2017年01月29日

『ヒトラーの忘れもの』

ヒトラーの忘れもの戦争の後片付け。そこに愛は存在出来るのか。
ナチスドイツが去ったデンマークで実際に行われたという、捕虜となったドイツ人少年兵による地雷撤去作業。非人道的兵器を非人道的手段にて行うという憎しみの連鎖を断ち切ることこそが戦争の後片付けなのに、なぜ大人の尻拭いを明日を夢見る少年たちに強いるのか。

LAND OF MINE:俺の国だ。この言葉を連呼するデンマーク人軍曹のラスムスン。そこにはナチスだけでなく、ドイツ人に対する憎しみしか存在しない。
だからこそ、彼が浜辺の地雷撤去に駆り出された少年兵たちに慈愛の眼差しどころか、同情の眼差しさえも向けることは一切ない。なぜなら彼らは母国を侵略したドイツ人でしかないからだ。

しかし食料の調達さえも行われない現場で、空腹のあまり家畜の餌を食べたがために体調を崩したドイツの少年たちを見て思う。近隣農家の主婦が「いい気味だわ」と体調を崩した少年たちを嘲笑う姿を見て思う。本当にこれは正しいことなのかと。

憎しみを憎しみで返す。母国を侵略されたから捕虜に非人道的作業をさせる。当然の報いだと誰もが言う。
だがそこにはこの少年たちにも「LAND OF MINE:俺の国」という言葉があることを忘れさせているという事実も存在している。
ただ親兄弟に逢いたいだけで帰国を願うのではない。荒れ果てたからこそ自分たちの手で復興させねばならないという愛と希望で帰国を夢見る少年たちの母国だ。

戦争は大人が始めたことだ。だから戦争の後片付けも本来なら大人がすべきことだ。
でも軍曹の目の前では母国を復興させると夢見た少年たちが一人また一人と地雷撤去作業中に命を落としていく。それを見過ごすことは大人として正しいことなのか。

そんな軍曹が自問自答しながら少年たちと共に過ごす時間を作る。時にサッカーを楽しみ、時に浜辺を走り、時に沈む夕日を共に見ながら話す。

しかし憎しみの連鎖を断ち切ることは容易ではない。愛犬が地雷により命を落とすと軍曹も平静を保てなくなる。だから悪いのは地雷撤去作業を怠ったドイツ人だと怒る。彼らに地雷撤去作業が終わった浜辺を列になって歩けという非人道的な命令も下す。

でも本当は自分たちデンマーク人が見落としていた地雷ではないかという疑念が軍曹の中で罪悪感となっていく。大人の尻拭いを少年たちにさせているという意味では憎きナチスと同じではないかと。

だから軍曹は彼ら少年兵を一人でも多く母国へ帰したいと願う。農家の娘が地雷原で遊んでいた時も勇気ある少年たちが彼女を救おうと必死になった姿に、兄を作業中に失い、自らも冷静さを失った弟が自ら命を絶った姿に、一人の大人として思う。
憎しみの連鎖を断つには愛が必要だ。寛容が必要だ。相手を想う優しさが必要だ。

なのに撤去作業中の一人の少年兵が「つい」気を抜いてしまったがために、トラックに積まれた信管を抜いた地雷が多くの少年たちの命を奪う。白い浜辺に対を為す青い空に白煙が上がる映像が軍曹にも恐怖と悲しみを植え付ける。

それでも残った4人の少年たちだけでも母国に帰したい。
軍上層部が彼らを新たなる地雷原に送り込んだとを聞いて、大人として約束通り彼らを帰国させることこそが自分の責務だと確信した軍曹が新たなる任務地から少年兵たちを呼び寄せる。
そして国境付近で彼らをトラックから下し、走って母国に帰るように促す。

軍曹は敵兵を帰国させたのではない。ドイツ人を母国に帰したのではない。ただ自分と同じように母国を愛する少年たちを帰したのだ。
その大人が子供に向ける愛に一人の少年兵が振り返る。その様子を軍曹はただただ見つめる。これが大人としての責務だと信じている男の姿が夕陽に眩しく映る。

2,000人の少年兵が150万基の地雷を撤去した史実。その半数の少年兵が無事に帰国出来なかった史実。

世界の独裁者たちよ、ポピュリズムに走る政治家たちよ。
あなたたちに大人としての責務を果たす信念はあるのか。

深夜らじお@の映画館はこういう映画こそ新しいアメリカ大統領にも見て欲しいと思いました。ただ彼が理解出来るかどうかは分かりませんが。

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acideigakan at 23:59│Comments(2)clip!映画レビュー【は行】 

この記事へのコメント

1. Posted by latifa   2018年03月25日 10:53
にゃむばななさん、こんにちは!
これ、凄く心に残る作品でした。
ちょっと見るのが遅れてしまったのですが、去年見ていたら、昨年度のベスト10に入れるか、入れないか、悩んだと思います。
2. Posted by にゃむばなな   2018年03月30日 22:44
latifaさんへ

戦争の後片付けを子供たちにさせる非人道的なお話。
それが史実であるということが悲しすぎますよ。
国を侵略されたら、何を仕返してもいいはずなんてないのに。

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