2016年10月16日

『何者』

何者いったい私は何者?
就職活動。それは答えのない試験であり、設問は全て自分自身から出題されるものばかり。
なのに、試験対策の自己分析は自分を客観的に見ている「つもり」のものばかり。
そんな就活を経験したことのある方なら誰もが共感する、誰か私を客観的かつ具体的に表現してくれないかと苦悩していた日々に。

分析は得意だが意思表示は苦手な二宮拓人、単純バカのようで何事にもストレートな神谷光太郎、悩み過ぎて自分の強ささえ忘れかけている田名部瑞月、委員長タイプで何事にもマジメな小早川里香、他人との差別化と人脈の拡張が自己を高めると信じる宮本隆良。

劇団で脚本を書き続けてきた拓人には観察力がある。けれど新たに別の劇団を立ち上げた烏丸ギンジの存在が彼の心を乱し、自身への観察と分析を妨げる。
音楽をやり続けてきた光太郎には猪突猛進な魅力がある。それが想い出の女性に逢いたいという理由だけで就活に挑む原動力にもなっている。
留学を経て帰国した瑞月には覚悟を決める度胸がある。だからこそ、自分の夢よりもヒステリーになった母親と暮すために相応しい仕事を選ぶという決断力もある。
OB訪問を繰り返す里香には何事もこなす頼もしさがある。ただそこに自己表現が欠落しているため、彼女という個性が見えてこないのも事実である。
1年間の休学を選んだ隆良には様々なものを吸収する意欲がある。だがそれを形にしようとしない姿は、ただのクリエイター気分のお子様でもある。

私自身、就職・転職活動をしていた頃を思い出すと、恐らく拓人タイプだ。結局は自己分析という大切な作業だけが不十分に出来ていないのに、それすら気付かない愚か者。

でもハローワークで出逢った相談員の方から自己分析の方法をマンツーマンで教わってから思い出すことが多いのは、これまでたくさんの方に私自身を分析してもらっていたこと。
特に今の仕事に就いてからは、20年前の高校生時代に塾の先生から頂いた言葉を思い出すと、私は20年も遠回りして今この場所にいるんだなと改めて自己反省してしまう。

だからこそ、この20年を、いや正確には就活を始めてからのこの15年を振り返ると、瑞月や光太郎のように、どんな理由であれ、就活先を絞ることの出来る人を羨ましいと思ってしまう。
逆に拓人や里香のように、何事もある程度ならこなすことの出来る人の苦悩には共感してしまう。自己分析の結果を1分で表現しろなんて、具体的な目標もない人間には無茶な話だと。

そして同時に思うのは、就活もある意味では運次第。面接官の良し悪しも含め、何が合否の分かれ目になるのかは面接官以外には誰にも分らない。
実際、私も面接日に履歴書の持参を忘れるも、近くのコンビニで履歴書を購入し、面接官の前で書き上げたことが内定に繋がったこともあるのだから、本当に合否のラインなんて分からない。

ただ拓人が「何者」という裏アカウントで仲間たちをこき下ろすツイートをしていたことも含めて、彼が就活2年目という事実の判明には妙に納得してしまう。
なぜなら彼は他者の分析はするが自己の分析が出来ていない愚か者。しかもそれを言葉ではなくツイートでしか表現出来ない弱き者。まさに他人から見れば「滑稽」の一言。そんな拓人の姿を舞台劇という方法で表現する三浦大輔監督には素晴らしいの一言。

一度も顔をまともに見せることのなかった烏丸ギンジは誰にでもある、自分とは違い己の進む道を弁えている他者への憧れ。
そんなギンジとの違いを1分間では表現出来ないと語った拓人の後ろ姿を見ると、彼が「もっと想像力のあるヤツだと思った」というサワ先輩の言葉の意味を「自己分析」を経て理解する日も、そして内定が届く日もそう遠くないと思えてくる。

就職活動に必要な自己分析は、これまでの人生で他人から頂いた言葉を総括する作業。でもそれが理解出来るのは就職活動が終わって何年も経ってからの話。
だから就活をする学生さんたちへ私の拙い経験から送ることの出来る言葉はただ一つ。

自分の能力よりも、自分の性に合う仕事を選ぶ方がいい。
その方が心も幸せになるから。

深夜らじお@の映画館は世代的にSNSは自己表現の場ではなく、情報選択のツールでしかありません。

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この記事へのコメント

1. Posted by BROOK   2016年10月17日 05:40
作品を観ていると、就活した時代を思い起こし、ちょっと苦くもあり…。
現在の就活事情も昔とさほど変わっていないんだなぁ…と思いました。
ただ、SNSで呟いたりはしてませんでしたが。
就活したことのある人は登場キャラの誰かには当てはまるような気がします。
2. Posted by にゃむばなな   2016年10月19日 00:45
BROOKさんへ

私はSNSなんてない時代に就活をしてましたからね。
便利になった世の中なのに、何だか今の学生さんが逆に可愛そうになりましたよ。
仲間に対しても疑心暗鬼にならなきゃあかんなんて…。
3. Posted by FREE TIME   2016年10月21日 22:57
こんばんは。
自分の就活時代は今のようにSNSもなかったし、メールでのやり取りもなかった時代。
当時との時代の移り変わりを感じながら見ていました。
就活ほど自分が「何者」なのか考えたり、問われたりした時期はなかったような気がします。
そういったところを、いろいろ多く伝えていた映画だったと思います。
4. Posted by にゃむばなな   2016年10月22日 23:37
FREE TIMEさんへ

今の時代はSNSがある分、自分で自分が何者かであることを余計に分からなくさせているのかも知れませんね。
便利なツールも間違えた使い方をすれば、こうなっちゃうのでしょうね。
5. Posted by ノラネコ   2016年10月26日 22:26
誰もが持つ自分自身は「何者」なのかという疑問を、就活という日本独特の制度の中に描き出したのは秀逸でした。
私自身は就活したことがないので、この青春の通過儀礼にはちょっとした憧れがあるのですが、毎年学生見てると大変なんだろうなと少し同情します。
6. Posted by にゃむばなな   2016年10月26日 23:43
ノラネコさんへ

就活は本当に大変ですよ。
どんなに優秀でも、それを他人にプロモーション出来なければ優秀とみなされませんからね。
逆に優秀でもないのにプロモ上手が出世する。
だからこんな変な世の中になっているとも考えられますけどね。

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