2016年02月12日

『俳優 亀岡拓次』

俳優亀岡拓次安田顕という俳優がますます好きになる。ただその安田顕の魅力に頼り切っただけになっているのは残念無念。
これは俳優・亀岡拓次を描いた作品であると同時に、俳優・安田顕を描いた作品でもある乙な魅力のある映画。けれどそれ以外の魅力がなかなか見出しにくい映画。つまりは勿体無い映画でした。

映画の魅力の一つでもある脇役俳優。福本清三先生や佐々木蔵ノ介さんを始めとして、いろんな作品でよく見るけれど名前を知らない。でもその魅力につい贔屓してしまう。やがて顔と名前が一致すると、またその俳優さんを好きになってしまう。

この作品の主人公である亀岡拓次もどんな役でも見事にこなす脇役俳優だからこそ、どこの現場でも監督を始めとするスタッフから気に入られては仕事がひっきりなしに入ってくる、言わば知る人ぞ知る売れっ子俳優。

でも37歳で独身のうえに、趣味が安い居酒屋を渡り歩くことだから、余計に冬風が身体だけでなく心にまで沁みてくる。言葉で発するよりも心はもっと淋しいという気持ちは、同じ年代の独身男性としてはしみじみと共感できるもの。

そんな亀岡拓次に2つの転機が訪れるのがこの作品のメイン。一つは敬愛するスペイン人監督からオーディションのオファーを受けたこと。つまりは俳優としてビッグになれるチャンスの到来か?
もう一つは長野でのロケ後に立ち寄った居酒屋ムロタの店主の娘・安曇に恋をしちゃったこと。37年間待って出逢った女性が色っぽく日本酒を飲む笑顔のステキな女性なら、そりゃ大人用オムツを履いて花束を持ってノンストップでバイクを走らせて会いに行く気持ちもよく分かるうえに、同じ独身男性としては是が非でも応援したくなるもの。

ただ恋も仕事もタイミング。安曇に子供がいるだけでなく、ダンナと元鞘に戻ると聞けば花束を渡せない切なさが雪風よりも淋しく、やっと掴んだ外国映画出演も亀岡拓次という俳優の魅力を存分に醸し出しても、亀岡拓次の心には砂漠のオアシスがないまま。

でもそれも含めての亀岡拓次だから、やっぱり亀岡拓次は魅力的な俳優なのでしょう。そしてそんな亀岡拓次をまるで自分のことのように演じるからこそ、安田顕という俳優もまた魅力的な俳優に見えてくるのでしょうね。

しかしこの映画で魅力的なのはやっぱり安田顕さんの俳優としての魅力と、麻生久美子さんの女優としての色っぽさだけなのが残念なところ。
一応、俳優あるあるというのが劇中には散りばめられているそうですが、それを俳優を経験したことのある者しか分からないような描き方をしては、それは監督としての演出力不足。

恐らく舞台稽古のシーンでも描かれていましたが、ベテラン俳優でも若手に「感じろ!」とか「イメージを掴め!」といった曖昧な教え方しか出来ていないのと同じで、この監督も作品の性質からして曖昧な演出方法にしたのではないかと思ってしまいましたが、でもそれってどうなんでしょうね〜。
社会でも教え方の上手な人ほど「知っている」と「理解している」の違いを分かっているように、曖昧な教え方しか出来ない先輩俳優って結局のところ演技について「理解しているつもり」なだけに思えてくるんですよね。

ですからそんな人間の立場で演出をしても、所詮は俳優の魅力なんて伝えることが出来ないのは当たり前。だからこそ個々の俳優自身が持つ魅力に頼らざるを得ない作品になってしまう。
そう思えて仕方ない映画になっていたのは、何とも残念でした。

深夜らじお@の映画館は風が吹けば左手で書いたサインが飛ぶような存在感しかない俳優でもプロ根性を見せてくれる俳優さんが大好きです。

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