2015年09月23日

『天空の蜂』

天空の蜂人命よりも電気が重い。それが現在にも続く日本の在り方なのか。
これが1995年に出版された原作だとは思えないほど、的確に現代日本の問題点を描いているではありませんか。さすが日本が誇る東野圭吾先生です。
でもこの映画を見て最も印象に残るのは、やはり決して諦めない自衛隊員と犯罪に執念で立ち向かう警察官の素晴らしさですよ。

阪神大震災の時には誰もがまだ現実味がない話だと思っていた、天災により原発が危険に晒されるという事象が東日本大震災により現実化してしまった21世紀の日本。
東野圭吾先生はそんな未来を予測していたのでしょうか、あえて天災ではなくテロという人災で原発が危険に晒された時、本当に原発は安全だと言えるのかという問い掛けが観客の心に響いてくるのがこの作品。

小学生の子供が容易に新型ヘリ・ビッグBに侵入できるってセキュリティーの甘さも大問題やで!というツッコミも忘れ、高速増殖炉「新陽」の真上で燃料が切れるまでの8時間のやりとりはいい緊張感があって面白く見れること。

ただ前半から三島がなぜ都合よく「新陽」にいたのか、雑賀が健康不良の状態でここまでの計画を一人で完遂することは不可能ではないか、赤嶺と雑賀が恋人関係は雰囲気的に違うのではないかなど、堤幸彦監督作品らしく謎解きの面白さがいつもながらの平々凡々だったのは、この作品においては少々残念。

この謎解きにもっと緊迫感があると、福島原発事故の反省も中途半端なまま川内原発を動かした現代の日本政府や九州電力が本当に「安全」を担保しているのかという社会派作品になっていたのでしょうけどね。

しかし社会派テーマの印象が薄くても、この映画には一人の少年を守るために命を張る自衛隊員の素晴らしさや犯人逮捕のために執念を燃やす警察官の熱き姿が描かれていることがとても素晴らしいことだと思うのです。

特に強風によりビッグBから振り落とされた高彦少年を中空で見事に救出した自衛隊の上条隊員と、何度も雑賀に刺されながらも手錠で犯人の足止めをした福井県警の関根刑事。
ちびった少年に「お兄さんもちょっとちびった」と要救助者の緊張感を和らげながらも、絶体絶命の大ピンチでも少年を救える人間は自分しかいないと決して諦めない強さ。
先輩の室伏刑事から「髪切れや」と何度も言われようとも「我々にはあと2時間しかないんです!」という気合いが腹部に深手を負っても逮捕が出来ないのなら、せめて足止めだけでもと燃やす執念。

政府は少年の命が懸かっていても原発停止のパフォーマンスだけしかしないけれど、自衛隊員や警察官の方々は自分の命に代えてもその使命を果たそうとしてくださる。
そんな素晴らしき自衛隊員や警察官がいる限り、この日本は素晴らしい国であり続けるはずと思えてくるんですよね。

なので正直なところ、本題である原発政策への疑問投げ掛けに関してはあまり印象に残るようなものではありませんでした。
また高彦少年が大人になって自衛隊員として東日本大震災でヘリにて多くの人命を救う、父親の湯原もヘリの着陸現場で自分が出来ることに専念するというラストも、いかにも堤幸彦監督作品って感じでしたね。

てな訳で会見を行うだけの芦田が本編にほとんど絡んでこないのなら、なぜ竹中直人という名優をキャスティングしたのか。それがもっとも不思議で仕方ない映画でした。

深夜らじお@の映画館は自衛隊員と警察官のみなさんに感謝感謝です。

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1. 劇場鑑賞「天空の蜂」  [ 日々“是”精進! ]   2015年09月24日 06:16
「天空の蜂」を鑑賞してきました人気作家・東野圭吾が1995年に発表した同名ベストセラーを堤幸彦監督が映画化したサスペンス・アクション大作。最新鋭の巨大ヘリコプターを乗っ取り...
2. 映画「天空の蜂」  [ FREE TIME ]   2015年09月25日 20:27
映画「天空の蜂」を鑑賞しました。
「天空の蜂」は1995年を舞台に当時の最新自衛隊ヘリがテロリストに奪われて原発の上空で大量の爆薬を積んだ自衛隊ヘリが子供を人質に全原発の停止及び破棄を突き付けてくるが ...
4. 『天空の蜂』 刺せば解決するのか  [ 映画のブログ ]   2015年09月27日 14:41
 素晴らしい!  あまりの面白さに度肝を抜かれた。原発、軍需産業、自衛隊の災害派遣等、タイムリーな題材の濃縮に驚かされる。  『天空の蜂』が公開されたのは2015年9月12日。前々日に栃木・茨城・宮城を襲った大雨と鬼怒川の堤防決壊に日本中が衝撃を受けたときだった
5. 天空の蜂  [ 映画的・絵画的・音楽的 ]   2015年10月02日 06:36
 『天空の蜂』を新宿ピカデリーで見ました。 (1)東野圭吾氏の原作の映画化ということで映画館に行ってきました。  本作(注1)の冒頭は、1995年8月8日午前7時21分。  錦重工業小牧工場で開かれる「ビッグB」納入式典に参加するために、湯原(江口洋介)とその妻・篤...
6. 天空の蜂  [ 勝手に映画評 ]   2015年10月03日 08:49
元々は、20年前の1995年に東野圭吾が発表した同名の小説『天空の蜂』。その時でも、中々衝撃的内容ではありましたが、2011.3.11の東日本大震災を経て、原発事故のリアルさがより増した今、待望の映画化です。 原作を読んだ時も「これは凄い作品だな」と思いましが、東日...

この記事へのコメント

1. Posted by BROOK   2015年09月24日 06:20
ビッグBに乗った高彦を救出するシーンがこの作品で一番のピークだったように思います。
たしかに、セキュリティが甘いのがツッコミどころではありますね…。

その後の展開はちょっと冗長気味だったものの、
最後まで楽しむことは出来ました。

観終わって、今の政府はどうなんだろう?と、ふと考えてしまいました。
2. Posted by kajio   2015年09月25日 00:01
そう言われてみれば。

にゃむばななさんが指摘した竹中直人さんもそうですし、石橋蓮司さんもギャラ的には友情出演扱いではない筈なのに、随分贅沢な使い方をされてましたね。

作品のスケールの割には多くの企業が参加している訳ではない今作の制作委員会が、堤さんのリクエストを押しきられたのかなぁ、と思いました…

3. Posted by にゃむばなな   2015年09月25日 00:25
BROOKさんへ

ほんま、今の政府もこの映画で描かれている政府と似たり寄ったりじゃないですかね。
全ての原発を止める勇気も決断力もないでしょう。
それ以前に原発を止めた時の経済損失を考えると…という話になりそうですね。
4. Posted by にゃむばなな   2015年09月25日 00:30
kajioさんへ

EDロールを見れば犬童一心監督の名前も出演者欄にありましたから、堤監督リクエストなのかも知れませんね。
ほんま、贅沢だこと。
5. Posted by FREE TIME   2015年09月25日 20:31
こんばんは。
確かに格納庫に簡単に入れたシーンを代表するようにツッコミどころ満載の作品でしたが、見応えのある作品だったと思います。
豪華キャストで並べられたのも堤監督ならではでしたね。
それにしても東野先生は、実際に大規模な原発事故が発生するなんて、この原作を書き上げた当時は夢にも思わなかったでしょうね(^^;)
6. Posted by にゃむばなな   2015年10月01日 16:02
FREE TIMEさんへ

ほんと、これを20年前に書きあげたのが凄いですよね。
当時にこんなことを危惧していたなんて…。

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