2016年05月05日

『追憶の森』

追憶の森「ありがとう」と伝えたくて…。
何とも地味な映画です。青木ヶ原樹海でのお話とはいえ、本当に舞台劇のような俳優の演技力がモノを言う映画です。それゆえに映画的演出も少なさと大きな展開のない物語が見終わった後にさほど深みを感じさせてくれないのが少々残念にも思える映画です。
やはりこれは舞台向きのお話なのかも…。

片道切符で飛行機や新幹線を乗り継ぎ青木ヶ原樹海へとやってきた、少々風貌が乱れたアメリカ人男性のアーサー。妻宛に送られてきた小包を手に睡眠薬らしき薬を2錠飲んだところで出逢ったのが、両手が血塗れでふらついている日本人男性ナカムラ・タクミ。

まずこのナカムラ・タクミを演じる渡辺謙さんが登場してきた時点で、彼がこの世の人間でないことは容易に推測出来ます。もちろん当初は現世の人間という選択肢もありましたが、日本人サラリーマンがあそこまで流暢に英語を話されると、そこに現実味が消えてしまいますからね。

加えて妻の名前がキイロ、娘がフユってありえへんわ!とか、樹海で花が咲く時は魂があの世へ行く時などの説明が丁寧すぎ!とか、どう見ても樹海を数日も彷徨っている割には空腹のはずなのに冷静すぎるなど、現世の人間にしてはご都合主義すぎな部分も多かったんですよね。

ならば彼はどういう存在なのかと考えると選択肢は2つ。アーサーが喧嘩ばかりしていたけど本当に心から愛していたが今はもう亡くなった妻ジョーンに関係ある存在か、それともこの樹海で彷徨っているも偶然にもアーサーの想いとリンクして出逢うべくして出逢った存在か。

結果から言うと、恐らくこの作品で描かれているナカムラ・タクミは前者でしょう。アーサーが手掛かりだと思って書き残した「KIIRO、FUYU」が「黄色い冬」ではなく「黄色、冬」という妻ジョーンの好きな季節と色だとアーサーが理解するラストからも、恐らくジョーンの魂がナカムラ・タクミという形になって現れたということでしょう。

でも個人的には後者であって欲しかったのが正直なところ。
というのも、この作品ではなぜアーサーがわざわざ自殺場所に他国である青木ヶ原樹海を選んだのかという理由付けが弱いため、脳腫瘍の手術が無事成功するも救急車が交通事故で妻が他界したというショックから立ち直れない一人の男の心を救うために、妻の魂も太平洋を越えなければならないというのも、何だかなぁ〜って思っちゃうんですよね。
それならアメリカ国内で青木ヶ原樹海に似たような場所はあるでしょ!って思っちゃうんですもん。

だからこそ、アーサーの心もタクミの魂も救われたということになれば、ジョーンの夫を愛する心がアーサーとタクミという2人を出逢わせた、つまりアーサーはタクミと出逢うために青木ヶ原樹海へとやってきたという理由付けが完成するんですから。

てな訳でどんなに喧嘩をしようとも、「ありがとう」という言葉を伝えることが出来るのは相手がこの世にいる間だけ。そんなシンプルなテーマを伝えるためだけの映画にはやはり演技力のある俳優にしか務まらない。その中に渡辺謙さんがいるのは、同じ虎党日本人として何とも誇らしく思えるものでした。

深夜らじお@の映画館もお世話になった方々へは感謝の気持ちを伝えていくようにします。

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この記事へのコメント

1. Posted by yukarin   2016年05月09日 23:06
こんばんは。
あとになって考えればアメリカにも青木ヶ原樹海に似たような場所あるじゃない!!と思ったり、死ぬのにわざわざ日本までこなくてもーと思ったりもしますが^^;
渡辺謙さんが出演されてるからなんですかね。

妻の名がキイロと言われた時にはちょっと焦りましたが....後に理由がわかってホッとしました。
2. Posted by にゃむばなな   2016年05月10日 00:01
yukarinさんへ

渡辺謙さんをキャスティングするために青木ヶ原樹海を選んだようにも見える作品でしたね。
逆に考えると、それくらい渡辺謙さんってハリウッドでは重宝されているってことかも?
3. Posted by mig   2016年05月17日 15:30
2 こんにちは。
全く同感ですね。
理由付けやいろいろとツッコミたくなる部分も多すぎるし感情移入全くできません。
おまけにつまらないし。
どう考えてもイマイチ映画です。

4. Posted by にゃむばなな   2016年05月19日 23:02
migさんへ

ほんま、つまらん作品でしたね。
なぜに日本?という疑問くらいには応えてほしかったですよ。

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