2016年02月18日

『キャロル』

キャロル「憧れ」や「代用」は恋へと昇華するのだろうか。
これは恋の物語でも愛の物語でもなく、本当の意味での恋が始まるまでの物語。キャロル・エアードとテレーズ・ベリベットの対等な恋が始まるまでの物語。ただその2人がたまたま女性同士だっただけ、時代が彼女たちに無理解だっただけの物語。だからこそ純粋に恋に迷う2人の物語でもある。

人は誰しも自分にない魅力を持つ相手に恋をする。
決断力も財力もなく、ただ若さと可能性だけに満ちたテレーズにとって、セレブとしても女性としても自分の意見を持ち、堂々と世間を渡り歩くキャロルはまさに「お姉さま」と慕いたいほどの憧れの存在。
対して若さもなく、過去の過ちから離婚調停中で娘への親権剥奪の危機に瀕しているキャロルにとって、まだまだ何色にも染まることの出来るテレーズは、時に過去の同性恋人アビーの、時に若さを取り戻したい自分の代用。

そんな2人がデパートのおもちゃ売り場で運命的な出会いと、手袋の郵送というきっかけを通して親密になっていく。
ただ2人の関係はお客と店員から「女性として格好良いお姉さま」と「可能性に満ちた可愛い妹分」へと変わっただけ。テレーズはキャロルお姉さまと一緒にいたいと願い、キャロルはテレーズを通して希望を見出したいだけ。だからこそテレーズはお姉さまの写真を撮り、キャロルは妹分の才能を褒める。

しかしそんな2人の関係が変わる時が来る。それはキャロルがテレーズを2人きりの旅に誘うくだり。
日本語字幕担当の松浦美奈さんが2人の会話を敬語からタメへと変化させたように、この旅に出る瞬間から2人の関係性が上下から対等へと変化していく。上流階級、離婚調停、恋人とのフランス行きキャンセルといった様々な周囲の雑音を無視し、2人は現実から逃避するように旅をする。

キャロルはテレーズのために車を走らせ、テレーズは助手席でキャロルをサポートする。キャロルはテレーズを求め、テレーズもキャロルの求めに応える。
けれどそこに2人が心から恋人同士になったという確信は見えない。憧れや代用が手元にあって舞い上がっているようにしか見えない。

だから2人に互いをどう想っているのかを問う試練が来る。アビーの助けがあったとはいえ、2人の関係性どころか、2人の人間性までもがその試練を通じて変わっていく。
娘への親権を剥奪されたキャロルは面会権を求めるだけの弱々しい女性になり、写真の道を歩み出したテレーズはタイム誌で働く自立した女性へと強くなっていく。

ただキャロルの懇願で実現したホテルロビーでの会食の席で、初めてキャロルを被写体にした写真を見返したことを思い出し、友人とのパーティーでの女性との会話を通してテレーズは気付く。かつて彼女が私を優しく包み込んでくれたように、私も彼女を優しく包み込んであげたいと。今の自分にはそれが出来る実力と自信が備わったと。

そしてテレーズは向かう。キャロルがいる上流階級の宴席へと。そこにいるキャロルは例え見かけ倒しであっても、私が憧れたキャロルでいる場所。そんなキャロルをテレーズが迎えに行く。
もはやそこにはお姉さまに会いに行くテレーズはいない。恋する女性に会いに行く格好良いテレーズしかいない。
一方で格好良い女性として振る舞うキャロルも微動だにせずにテレーズを迎える。まるで私に恋した相手が迎えに来ることを知っていたかのような余裕の表情を浮かべて。

互いの道を歩み、互いの魅力を引き出し、互いの魅力に見出されたキャロルとテレーズの恋が始まる。しかし映画はここで終わる。まるで長きに渡って彼女たちを見守ってきた友人のような包み込む優しさを残して。

深夜らじお@の映画館も美人店員さんに出逢ったら手袋を忘れて郵送してもらいたいです。

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1. キャロル  [ 映画1ヵ月フリーパスポートもらうぞ〜 ]   2016年02月18日 20:57
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2. ショートレビュー「キャロル・・・・・評価額1700円」  [ ノラネコの呑んで観るシネマ ]   2016年02月18日 22:09
その愛は、人生を永遠に変える。 舞台は1950年代のニューヨーク。 エレガントな大人の女性キャロルと、まだ初々しい蕾のテレーズ。 対象的な二人は共に人生の岐路に立っており、運命的に出会うと急速に惹かれ合う。 「太陽がいっぱい」で知られるパトリシア・ハイスミ
3. キャロル  [ あーうぃ だにぇっと ]   2016年02月18日 22:31
キャロル@ユーロライブ
4. キャロル  [ そーれりぽーと ]   2016年02月19日 00:42
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5. 映画:キャロル Carol ケイト・ブランシェットの主演女優賞他、納得の アカデミー賞ノミニー × 8 !  [ 日々 是 変化ナリ 〜 DAYS OF STRUGGLE 〜 ]   2016年02月19日 06:58
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8. キャロル  [ 風に吹かれて ]   2016年02月23日 11:14
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この記事へのコメント

1. Posted by ノラネコ   2016年02月20日 23:36
古典的な映画らしい映画で、そこにLGBTという現代ならではのモチーフを描きながら、最終的には物凄く普遍的なところに落とし込んでゆくという。
見事なセンスでした。
画の隅々までゴージャスで惚れ惚れしますね。
2. Posted by にゃむばなな   2016年02月21日 11:55
ノラネコさんへ

LGBTという部分を除けば、古典的な王道恋愛映画ですもんね。
しかもこの美しく、かつゴージャスに見せるトッド・ヘインズ監督のセンス。
本当にお見事です。
3. Posted by たいむ   2016年03月01日 15:01
なんとも美しい映画でした。
ピュアでまっすぐで眩しい女性たちでした。
彼女たちに共感するようなものでもないのだけれど、同じく惚れ惚れしてしまうものでした。
4. Posted by にゃむばなな   2016年03月01日 23:40
たいむさんへ

分かります。確かに彼女たちに共感できるものではないんですけど、こういう風に恋に臨めるのはいいですよね。
本当に美しい作品でした。

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