2017年03月06日

『お嬢さん』

お嬢さんこれは異様か、それとも異常か。いやこれもまた愛か。
さすがパク・チャヌク監督だ。アジアでは韓国でしか、しかもパク・チャヌク作品でしか撮れない美しさに加え、今回はそこに大胆なエロティズム、もといヘンタイ文化まで過激に投入しているとあっては、もはやこれは日本人が最も楽しむべき映画。
ただし免疫のあるファン限定で!

「復讐3部作」に代表されるように、パク・チャヌク監督作品にはどこか精神的に病んだ状況下が生み出す独特の美しさを映像だけでなく、ストーリーとしてもスクリーンに映し出す巧さがある。

今回もイギリス文学作品「荊の城」を日本統治下の朝鮮半島に舞台を変えているとはいえ、日本のヘンタイ文化を大いに取り入れているため、普通に見ればただのエロティズム映画。
しかし韓国人俳優にヘタックソな日本語を喋らせていることで、逆にこれがこの世界観に異様なファンタジー感を醸し出すため、不思議とエロティズムが芸術的美しさを纏い出すのだから、こりゃたまったもんじゃない。

しかも3部構成で描かれる二転三転するストーリーも実に面白いこと。

侍女目線で描かれる第一部では薄幸な富豪令嬢・秀子の侍女として潜り込んだスッキこと珠子が詐欺師・藤原伯爵に協力して財産を奪い取るはずが、秀子に恋愛感情を抱いてしまったスッキ。
「傷物語」の阿良々木兄妹の歯ブラシ対決にも通ずる、スッキが秀子の歯を削るくだりから荒れる息遣いが何とも官能的で、初夜を教えるはずが組んず解れつになるベッドシーンからレズビアン的恋の逃避行が始まるのかと思っていたら、最後の最後で精神病院に放り込まれるのは秀子ではなくスッキという大逆転劇が発生。

続いて令嬢目線で描かれる第二部では秀子と藤原伯爵はハナから詐欺を計画し、その駒としてスッキを用立てたという真実が判明。さらに秀子が官能ヘンタイ小説を読まされ、それを伯爵共が聞きながら甘美な一時を過ごすというヘンタイ朗読会も判明。
ただスッキとの恋を選んだ秀子は、同時にスッキに自分が望む男共への復讐も手伝わせる「クムジャさん」のような女。そう、ある意味この作品もパク・チャヌクお得意の「復讐劇」。だから第一部でも見せたベッドシーンに新たな意味合いが追加される。身体だけでなく心も組んず解れつになっているのだと。

そして藤原伯爵目線で描かれる第三部はまさに女の復讐劇であり、女たちの愛撫劇。いかにして秀子との打ち合わせのうえでスッキは精神病院から抜け出したのか、いかにして秀子は藤原伯爵を騙して、金で日本人になった伯父の上月の元へと送ったのか。
その復讐劇に「ち※ぽを守れて死ねる」といったブラックな笑いが加わると、その反動としてロシアへと逃避行を計る女たちの船室での全裸での「玉玉玉玉」を使った絡み合いも妙に見入ってしまう。女優陣の身体を張った演技に見入ってしまう。

もしこの映画が流暢な日本語を話すキャストによって映画化されていたら、きっと幼い少女に「ち※こ、ま※こ」と復唱させる悪趣味もただの卑猥で終わっていただろう。
もしこの映画が全編韓国語で描かれていたら、きっとそんな卑猥なセリフにはピー音が被せられていただろう。
ただそれではこの映画が描く本当のエロティズムも、そのエロティズムが醸し出す美しさも描けなくなってしまう。

だからこそ思うのは、この映画を最も堪能できるのは日本語が話せる者、つまり我々日本人である。
女性に卑猥な単語を、文章を音読させることで生まれる、女たちの男のヘンタイ世界への復讐劇。その復讐劇を果たすために心も身体も組んず解れつになる全裸の女たち。

あれほど田舎臭い表情だったスッキが秀子との愛を身体に刻み込むことで美しき女へと変わっていたことに気付いた時、改めて思う。女たちに復讐されることは絶対に回避せねばならないことが、男として「ち※ぽを守れて死ねる」ことがいかに重要であるかということを。

深夜らじお@の映画館は春画の偉大さを改めて知りました。冷静に考えると当時の日本人の想像力と性欲は凄すぎるじゃなイカ!

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acideigakan at 23:59│Comments(8)clip!映画レビュー【あ行】 

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1. お嬢さん  [ あーうぃ だにぇっと ]   2017年03月08日 06:55
お嬢さん@スペースFS汐留
2. 『お嬢さん』 2017年2月8日 アキバシアター  [ 気ままな映画生活 −適当なコメントですが、よければどうぞ!− ]   2017年03月08日 07:58
『お嬢さん』 を試写会で鑑賞しました。 上映間にパク・チャヌク監督、真木よう子の舞台挨拶がありました。 真木よう子は細い。可愛い パク・チャヌク監督はこういう映画を撮る監督には思えないほど静かな人だった。 【ストーリー】  日本の統治下にあった1930年代の韓国
3. お嬢さん・・・・・評価額1700円  [ ノラネコの呑んで観るシネマ ]   2017年03月12日 20:56
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4. お嬢さん  [ 映画的・絵画的・音楽的 ]   2017年03月17日 07:02
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5. お嬢さん/아가씨 /THE HANDMAIDEN  [ 我想一個人映画美的女人blog ]   2017年03月24日 01:13
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6. 「お嬢さん」  [ ここなつ映画レビュー ]   2017年03月24日 14:44
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7. お嬢さん  [ 象のロケット ]   2017年03月26日 01:07
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韓国で、レズビアン内容の作品を作るのは、かなりハードルが高いらしいのですが・・。

この記事へのコメント

1. Posted by ノラネコ   2017年03月12日 21:17
男目線では恐ろしい映画でしたねw
「オールドボーイ」もそうでしたが、パク・チャヌクと彼の目を通した日本文化とのマッチングは最高。
まさに彼にしか撮れないめくるめくエロスの世界でした。
2. Posted by にゃむばなな   2017年03月15日 23:56
ノラネコさんへ

パク・チャヌクという映画監督はいったいどういう視点を持っているのでしょうね。
日本人でも描けない日本を描きつつ、でも外国人から見た日本を描くのでもなく、それらを上手く韓国流、いや正確にはパク・チャヌク流にしているところが凄いですよ。
3. Posted by mig   2017年03月24日 01:12
面白かったですね、大好き。パクチャヌク。
おかしな日本語とエロスがまた良かったです。^^
4. Posted by にゃむばなな   2017年03月29日 00:58
migさんへ

パク・チャヌク監督って、ある意味ヘンタイですよね。
毎度クセがあるのに面白い映画ばかり。
いい意味でのヘンタイさんなんでしょうね。
5. Posted by ジョニーA   2017年04月04日 22:58
男女の愛は突き詰めるとただの変態。
同性愛こそ崇高な一段上の愛情なのだ、
ということを啓蒙するような内容デシタw
6. Posted by にゃむばなな   2017年04月05日 23:58
ジョニーAさんへ

あぁ〜、なるほど。この映画には確かにそんなメッセージも読み解けることが出来ますね。
ということは、パク・チャヌクもそっちに理解のある方なのかな?
7. Posted by latifa   2017年07月10日 21:22
にゃむばななさん、こんにちは!
様々なヘンタイ、楽しませてもらいました。
つたない日本語で、幼稚園か小学校の男の子が無邪気にふざけて言う様な言葉には、笑ってしまいました。

でも、凝った映像やロケやセットが素晴らしくて、私はパク・チャヌクファンなので、結構面白く見せてもらいました。
8. Posted by にゃむばなな   2017年07月11日 23:59
latifaさんへ

このアホな世界観、そしてこのワザとらしさ。パク・チャヌク監督の色が出てますよね。
本当によくもまぁこんな映画を撮れますわ。

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