2017年05月22日

『メッセージ』

メッセージ未知との遭遇でのコンタクトに必要なもの。それはメッセージを受け取る勇気。
さすがドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品だ。細部まで丁寧に描かれたその手腕は素晴らしいの一言。
ただオチに関しては中盤で読めてしまったうえに、ヒロインの背景が描かれぬままのあのオチはやはり勿体無いとしか言い様がなかったのが残念。

地球上12ヶ所に突如現れた「ばかうけ」型宇宙船。人類に対して敵意を見せる訳でもなければ、友好を示す訳でもない。なぜなら彼らの言語が分からないし、彼らも人類の言語が分からないのだから、当たり前といえば当たり前の話。

しかしそれはある意味とてもリアルな話。地球上でさえ数多ある言語で意思疎通がままならぬのに、そこに宇宙言語が来れば当然不安は増す、疑念も増す、恐怖も増す。

だからこそ選ばれた言語学者のルイーズ。彼女の才能と知識ならと現地に召集されるも、まずこの映画は彼女が娘を授かり、その成長を見守るも、やがて難病により娘を失うというエピソードを描いている。
ただこの恐らく過去であろうエピソードで描かれるルイーズに対し、宇宙人との対話という任務を与えられたルイーズが老けていないという風貌が個人的には引っ掛かってしまった。もしかして『インターステラー』の事例からも過去のエピソードではないのかも知れないと。

そんな疑念に引っ掛かりながらも流れていくストーリーでゆっくりと強調されていくのがルイーズの母性だ。本来なら数理学者のイアン・ドネリーの理数系ならではの活躍がもっと描かれてもいいはずが、この映画ではほぼ描かれない。常に彼は彼女のサポート役に留まっている。なのでルイーズの左薬指に嵌められた指輪を見ても、そのお相手もすぐに分かってしまった。

けれど中国のシャン上将やアメリカのウェバー大佐を始めとする男共が根気もなく武力行使を主張する一方で、本当の強さであり勇気である「相手を受け入れる」優しさを示すルイーズを見て思う。やはり男は女のサポート役であることが、もっとも事が上手く進む術ではないかと。

ヘプタポッドと名付けられた宇宙人には時間軸という概念がないという事実も、もし男が仕切る場であれば、果たしてこんなにもスムーズに受け入れられていただろうか。娘が死んでしまうという未来が分かっても、その娘を育てるという勇気を持てるだろうか。

でも現実を愛おしむ女性にはそんな勇気が備わっている。今を大切にする素晴らしさを知っているからこそ、子供を産むという能力が備わっているからこそ、どんな未来が来ようとも娘を産むという決断も出来るのだ。

つまりルイーズは人類を守るために、世界を守るために、危険を犯してまでシャン上将を説得したのではない。彼女は自分よりも先に死ぬと分かっていても逢いたい娘を産むために人類の暴走を止めたのだ。
ある意味酷く個人的な理由ではあるが、その理由こそが本来なら人類が最も大切にしなければならない「愛」なのだ。

深夜らじお@の映画館は「ばかうけ」型宇宙船がなぜに北海道に現れたのかも疑問です。やっぱり大阪には宇宙人を倒した過去があるからダメだったのかな〜。

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この記事へのコメント

1. Posted by BROOK   2017年05月23日 05:55
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の手腕は見事しか言いようがありませんね。
ルイーズにそんな能力が…と、驚いた終盤ですが、結末は素晴らしいものがありました。
2. Posted by 三日月   2017年05月24日 14:34
にゃむばななさん、こんにちは。

大昔に原作を読んだので結末はわかっていたのですが、SFは世界観だなぁと再認させてもらいました。
ブレードランナー2も楽しみです
(*´ー`*)
3. Posted by にゃむばなな   2017年05月25日 00:19
BROOKさんへ

確かに監督の手腕は素晴らしいですけどね〜。
何だろう、私は皆さんほどハマれませんでしたわ。
『灼熱の魂』とかの方がこの監督作品は好きだからなのかな〜。
4. Posted by にゃむばなな   2017年05月25日 00:22
三日月さんへ

確かにSFは世界観が大事ですよね。
ある意味それで作品の評価の大半が決まってしまいますもんね。
5. Posted by mig   2017年05月25日 12:03
こんにちはーにゃむばななさん私もちょっとえーって部分も多く、好きでもなく悪くもなく普通でした。
作品賞ノミニーするほどには思えなかったなぁ。
6. Posted by FREE TIME   2017年05月27日 23:44
こんばんは。
地球上だけでも様々な言語が存在する中で異星人との会話が時間が進むにつれて出来るようになったルイーズって凄いですね。
まさにSFと呼べるような未知の世界観に引きずり込まれるような作品でもありました。
7. Posted by にゃむばなな   2017年05月29日 23:54
migさんへ

そうなんですよね、世間の高い評価を受けて見ても、個人的には普通でした。
いい映画なんですけど、そこまで特別視するほどでもないって感じでしたね。
8. Posted by にゃむばなな   2017年05月29日 23:59
FREE TIMEさんへ

異星人との会話が出来るのに、人類同士での会話がままならないこの世界。
ルイーズみたいな凄い人が世界にたくさんいれば、このSF世界もSFでなくなるんですけどね〜。
9. Posted by ノルウェーまだ〜む   2017年05月31日 23:15
にゃむばななさん☆
映画はSFというよりも、人間ドラマでしたね。
新しい形のSFでその点では見事でした。
ばかうけ宇宙人は未来の時間軸を活用出来るなら、自分たちが得た地球の言語の知識を生かして接触してきてほしいですよね(笑)
10. Posted by にゃむばなな   2017年06月03日 23:08
ノルウェーまだ〜むさんへ

ほんと、人間ドラマでしたね。
そして仰る通り、宇宙人も地球の言語を学んで来いよ!って思いますよね。
でもそうなると学ぶのは中国語?
そんなイタリア映画がありましたなぁ〜。

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