2017年04月07日

『LION/ライオン〜25年目のただいま〜』

LION/ライオン大好きな兄ちゃんへ、25年目のただいま。
オーストラリアへ養子に出された青年が、インドで生き別れた家族をグーグルアースを使って25年ぶりに再会するという実話。その影にある家族に纏わる様々な覚悟。
事実は小説より奇なりなストーリーに涙するのではない。覚悟を決めた2つで1つの家族の姿に涙するのだ。

面倒見のいい兄と過ごす時間が何よりも大好きな、インドのとあるスラム街で育った5歳のサルー。丸い顔とつぶらな瞳で必死に走る姿がとにかく可愛いくて仕方ないサニー・パワール少年が好演すればするほど気になるのが、ふとしたことから停車中の電車で眠ってしまい、1,600km離れたカルカッタの街で迷子になったはずなのに、なぜか彼は一切泣かないということ。

普通の5歳ならその場で泣き叫び、悲観するもの。けれどスラム街で育ったという点を差し引いても、時に人身売買の魔の手から逃げ延び、時にストリートチルドレン収容の大人たちから逃げ延びても、彼は誰かに助けを求めるでもなく、ただただ大都会で生き続ける。

そんな「強い子」という言葉だけでは説明のつかないサルーが孤児院で5歳にして大きな選択を迫られる。オーストラリアへの養子話を受けるかどうかは、裏を返せばインドの家族とはもう会えないという現実を受け入れること。僅かな希望を自らの手で摘み取るということ。そんな選択を迫られた5歳児の背中がどんなに可哀想なことか。

しかも新しい家族の元でも彼は必死にその現実を受け入れようとする。義弟のマントッシュが精神的に病んでしまうのとは対照的に、彼はインドの家族に会いたいという想いを必死に抑えて、新しいオーストラリアの家族を大切にしようとするその覚悟。何て凄いんだ。

さらに大学に通うようになったメルボルンの友人宅で、兄ちゃんとの思い出の焼き菓子を見て遠い過去の記憶が蘇ると再び迫られる人生の選択。
電車の速度などが分かれば、あとはグーグルアースを使って該当する給水塔のある駅を探せばいいと友人やルーシーは言うけれど、果たしてインドの家族に自分が生きている姿を見せるだけで物事が済むだろうか。

恐らくインドの家族に会えば心が揺れる。インドに住むか、それともオーストラリアに住むか。それはどちらの母親を選ぶかという選択と同じ。せっかく覚悟を決めて養父母と円満な家族になれたのに、大切な家族の気持ちを想うとその覚悟が揺らぐ。5歳にして決めた覚悟が大人になった今、大いに揺らぐ。

でも養母スーの話を聞いてサルーは決心する。偶然が重なりようやく見つけた生まれ故郷に行って母ちゃんに逢いたい、兄ちゃんに逢いたい。インドの家族もオーストラリアの家族も大切にすると覚悟を決めた男が生まれ故郷へ向かう。

しかし生家は今や羊小屋。もう母も兄も妹もこの村を去ったのかと悲観するサルーに救いの手が差し伸べられる。英語が通じるおじさんが案内してくれた先で彼は25年間待ち続けた母との再会を果たす。

ヒンドゥー語と英語で言葉の通じない母子の再会。でも想いは確実に通じている。25年間逢いたいと願い、方々を探し回り、もう会えないと覚悟を決めたはずの母子の再会に言葉はいらない。それを観客の止まらない涙が雄弁に語る。

ただ大好きな兄は既に他界していた。サルーが迷子になった直後に他の列車に轢かれて神のところへ召されていた。
サルーが最も「ただいま」と言いたかった相手がいないという現実。でも覚悟を決めた彼は知っている。兄はいつも自分の目の前で微笑んでいてくれると。だから彼は笑顔で静かに心の中で兄に「ただいま」と言っているはず。

そんな2つの家族を大切にする覚悟を決めた実物のサルーがEDロール前で紹介されると、この小説より奇なりな実話に再び止まらぬ涙を流しながらも、ラストで衝撃の、でも納得の事実を知らされる。
何とサルーは生まれ故郷だけでなく自分の名前すら間違って覚えていたとか。彼の本当の名前はシェルゥ。その意味は「LION/ライオン」。

そうか、だからこそ彼は泣かなかったのだ。親の愛をふんだん受けた名前が彼を獅子のように強い男にして守り続けてくれていたからこそ、彼は泣かなかったのだ。

深夜らじお@の映画館はサニー・パワール少年の愛くるしさを生涯忘れません!

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acideigakan at 23:59│Comments(8)clip!映画レビュー【ら行】 

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1. LION ライオン 25年目のただいま〜/LION  [ 我想一個人映画美的女人blog ]   2017年04月08日 23:33
やっぱり涙なしに観られなかった実話。 後半からエンドロールまで泣いてしまった〜 5歳で迷子になり、オーストラリア人夫婦の養子として育てられたインドの少年が、 大人になってGoogle Earthを駆使して生家を見つけ出し、25年の時を経て実の家族との再会を果たした
2. 映画:LION/ライオン 〜25年目のただいま〜 Google Earth 万歳!以上終わり、じゃなくて…  [ 日々 是 変化ナリ 〜 DAYS OF STRUGGLE 〜 ]   2017年04月09日 00:49
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3. LION/ライオン 〜25年目のただいま〜  [ 映画1ヵ月フリーパスポートもらうぞ〜 ]   2017年04月09日 09:06
評価:★★★★【4点】(11) 前情報完全シャットアウト(予告編すら観ない)で行ってきた。
4. LION/ライオン 〜25年目のただいま〜  [ ★yukarinの映画鑑賞ぷらす日記★ ]   2017年04月10日 22:23
【LION】 2017/04/07公開 オーストラリア 119分監督:ガース・デイヴィス出演:デヴ・パテル、サニー・パワール、ルーニー・マーラ、デヴィッド・ウェンハム、ニコール・キッドマン、アビシェーク・バラト、ディヴィアン・ラドワ、プリヤンカ・ボース、ディープティ・ナヴ...
5. LION/ライオン 〜25年目のただいま〜★★★★  [ パピとママ映画のblog ]   2017年04月12日 20:23
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7. 「Lion/ライオン〜25年目のただいま〜」  [ ここなつ映画レビュー ]   2017年04月24日 23:52
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8. LION/ライオン 25年目のただいま  [ 映画的・絵画的・音楽的 ]   2017年04月26日 06:08
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この記事へのコメント

1. Posted by えふ   2017年04月08日 16:03
5歳の子が泣かなかったので、
かえって観てるこっちが心配でした。
ただ自分の名前くらいは・・と思いましたが(苦笑)
インドではあんなにたくさんの迷子がいるのにはびっくりでした。
2. Posted by にゃむばなな   2017年04月08日 23:00
えふさんへ

年間8万人ですもんね。びっくりですよね。
だからこそ、こういう物語はそんな現実を知ってもらう上でも大切なんでしょうね。
3. Posted by mig   2017年04月08日 23:32
こんばんはー
upしてすぐ来ていただきありがとうございます♪

本当、涙止まらなかったです。
結末は知ってても、ラストのタイトルの意味、驚きました。
4. Posted by yukarin   2017年04月10日 22:38
こんばんは。
5歳で迷子になったらわんわん泣くのが普通ですよね。

感動の再会も良かったですがその後のエンドロールでさらに感動して泣けてしまいました。
素敵な作品でしたね。
5. Posted by にゃむばなな   2017年04月12日 23:51
migさんへ

本当にいい映画は実話で結果が分かっていても、自然と感動できちゃうんですよね。
そしてその感動を最大限に活かして明かされる「LION」の意味。
これもうまいなぁ〜と思いましたよ。
6. Posted by にゃむばなな   2017年04月12日 23:55
yukarinさんへ

そうそう、普通の5歳は泣きますよね。いつまでも諦めきれずに泣き続けますよね。
それをせずに現実を受け入れ、25年後に悩んだ末に再会の道を選ぶ強さ。
そりゃ感動しちゃいますよ。
7. Posted by ノルウェーまだ〜む   2017年04月15日 22:56
にゃむばななさん☆
幼いサルーの無垢な瞳が胸を打ちました。
大人サルーが揚菓子を見て初めて涙した瞬間が、彼のタガが外れた時なのでしょうね。
それまで蓋をしてきた哀しみが関を切って流れ出た様子が、幼いながらもたった一人頑張ってきた彼の強さと優しさを表現していたのでしょう。
8. Posted by にゃむばなな   2017年04月21日 23:37
ノルウェーまだ〜むさんへ

そうなんですよね。ふとしたことから閉まっていた幼い時の記憶が蘇る。
そのシーンを説得力を持って描いている根底には、やっぱりサニー・パワール少年の存在感が素晴らしかったからなんでしょうね。

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