2016年02月01日

『ブラック・スキャンダル』

ブラック・スキャンダルギャング、FBI、政治家。アメリカ史上最悪のスキャンダルのはずが、盛り上がらない。
明らかに予告編詐欺です。これはギャングとFBIと政治家が結託した黒い闇ではなく、FBIがギャングを守っていたという黒い闇。人物関係からして大間違いになっているではありませんか。
でもこの内容ではそう宣伝せざるを得なかったのでしょうね。

サウシー地区こと南ボストンで共に育った3人の男。ギャングのボスに登り詰めた兄ジミー・バルジャーと、上院議員に登り詰めた弟ビリー・バルジャー、そしてFBI捜査官になったビリーの親友ジョン・コノリー。
ただこの3人の関係は肩を組み合う横一線の関係でもなければ、兄貴分ジミーを頂点にビリーとジョンが弟分として支えるピラミッドの関係でもなく、ジミーに忠誠を誓うジョンと、その関係と身内として傍から傍観するだけのビリーという形状不明な関係性。

しかも3人の中で最も頭がキレるジミーが物語進行の主軸ではなく、2番目に頭がキレるビリーが脇に退いた状態での、世間では頭がキレる人間でもこの3人の中では最も劣るジョンがFBIとギャングの協定を持ち出して物語を仕切り進めていくものですから、当然史実とはいえ、行き着く先は失敗しかないのは自明の理。

なのに、この映画では物語の主軸を完全にジョンに置くこともなく、互いの関係性を縦だと認識しているジミーと互いの関係性を場合によっては横にもなると考えているジョンとして淡々と描くものですから、どうも物語の焦点が見えてこないこと。
特にジミーに至ってはジョニー・デップがいくら凄みのある怪演を見せても、彼はいったい何をどうしたいのかが見えてこないんですよね。

さらに登場人物も多いのに、それを整理する演出もないので大変なうえに、冒頭からジミーの手下たちが司法取引で証言するシーンを何度挿入しようとも、やはりジミーの表面上の怖さしか描かれていなければ、彼を裏切る理由も浅はかなものにしか見えてこないのも残念なところ。

それならば息子を亡くし、母も老衰で亡くしたことで壊れていくジミーという不気味な存在を利用しようとするも思い通りには行かないジョンを主軸にして、計算違いで崩れていく男の悲哀を描けばいいものを、変に「サスシーの忠誠心」に拘ってしまったのが仇になってしまったのか、こんな盛り上がりに欠ける映画になってしまったのでしょうね。

ギャング、FBI、政治家にそれぞれの思惑があって「協定」が誕生したのではなく、FBIがギャングを利用しようとして逆に利用され、政治家はその顛末を自分には飛び火しない場所から見ているだけ。
つまりこの史実はFBIがヘタこいた汚点であって、黒い闇と表現するのはFBIのイメージを少しでも悪くしないための言葉選びをしただけ。

結局、同じスキャンダルでも史実が思ったほどの深みのない「汚点」なのに、製作側が深みのある「闇」を連想して映画を作ったことで生まれた齟齬を放置したことが盛り上がりに欠ける大きな要因になったのではないでしょうか。
やっぱり何事に対しても放置はあきませんね。

深夜らじお@の映画館は放置プレイをされるとスネてその場を去ります。

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この記事へのコメント

1. Posted by BROOK   2016年02月02日 06:22
ジョンがジミーのことを崇拝するに至った幼い頃のシーンを少しでも入れて欲しかったような気がします。
そこがあまり語られていないので、ちょっと関係性が希薄に感じられてしまったのが残念です…。

あとは実話なので、こんなものかなぁ…と、なんだかんだで最後まで楽しめました。
2. Posted by にゃむばなな   2016年02月02日 10:39
BROOKさんへ

そうそう、幼少期のシーンが少しでもあればねぇ〜。
その辺りの演出がこの作品の弱いところなんですよね。
3. Posted by ノルウェーまだ〜む   2016年02月02日 11:25
にゃむばななさん☆
役者もネタも揃っているのに、何だか勿体ない出来栄えでしたねー
ビリーも何かしたのかもしれなけど、あえて表に出さないのか、中途半端だったし、主軸がぶれていてとにかく残念でした。
4. Posted by mig   2016年02月05日 00:54
あ、珍しくにゃむばななさん
低評価ですね。
ジョニーが良かったとは思わないけど
マフィアもの好きなので思ったよりは楽しめました。役者たちのおかげかな。
ケヴィンはもったいない使われ方、、、
5. Posted by にゃむばなな   2016年02月07日 22:53
ノルウェーまだ〜むさんへ

これだけのメンツを揃えてのこの出来具合ですからね。
やっぱり脚本と演出の問題なんでしょうね。
6. Posted by にゃむばなな   2016年02月07日 22:54
migさんへ

ほんま、ケビン・ベーコンの役柄があれでは勿体無い。
いい役者さんなんですから、もっといい役で起用してあげてほしいですよ。
7. Posted by Ageha   2016年02月09日 13:04
ベネ様にしても、ケヴィンベーコンにしてもなんかもったいない使い方でしたね。たしかに。

最終的に逮捕されるのであれば、
FBIのコノリーがもすこしずる賢いキレモノだったら、あるいは話はもちっと面白く描けたかもしれないですね。途中で登場したFBI側のハゲさんくらいの。あのひとだけはセッションのJKシモンズみたいだったって誰か書いてたけどホントだわ〜。(*^_^*)


ジョニー・デップはヒゲジョニーから一応面目躍如の怪演をしていたと思うんですが、
やはり、日頃見ないタイプの作品てのは
最後まできつかったです。重苦しい雰囲気だけはあるけど内容がズンと心にこないってのはどうなんでしょうね。
8. Posted by オリーブリー   2016年02月09日 16:11
こんにちは。

役者を揃えた割には、何ともお粗末なお話しでした。
ボストンを舞台にした裏社会の掟や絆を描いた映画には及ばないですねー。
9. Posted by にゃむばなな   2016年02月09日 18:22
Agehaさんへ

史実なんで改変出来ないのは仕方ないんですけど、このキャスティングならそういう物語であってほしいと思っちゃいますよね。
やっぱり監督の演出力不足なんでしょうね。
10. Posted by にゃむばなな   2016年02月09日 18:23
オリーブリーさんへ

ギャング映画の面白みがこの映画にはないのが残念なところ。
ほんと、「役者を揃えた割には」お粗末な作品でしたね。
11. Posted by FREE TIME   2016年02月15日 00:52
こんばんは。
ジョニー・デップの演技は良かったけど、その分、他の出演者達の存在感が薄くなってしまった感がありますね。
内容はともかくとして、このような出来事が実際にあったのだからアメリカは今も昔もおっかない国です…。
12. Posted by にゃむばなな   2016年02月18日 17:38
FREE TIMEさんへ

ほんま、アメリカって凄いですよね。
しかもそんな黒歴史を映画化出来ちゃうところも。
ただその映画が面白くならないのもアメリカらしいのかも知れませんね。

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