2016年03月22日

『僕だけがいない街』

僕だけがいない街これが邦画の限界かも…。
三部けい先生の同名漫画を映画化するにあたって、やはり120分はあまりにも短すぎました。深夜アニメ版でも30分×12話と時間を掛けてゆっくりと、そしてじっくりと描いているのに…。よほどの才能でない限り、この手の作品を120分に纏め上げるのは不可能。
ならば、せめて180分の長編にすべきだったのでは?

子供の頃は誰もがヒーローに憧れるも、大人になれば幼き日の憧れは過去の1ページとなってしまう。そんな誰もが経験する成長という名の退化を見つめ直す機会として、売れない漫画家でフリーターの藤沼悟にリバイバルという能力を授けてみたこの作品。

何か事件が起こる前兆として過去に戻るリバイバル。事件が無事に解決すれば時間が進むという繰り返しの中で、母親が殺されたことをきっかけに18年前の少女連続殺害事件へとリバイバルした悟の奮闘を描く様は、とにかくダイジェスト版の如く、半ばご都合主義にも思えるシーンをいくつも挟みながら進むこと。

特にこの作品に関しては、アニメ版を見ても思いましたが、やはり時間を掛けてゆっくりと、そしてじっくりと描いてこそ、その魅力が観客に伝わるタイプのもの。
それを無理矢理120分に収めようとすれば、当然ダイジェスト化するしかなく、結局この映画で初めてこの作品に触れる方にとっては薄っぺらいという印象しか残らないのではないでしょうか。

加えてアニメ版の最終話をこの時点で未見とはいえ、原作とも違うというあのラスト。いやそれ以前から完全におかしくなっている終盤は残念という印象しか残らないこと。
八代先生が怪しいと分かっていながら、なぜか八代先生の車に乗る見た目は小学生、でも中身は大人の悟。その悟が川に投げ落とされるとリバイバル終了で現代に戻ると、なぜか大人になった雛月加代を認識出来ているという違和感。

さらに西園と名前を変えた八代との対決がサスペンスドラマよろしくビルの屋上って。しかも悟が喉元を切られたタイミングで弁護士になった親友の小林賢也が警察と共に現れるご都合主義。そして救世主には自己犠牲が付き物という安直なラスト。

もちろん悟はリバイバルにより、本来なら18年前に人生を終えていた加代を救った存在ではありますが、真犯人にされた白鳥潤がどうなったかも描かない状況で、悟を救世主とまで持ち上げるのはちょっと大袈裟。ゆえに自己犠牲も違和感を感じずにはいられないんですよね。
だからこそ、片桐愛理が悟の漫画に勇気をもらっているというエピソードも無理矢理に見えてしまうのです。

結局のところ、原作の持つ魅力を十分に理解していない製作会社の意向により決められた上映時間に収まるようにするしかなかったのが、この実写版だったのではないでしょうか。だからこそ脚本も演出もこの程度にとどまってしまったのだと思うのです。

原作ありきの作品を実写化する際に気を付けていただきたいことは、やはりその作品に見合った上映時間の選択。この選択を間違えたのがこの作品であり、現時点で間違えていないと思われるのが同日公開の『ちはやふる-上の句-』ではないでしょうか。

深夜らじお@の映画館は石田ゆり子さんが母親役だなんて、「彼女の嫌いな彼女」を見ていた頃は想像も出来ませんでした。

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※アニメ版のラストを実写版鑑賞後に視聴しましたので、その感想も。
 小学生のあの日から長い眠りにつき、15年ぶりに目覚めた悟が知る友人よりも深い絆で結ばれた仲間たちが「この15年間」でしてくれたこと。
「この15年間」を「僕だけがいなかった街」ではなく「僕だけがいない街」と捉え、今も繋がる仲間たちとの絆を信じて挑む真犯人との心の決着。
新しい世界線で初めて再会する片桐愛理との会話も視聴者の想像に委ねる演出も余韻が心地よく感じられていい。
ですから余計に実写版のラストが安直に思えてしまいましたよ。

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2016年 日本 120分 サスペンス/ミステリー/SF 劇場公開(2016/03/19) 監督: 平川雄一朗 主題歌: 栞菜智世『Hear 〜信じあえた証〜』 出演: 藤原竜也:藤沼悟 有村架純:片桐愛梨 及川光博:八代学 鈴木梨央:雛月加代 中川翼:藤沼悟(1988年) 林遣都:白

この記事へのコメント

1. Posted by BROOK   2016年03月23日 06:34
原作未読で、アニメ未見のまま鑑賞しましたが…
いろいろと気になる点はあるものの、終盤直前までは楽しめました。

やはり問題は終盤ですよね。
いきなり雑な作りになってしまったような気がします…。
2. Posted by にゃむばなな   2016年03月23日 09:51
BROOKさんへ

あれだけ情報量のある作品を、ダイジェスト化しているとはいえ、よくここまでまとめているという面白さはありましたが、それでもやっぱりラストも含めて満足感の得られる出来ではありませんでしたね。
ほんと、なんであんなラストにしたんでしょ?
3. Posted by FREE TIME   2016年04月12日 06:22
おはようございます。
過去と現在を行き来する展開は面白かったけど、あまりにも駆け足すぎて肝心なところが抜けていたような内容でしたね。
それに、あのラストも自分としては納得できなかったし哀しいだけでした。
4. Posted by にゃむばなな   2016年04月15日 08:24
FREE TIMEさんへ

仰る通り、本当に薄っぺらくて、そしてラストには納得いかずですよね。
やっぱり原作に向いた上映時間というものを製作陣もきちんと理解してもらわないと。

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