2015年11月04日

『エール!』

エール!飛び立つ親離れ、見守る子離れ。
聴覚障碍者の両親や弟にどうすれば自分の歌を届けることが出来るだろうか。どうすれば自分の夢を、想いを伝えることが出来るだろうか。
フランスで4週連続No.1の大ヒットを記録したこの作品は普遍的な家族の物語。ただヒロイン以外は全員聴覚障碍者という異形の物語。でも心温まる家族の物語。

酪農を営む傍ら村長選挙に立候補する父親、娘の初潮を「ようやく女になった!」と小躍りして喜ぶ母親、姉の親友に手を出すもゴムアレルギーで気絶する弟。3人とも聴覚障碍を個性として自由奔放に生きているのに対して、家族の中で唯一健常者である長女ポーラは家族の「声」であり「通訳者」でもある大切な存在。

でもそのポーラが歌という才能を認められ、家を出てパリの音楽学校に行きたいと思えば、この家族の中での役割が彼女の心を乱すのは当たり前。
自分が夢を追えば家族はどうなる?誰が自分の代わりに手話で通訳してくれる?
自分が夢を諦めればどうなる?チーズを売るだけの人生でもいいの?

もし聴覚障碍というハードルがなければ、ポーラは自分の実力を家族にアピールすることが出来るものの、それが叶わぬ状況では答えも簡単に出てくるものではないのも当たり前。

しかし昼間から性行為に励み過ぎて3週間のドクターストップがかかるような明るい両親に育てられ、何だかんだ言っても頼りになる陽気な弟と共に育ってきたポーラは、やはり悩みながらも確実に一歩ずつ前に進む強い心の持ち主。
そして誰よりも家族のことを愛しているからこそ、一人で悩み続ける本当に優しい心の持ち主でもあると思うのです。

そんなポーラがコーラス学科の発表の舞台で気になる男子ガブリエルとデュオで歌うくだりを聴覚障碍者の立場で歌声を聞かせずに見せるくだりは秀逸。
クラス全員で歌っている時とは違い、娘の実力がどうなのか、どう評価されているのかを聴覚で確認出来ない両親の不安と共に、視覚では確認出来る観客の感涙する様に淋しさを交えた喜びを爆発させる家族の姿。

そして娘の実力と想いを喉に手を当てることで感じ取ろうとする父親が一晩掛けて出した答え。それが親ならいつかは経験しなければならない子離れという決断。

そんな両親の想いに対して娘がオーディションの会場で選んだ曲がまぁ素晴らしいこと。しかも才能を認めてくれた音楽教師の伴奏と気になるガブリエルに見守られながら、歌詞に合わせて手話で両親に自分の想いを伝える姿が何と感動的なことか。

親離れは決して出て行くことではない。飛び立つことなんだ。
ならば子離れは決して残されることではない。子供を見送り、いつでも帰ってこられるように大切な場所を守り続けてあげることなんだ。

親離れも子離れも凄く大きな決断を要すること。特に家族の中で何かしらの重責を担う者にとっては、過去への後悔と未来への不安も人一倍大きなもの。
でもその大きな決断は家族への愛ゆえに為されるもの。それを実感した時、改めて家族の大切さを誰もが知るのでしょう。

深夜らじお@の映画館はもう少し構成に捻りがあればとも思いましたが、それでも普通にいい映画だと思います。

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1. 「エール!」☆察することの大切さ  [ ノルウェー暮らし・イン・原宿 ]   2015年11月05日 09:56
実は予告編以上のお話は無い。 というよりも、予告編のほうが上手に言葉をつなげて、お話を分かりやすくしているくらいだ。 必要以上に盛った部分がないのに、なぜにこんなに泣けるのだろう?
2. エール! ★★★.5  [ パピとママ映画のblog ]   2015年11月07日 10:35
歌の才能を認められパリの音楽学校のオーディションを勧められた少女と、聴覚障害のある家族との絆を描いた感動作。最愛の家族を支える役目と自らの夢の間で揺れ動くヒロインを、新人ルアンヌ・エメラが好演し、セザール賞最優秀新人女優賞に輝いた。『プレイヤー』などの...
3. エール!  [ 心のままに映画の風景 ]   2015年11月08日 19:10
フランスの田舎町で酪農を営むベリエ家は、高校生の長女ポーラ(ルアンヌ・エメラ)以外全員が聴覚障害者。 ポーラが通訳をすることで、特段の不便も感じることなく、明るく楽しい家庭を築いていた。 そんな中、音楽教師トマソン(エリック・エルモスニーノ)に歌の才能
4. 「エール!」  [ お楽しみはココからだ〜 映画をもっと楽しむ方法 ]   2015年11月09日 00:24
2014年・フランス/Jerico, Mars Films配給:クロックワークス、アルバトロス・フィルム 原題:La famille Belier 監督:エリック・ラルティゴ原作:ビクトリア・ベドス脚
5. エール!  [ だらだら無気力ブログ! ]   2015年11月12日 23:50
素敵な作品やった。
6. 『エール!』  [ 京の昼寝〜♪ ]   2015年11月17日 08:24
□作品オフィシャルサイト 「エール!」□監督 エリック・ラルティゴ□脚本・原作 ビクトリア・ベドス□キャスト ルアンヌ・エメラ、カリン・ビアール、フランソワ・ダミアン、        エリック・エルモスニーノ、ロクサーヌ・デュラン■鑑賞日 11月3日(
7. 映画「エール!」  [ FREE TIME ]   2015年11月26日 22:56
映画「エール!」を鑑賞しました。
8. 歌が聴こえる/ベリエ家の人々〜『エール!』  [ 真紅のthinkingdays ]   2015年12月09日 10:10
 LA FAMILLE BELIER  フランスの小さな村で酪農を営むベリエ家は、娘のポーラ(ルアンヌ・エメラ) 以外、両親と弟は耳が聞こえない。家族に手話通訳をするポーラは、音楽教 師に歌の才能を見い出され、国営ラジオのオーディションを受けることになる
9. エール!  [ C’est joli ここちいい毎日を♪ ]   2016年02月28日 22:10
エール! '14:フランス ◆原題:LA FAMILLE BELIER ◆監督:エリック・ラルティゴー ◆主演:ルアンヌ・エメラ、カリン・ヴィアール、フランソワ・ダミアン、エリック・エルモスニーノ ◆STORY◆フランスの田舎町に住むベリエ一家は、仲睦まじく暮らしている。両親と弟...
10. 「エール!」  [ 或る日の出来事 ]   2016年11月17日 07:43
最後の歌に、盛り上がりを集めて持ってきたよね〜!

この記事へのコメント

1. Posted by ノルウェーまだ〜む   2015年11月05日 09:55
にゃむさん☆
良い映画でしたね〜!!
発表会での無音のシーンからもう涙が止まりませんでした。
この家族のように全身で愛を伝えようとするのって、ある意味羨ましいですね。
昨夜も息子に「わかってんだよ、うるせーなっ!」と言われ喧嘩になり涙が止まらなくなりました。子離れも難しいですわ。
2. Posted by にゃむばなな   2015年11月07日 17:59
ノルウェーまだ〜むさんへ

子育ては大変ですね〜。
何なら息子さんにこの映画を見せるのはいかがですか?
親の愛も伝われば、息子さんとの喧嘩もなくなるのでは?
3. Posted by オリーブリー   2015年11月08日 20:18
こんばんは。

やたらと明るい聴覚障害の家族だったので、発表会でのシーンには、はっ!!とさせられました。
素敵な巣立ちの映画でしたね♪
4. Posted by にゃむばなな   2015年11月08日 23:21
オリーブリーさんへ

娘の立場から一転、いきなり親の立場での演出でしたからね。
そこから子離れする親の気持ちもしっかり描かれていたと思いましたよ。
5. Posted by FREE TIME   2015年11月26日 23:28
こんばんは。
学校の発表会での音を消す演出、オーディション会場で家族に向かって手話で歌うシーンと歌が絡んだ場面では感動的なシーンが多かったですね。
そして、家族愛も感じる作品でした。
6. Posted by にゃむばなな   2015年11月27日 23:56
FREE TIMEさんへ

ほんと、家族愛を感じる映画でしたね。
自分の歌を家族にどう伝えるか。そこでこういう見せ方をしてくれたのは素晴らしい演出だったと思いましたよ。

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