2015年03月25日

『パリよ、永遠に』

パリよ、永遠に夜明けの心理戦がパリに自由をもたらす。
1944年8月の「パリの解放」はレジスタンスによる武力だけでもたらされたのではない。ナチスドイツの将軍:ディートリヒ・フォン・コルティッツとスウェーデン総領事:ラウル・ノルドリンクによる「外交という名の駆け引き」でもたらされたのだ。
そんな歴史の裏舞台にシビれる!

「ベルリンが崩壊状態なのにパリが美しいまま残っているのは許せぬ」という理由からノートルダム寺院やルーブル美術館、アレクサンドル3世橋、エッフェル塔などの歴史的建造物を爆破せよとの異常命令を受けた、もはやヒトラーは常軌を逸していると悟ったコルティッツ将軍。
その異常命令からパリを守るために夜明けのホテル「ル・ムーリス」に、ナポレオン3世が逢引用に作った抜け道を使ってコルティッツ将軍を説得するためにやってきた、生まれも育ちもパリのノルドリンク総領事。

もはや戦況は完全にドイツの不利。作戦的意味合いもないパリの爆破で人類の遺産を失う訳にはいかない。だが総統の命令には絶対服従の軍人を、中立国の総領事が説得できるのか。夜明け前に始まった駆け引きという名の心理戦はまさに先の見えない展開。

ところが夜が明け始めると、コルティッツ将軍の止むに止まれぬ事情も明るみになってくるのがこの作品の面白いところ。
ヒトラーの命令を実行しなければ、ドイツ国内にいる妻子が処刑される。逃亡してもゲシュタポに追われ、殺される。妻子を人質に取られた将軍に選択肢など存在しない。
だからこそ将軍からの「君が私の立場ならどうする?」という質問にノルドリンク総領事も「分からない」としか答えることの出来ない。

しかし夜が完全に明けると、パリとコルティッツを救う唯一の道も見え始める。パリの降伏が大いにドイツ国内を混乱させるのが明らかならば、その隙にコルティッツの妻子をスイスへ脱出させればいい。ノルドリンクが何度も利用した組織とルートで逃亡させればいい。

なぜノルドリンクは見捨てればいいものを、喘息による症状で苦しむコルティッツに薬を渡したのか。なぜ彼は前線にいるヘッゲル中尉からの電話が悪い知らせだと分かったのか。
なぜコルティッツは何度も追い返そうとしたノルドリンクをその度に留めたのか。なぜ戦況悪化でありながら彼は未成年の兵士をパリから脱出させたのか。

コルティッツは理解している。パリを爆破させることがどれだけ無意味なことかを。
ノルドリンクは理解している。パリを爆破させない方法はコルティッツ説得しかないと。

完全に太陽が昇り、新しい朝を迎えたパリ。ホテルの屋上でパリの街を眺めながらコルティッツは爆破命令を取り消す。指輪と妻子の命をノルドリンクに託して。

一方、ノルドリンクはコルティッツが連合軍に降伏した様子をホテルのボーイと共に眺めた後、パリの街を歩く。
だがそのボーイとのわずかな会話を聞いて新たなる事実が判明する。ヘッゲル中尉が爆破装置を破壊されたという事実、コルティッツを始めとするナチス将校の会話が筒抜けになっていた理由。全てレジスタンスやボーイの協力を得てノルドリンクが描いた作戦だったと。ハナからコルティッツ説得のための外交的手段「根回し」であったのだと。

ノルドリンクはコルティッツを騙したのか。個人的には利用したというのが正しいと思いたい。コルティッツの妻子がスイスに無事逃げ延びた史実、戦後わずか3年で出所したコルティッツがノルドリンクと再会した史実、そしてコルティッツが「パリを救った人物」として賞賛されている史実がある限り。

パリの美しさは「外交という駆け引き」が守り抜いたもの。その駆け引きがなければ、人類の遺産は永遠に失われていたということを、この映画と自称イスラム国の蛮行が教えている。

深夜らじお@の映画館はこのフランスを舞台にした作品をドイツの名匠が撮ったことに大いなる美しさを感じました。

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1. 映画・パリよ、永遠に  [ 読書と映画とガーデニング ]   2015年04月06日 07:57
原題 Diplomatie(外交)2014年 フランス、ドイツ もしも、「パリ」が消えていたら、世界はどうなっていただろう第二次世界大戦末期、ヒトラーによる「パリ」壊滅作戦が、今まさに実行されようとしていた美しき街を救ったのは、一人の男の一世一代の「駆け引...
2. 『パリよ、永遠に』をHTC有楽町1で観て、一応グットふじき★★★  [ ふじき78の死屍累々映画日記 ]   2015年04月09日 00:06
五つ星評価で【★★★悪くはない】   悪くはない。 悪くはないけど、 パリ壊滅作戦を阻止しようとするスゥーデン総領事の理屈と パリ壊滅作戦を実行せねばならないドイツ軍司 ...
3. パリよ、永遠に ★★★★  [ パピとママ映画のblog ]   2015年05月13日 20:29
第2次世界大戦下のパリを舞台に、街を守りたいスウェーデン総領事と街の破壊命令を受けたドイツ軍将校との心理戦を描いたヒューマンドラマ。『ブリキの太鼓』などのフォルカー・シュレンドルフがメガホンを取り、フランスでヒットした舞台を映画化。ドイツ軍将校を説得す...
4. パリよ、永遠に  [ いやいやえん ]   2015年10月17日 07:49
【概略】 アメリカ・イギリス・自由フランス軍からなる連合国パリに到着する。パリの中心に位置するホテル ル・ムーリスにはパリ防衛司令官ディートリヒ・フォン・コルティッツ率いるナチス・ドイツ軍が駐留したいた。夜明け前にコルティッツはアドルフ・ヒトラーの命を受け

この記事へのコメント

1. Posted by ふじき78   2015年04月08日 09:05
スウェーデン総領事、悪人じゃないんだけどどこかいけ好かない感が残ってしまった。今回はパリを救う話だが、こういう知的に戦略を練る人こそが必要とあらば、ナチス司令のような軍人を戦場に投入して、自国の安全を守るために敵国民を殲滅したりするんじゃないだろうか?
2. Posted by にゃむばなな   2015年04月09日 23:13
ふじき78さんへ

確かにスウェーデン総領事が完全な善人には見えない、ともすれば悪人にすら見えなくもないのがこの映画ですよね。
どの角度で見るかで物事は大きく変わりますね。

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