学生時代に筋委縮性側索硬化症、通称ALSを発症しながらも天才物理学者として世界に名を馳せたスティーヴン・ホーキング博士。その博士が唱えた理論は難しくてよく分かりませんが、とにかく現代に生きる我々が当たり前に思っている宇宙の常識はこの博士の理論なくしては語れないということだけはよく分かります。

ただこの映画はそんな博士の功績を語るのではなく、この博士を25年にも及ぶ長い間、妻として支えてきたジェーン・ワイルドとの「愛の時間」を描いているので、間違いなくこの作品のジャンルはラブストーリー。
そしてそのラブストーリーも分かり易い美談ではなく、お互いを大事に想いすぎてすれ違ってしまった不器用な愛の物語。

恐らくスティーヴンにとって学生時代に出逢い、ALSを発症した自分を受け入れて結婚してくれただけでなく、夫の介護と3人の子育てに心血を注いでくれたジェーンは世界で誰よりも幸せになってほしい女性であったと思います。
だからこそ彼女の負担を減らすためなら、彼女が所属する聖歌隊の指揮者で妻と死別したジョナサン・ヘリヤー・ジョーンズを、例え自分が夫として、男として、父親としてどんなに悔しくても受け入れる。それが彼なりの妻への愛だったのでしょう。

一方で覚悟を持ってALSにより余命2年と宣告された博士と結婚したジェーンにとっても、ナイフやフォークが使えなくなっても弱音を一切吐かないスティーヴンは世界で誰よりも幸せになってほしい男性であったはず。
だからこそ夫を物理学者として輝かせるために嫌事一つも言わず介護と子育てに奮闘するも、自分には出来ないウィットに富んだ会話が出来るエレイン・メイソンが現れれば身を引く決意をする。それが彼女なりの夫への愛だったのでしょう。

本来なら精神的支えをジョナサンに求めるジェーンの行動は不倫です。妻がいながら他の女性に全てを頼ろうとするスティーヴンの行動も不倫です。

でもこの映画はそんな「外から見た事情も知らぬ」愛は描いていないのです。25年間に及ぶ夫婦生活の先に辿り着いた、大切なパートナーを幸せにする方法を見つけ出した愛しか描いていないのです。

スティーヴンはジェーンがジョナサンと結ばれたことで、彼女がもう自分の介護をしなくてもいいと淋しさを覚えながらも、この「仕方のない現実」を受け入れたのではないでしょうか。
ジェーンもまたスティーヴンがエレインと結ばれたことで、彼が妻の負担になっているという負い目から解放されたと淋しさを覚えながらも、この「仕方のない現実」を受け入れたのではないでしょうか。

誰よりも愛を求め、その愛を手放したくないと願ったスティーヴンとジェーン。
ただ自分より相手を想うがあまり、相手のためにその愛を手放すことを選んだスティーヴンとジェーン。
しかし2人には25年もの時間を掛けて歩んできた愛が目の前にいる。それが女王陛下よりナイトの称号を授かった後に見た、幸せそうに遊び合う3人の子供たち。

ALSによる不自由な動きだけでなく、声を失った後も雄弁に無言で語るスティーヴン・ホーキング博士を見事に演じたエディ・レッドメインのオスカー受賞も納得の名演と共に語られるスティーヴンとジェーンの不器用なラブストーリー。

余命2年という限られた時間に抗い続けた元夫婦のラブストーリーは離婚を迎えても続く。お互いを世界で最も大切なパートナーと想い続けている限り。

深夜らじお@の映画館は婚活中なので、こんな夫婦愛に憧れてしまいます。

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【概略】 1963年、ケンブリッジ大学で理論物理学を研究するスティーヴン・ホーキングは、中世詩を学ぶジェーンと恋に落ちるが、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症、余命2年と宣告される。妻となった彼女の支えで研究を進め時の人となるが、介護と育児に追われる彼女とはすれ違

この記事へのコメント

1. Posted by かのん   2015年03月14日 17:56
とても素敵な愛の物語でした。ジェーンの立場を考えればかなり精神的に疲労していたんじゃないかと思うのですが、それを乗り越えていけたのはスティーヴンへの強く深い愛と尊敬だったのでしょう。スティーヴンもそれが身にしみてわかっているからこそ、ジェーンの幸せを願っての判断なんですよね。
2. Posted by えふ   2015年03月14日 21:35
スティーヴンとジェーンは、
てっきり最後まで寄り添ってるのかとおもってたので、
それぞれのパートナーにはびっくりしましたが、
不思議とすんなりと納得できました。
お互い、相手を思い合ってないとこうもすんなりといかないですよね。
とてもいい関係だったと思います。
3. Posted by にゃむばなな   2015年03月14日 22:55
かのんさんへ

互いに互いを尊敬し、最も愛している。
それを互いに理解しているがゆえの決断。
何とも美しい愛ですよね。
4. Posted by にゃむばなな   2015年03月14日 22:56
えふさんへ

そうそう、離婚という道を選んでいるのに、その決断を観客もすんなり受け入れることが出来るんですよね。
それもこの2人の愛の深さをきちんと描いているからなんでしょうね。
5. Posted by Ageha   2015年03月15日 15:37
あちゃ〜、理解不足でした。

うん、にゃむばななさんのレビュー見て
この展開やっと納得出来たかなって感じです。


愛するがゆえの別れって言葉で言うのは簡単だけども。
そのへんの描きかたがスクリーンでみたときにイマイチ納得いかなくってぼやいちゃいました。(^_^;)(^_^;)(^_^;)
6. Posted by にゃむばなな   2015年03月15日 23:08
Agehaさんへ

こういう映画は出逢った時のタイミングですからね。
私の場合はそのタイミングがたまたま良かったのだと思いますよ。
でも私もそういう経験はありますからね。
仕方のない現実として受け入れるしかないですね。
7. Posted by Caine   2015年03月19日 17:46
あの別れは胸が苦しくなりました。お互いに誰よりも大切で誰よりも愛し合っていたのは間違いない。だからこその別れなんですよね。特に博士は2年と言われてから25年間、ジェーンの若い時代の全てを捧げて愛された。もういいよ、ありがとう、自分のために生きて欲しい、そんな気持ちだったのだと思います。
もはや単純な恋愛感情を超越しているんだろうなと思わずにいられません。
8. Posted by にゃむばなな   2015年03月20日 16:26
Caineさんへ

2年で終わるはずが25年も続いた。愛も苦労も。そこがこの夫婦の特別な関係ですよね。
愛だけならこんな別れはなかったはず。でも愛がなければこんな別れもなかったはず。
何ともいえぬ美しい愛ですよね。
9. Posted by ノルウェーまだ〜む   2015年03月25日 10:20
にゃむさん☆
素晴らしい演技、素晴らしいストーリー見事でした。
やはり出会った瞬間から互いをリスペクトしあって、そうして培った愛だからこそ、別れたあとも絆は深いところで繋がっているのだろうなと感じました。
欲情的に燃え上がった愛などが途中で燃え尽きた挙句の離婚とは全く意味が違いますよね。
10. Posted by にゃむばなな   2015年03月28日 23:19
ノルウェーまだ〜むさんへ

こういうのが本当の愛ってものなんでしょうね。
仰る通り、一時的に燃え上がっただけのものとは大違いですよ!
11. Posted by FREE TIME   2015年04月09日 22:01
こんばんは。
お互いに不器用ながらも、こういう愛し方もあるのかと関心しました。
余命2年と宣告されながらも、現在も存命しているのは愛の力なのかなと思ってしまいました。
最後に選んだ道がどうであれ、最高のラブストーリーでしたよ、
12. Posted by にゃむばなな   2015年04月09日 23:13
FREE TIMEさんへ

ほんと、愛の力ですよね。
でもだからこそお互いに相手の幸せを願わずにはいられないのでしょう。
こういう愛も美しいものです。

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