2017年06月09日

『パトリオット・デイ』

パトリオット・デイボストンよ、強くあれ。
2013年4月15日に起きたボストンマラソン爆弾テロ事件。それは「愛国者の日」に起きた悲劇であり、ボストン市民を愛で団結して悪魔に打ち勝った102時間。
地元警察官、FBI、一般市民、実行犯、被害者。誰がどのように事件に絡むかが分からないまま進む実録サスペンスに、本当の意味での平和を考える。

実在しない架空の人物であるボストン警察官のトミーを主軸に、実行犯のツァルナエフ兄弟、中国籍の若者、休日を楽しみにしていた若夫婦、幼き子供と過ごす父親、気になる女子大生をデートに誘いたい若き警官がどのように事件に関わっていくのかを緊迫感を持って描く前半から、とにかく気になるのはいつ爆破が起きるかということ。

史実を映画化しているので爆破は必ず起こる。けれどそれがいつになるのかが分からない。すると恐怖が自然と増す。平和な日常も誰かの愚行により一瞬にして悲劇の現場となることは、決して日本でも対岸の火事ではないという恐怖が増す。

だからいざ爆破が起こると騒然となる現場に思わず震災の日を思い出してしまう。天災と人災という違いはあれど、共にそれまで誰もそんな悲劇が起こると思っていないからこそ対処に困惑するあの恐怖の時間。

今、自分は何をすべきか。それがすぐに出来るトミーのような人間もいれば、出来ない人間もいる。そんな人々が右往左往する現場で、捜査という名目で人間味さえも忘れ去られた現場で、置き去りにされた8歳の少年の遺体の傍で任務として立ち続ける一人の中年警官の悲しき表情。まだ冷たい4月の風が白い布を吹き飛ばそうとするなかで収容される亡き少年に敬礼するその姿に思わず涙が頬を流れてしまう。

だからこそ、捜査を仕切るFBI捜査官やボストン警視総監、州知事、そしてウォータータウンの老巡査部長が本格的に動き出す中盤からはスクリーンから目が離せなくなってしまう。
誰もが睡眠を取らない捜査本部。地元の地理に詳しいトミーが次々と「白い帽子」の犯人が映っているであろう防犯カメラの位置を特定し、警視総監が怒りで公開させた実行犯の写真の数々。

市民の力を借りれば事件も早期解決に向かうという希望も、自分勝手な解釈による教育を振りかざす実行犯兄弟により射殺された若き警官の無念を思えば、車を奪われ監禁された中国籍の若者の恐怖を思えば、それがいかに難しいものであるかを痛感させられる。

たった2人の犯人を逮捕するがために夜の街中で爆弾が多く投げつけられる銃撃戦が起こり、たった1人の逃げ延びた犯人を逮捕するために快晴の日にいくつもの街を厳戒令レベルで封鎖し、武装警官がシラミ潰しに探す。そんな異様で異常な時間が続いていたボストンやウォータータウン。

でも市民は決してそんな恐怖には負けない。子供が産めなくなった妻との過ぎ去りし日を思い返しながら、亡くなった少年のためにも絶対に犯人逮捕を決意するトミーの言葉には、愛と希望を語り継ぐことこそが平和を享受する者の使命とも思える強き心が見えてくる。

犯人の妻が語っていたようにシリアなどでは多くの罪なき人々が命を落としている。しかしだからといって、他の国で同じように罪なき人々をテロという卑怯な手法でその命を奪っていいという道理はない。むしろ世界中の罪なき人々の協力を得て、一部の権力者という罪ある人々を断罪すべきだ。それすらもしない弱き者が卑怯者と化し、今日もまた世界のどこかでテロという愚行に走っている。

けれど、そんな愚行による悲劇に見舞われてもボストンの街は愛と希望を失わない。逆に市民はより団結したのかも知れない。レッドソックスが「BOSTON」のユニフォームをあえて着るように、誰もがボストンの街を愛している。

EDで本物の当事者が語るくだりは少々愛国心アピールが強すぎてはいたが、それでも『ユナイテッド93』と同じく、あの忌まわしき事件が少しでも鮮明に記憶に残っているうちに描くことにも大きな意味を持っているこの映画。

改めて「世間体」が実は大きなテロ対策として活かされている日本に生まれて良かったとも思う映画でもありました。

深夜らじお@の映画館はやっぱりこのケビン・ベーコンの渋さが大好きです。

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2013年に発生した、ボストンマラソンを標的にした爆弾テロを題材にした実録サスペンス。世界を震撼(しんかん)させた同事件の解決に奔走した者たちの姿を追う。監督は、『バーニング・オーシャン』などのピーター・バーグ。『ディパーテッド』などのマーク・ウォールバーグ
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 アメリカ  ドラマ&サスペンス  監督:ピーター・バーグ  出演:マーク・ウォールバーグ      ジョン・グッドマン      ケヴィン・ベーコン      J・K・シモン ...
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【PATRIOTS DAY】 2017/06/09公開 アメリカ PG12 133分監督:ピーター・バーグ出演:マーク・ウォールバーグ、ジョン・グッドマン、ケヴィン・ベーコン、J・K・シモンズ、ミシェル・モナハン 最大の危機は、最大の奇跡を生む―― 50万人の観衆で賑わう、ボストンマラソ..
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この記事へのコメント

1. Posted by BROOK   2017年06月10日 06:08
やはりピーター・バーグ監督は手堅く作品を作り上げますね。
今作はドキュメンタリーの様相を呈しており、最後まで観客を事件の中に放り込んだような感じでした。なのでラストまでハラハラドキドキと。
2. Posted by にゃむばなな   2017年06月10日 23:10
BROOKさんへ

手ぶれ映像といい、実際の映像といい、緊張感の持たせ方がいいですよね。
最後までハラハラドキドキでしたよ〜。
3. Posted by mig   2017年06月13日 12:34
>そんな愚行による悲劇に見舞われてもボストンの街は愛と希望を失わない。逆に市民はより団結したのかも知れない。レッドソックスが「BOSTON」のユニフォームをあえて着るように、誰もがボストンの街を愛している

そこですよね〜少々長い気もしたけど見ごたえありでした!名優揃い
4. Posted by にゃむばなな   2017年06月13日 23:28
migさんへ

ほんま、名優揃いでしたね。
その名優たちが織り成すボストンへの愛の数々。
レッドソックス愛の深さもまたそれなのでしょうね。
5. Posted by ノルウェーまだ〜む   2017年06月14日 10:15
にゃむばななさん☆
子供の遺体を前に立ち尽くす警官のシーンでは本当に涙がこらえられませんでした。
大げさな演出無しに描かれるこの映画が、こんなにも泣けるのは、やはり市民が自然と団結して犯人を逮捕しようと一つになった気持ちに嘘偽りがないからなのだと思いました。
6. Posted by にゃむばなな   2017年06月16日 23:52
ノルウェーまだ〜むさんへ

あの子供の遺体の傍に立ち続ける警官のエピソードは涙腺を刺激しますよね。
そんな子供とあの警官のためにも市民が一丸となって犯人逮捕に繋げたことこそが、アメリカの魂なのでしょうね。
7. Posted by FREE TIME   2017年06月19日 22:35
こんばんは。
実際に起きた出来事を題材にした作品だけにものすごい緊迫感を持ちながら観ていました。
このテロで4人も犠牲者がいた事は忘れてはいけませんね。
8. Posted by yukarin   2017年06月22日 15:07
こんにちは、おじゃまするのがいつも遅くてすみません。

実話ですが見応えある作品になってましたね。
今でも男の子の遺体のそばにずっと立っていた警官の姿が忘れられません。
テロには屈しない...とは言ってもなかなか防ぐことは難しいですね。
9. Posted by にゃむばなな   2017年06月25日 15:15
FREE TIMEさんへ

実在でない人物をストーリーテラーに、実際の事件を描く。
そこに生まれる緊迫感。そして犠牲者の存在感。
忘れてはならない史実ここにありでしたね。
10. Posted by にゃむばなな   2017年06月25日 15:17
yukarinさんへ

テロには屈しないアメリカですが、そのテロを起こさせないという考え方にならないのもアメリカらしいなと思いましたよ。
あの警官のような切ない表情は二度と見たくないだけに、何とかならぬものですかね。

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