2017年08月29日

『エル ELLE』

エル犯人探しが目的ではない。性欲を満たすことも目的ではない。ただ歪んだ彼女を受け入れることが目的なのだ。
さすがポール・ヴァーホーヴェン監督作品だと称賛する前に、さすがイザベル・ユペール様だと称賛したくなる映画だ。アメリカ人女優が総スカンしたこの難役を演じ切ってなお、女としての性的魅力をスクリーンに残したのだから!

冒頭から黒猫が凝視して目を背けた先で一人の女性が覆面男にレイプされている。しかもほんの数分だけ。
しかしショッキングな映像だと思う前に、襲われたミシェルが冷静に荒れた部屋を片付ける。泣きもせず、怒りもせず、警察に通報もせず、まるで今日の嫌な出来事を忘れたいが如く、淡々と過ごす。

ただミシェルの日常を見ると、彼女が方々から恨みを買われても仕方ない女性であることが分かる。ゲーム製作会社の剛腕な経営者で、若い恋人を作る老母やキツい性格の嫁に手こずる息子を蔑視しながらも、作家の元夫や隣人の銀行マン、共同経営者アンナの夫と多方面に性的魅力を振りまく彼女は決して世間で言うところの「いい女性」ではないと。

だが徐々に明かされる彼女の過去を知ると、その歪んだ人間性を拒絶したいとは思えなくもなってしまう。訳あって多くの命を殺めた父親の「不幸な娘」として人生を歩み、警察を信じることが出来なくなった現在の彼女に対して、どういう感情を抱けばいいのか迷ってしまうからだ。

特にその人間関係がいわば被疑者多数という状況でもあるにも関わらず、犯人の絞り込みをしない彼女の行動は不可解であると同時に、まるで何かを探し求めているかのようにも見えてくる。

つまり催涙スプレーなど防犯グッズの購入や近しい友人への打ち明けは彼女の理性が行ったことで、彼女の本性は性欲を満たすことなのか、危険な情事にのめり込むことなのかと考えていくと、社内PCに出回った触手強姦CGの犯人探しの結果に少々落胆する姿は、どこかお目当てのモノが手に入らなかったようでもある。

だからこそ、これは性別問わず他者との関係を壊しては築く歪んだ人生を歩んできたミシェルが心の奥底に眠る性癖に向き合う作品なのかと思うと、強姦魔と判明した隣人の銀行マンに自動車事故からの救助を依頼するわ、その後には彼の家で酔い潰れた息子を他所に強姦魔の性癖を受け入れるわと、不可解な行動を未だに繰り返す彼女に少々戸惑ってしまう。

けれど母親と父親の死を経て、次第にその不可解な行動が実は彼女の心の安寧を求めるが故の行動ではないかと思い始めると、そこから見えてくるのは男の弱さと女の強さだ。
性的行動や成功体験で弱さをひた隠す男とは違い、女はその男の弱さを受け入れ、利用し、そして払拭することで強くなろうとする。

つまり本質的に男は永遠に弱い。逆に女は弱い原因が男にあると分かれば、いつでも強くなれる。それをダメな男は分からないまま人生を終える。女はそれが分かれば二度と弱くなることはない。

だから本当に「いい女」は精神的に自立している。年齢に関わらず性的魅力を兼ね備えている。それをイザベル・ユペールが見事に体現している。64歳とは思えぬ色気と肢体で表現している。

ということは、ポール・ヴァーホーヴェンは本当に「いい女」を理解しているということか?
今一度『氷の微笑』を見直すべきだろうか。

深夜らじお@の映画館はイザベル・ユペールのような女性なら是非お相手して頂きたいです。

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acideigakan at 01:31│Comments(6)clip!映画レビュー【あ行】 

この記事へのコメント

1. Posted by latifa   2017年09月05日 10:51
にゃむばななさん、こんにちは!
昨日、こちらに来て、感想拝見していたんです。コメント書き込もうとしたのだけれど、名前の処の欄で、なぜかフリーズしちゃって・・・。今日は大丈夫でした^^

アメリカの女優さんが軒並み断ったお仕事、ユペールさん、みごとに演じられていましたね。
なんとなくですが、これはアメリカ人より、フランス人女優さんが演じる方が、良かったというか、人選成功していましたよね。

内容も興味深く、ちょっと解らない謎な処もありましたが、最後まで、はまって見れました。
2. Posted by にゃむばなな   2017年09月09日 23:23
latifaさんへ

やっぱりこれはフランス女優でないと、ここまでの魅力は出てこなかったでしょうね。
アメリカ女優では別方向の作品になってしまいますもん。
その具体例が『氷の微笑』ですかね…。
3. Posted by mig   2017年09月18日 21:51
にゃむばななさんこんばんは
コメントいれようとしたらgooのサイトには入らないのかな?
というかgooに移られたのかな??
さておき、ポールバーホーヴェン大好きなので
本作も楽しんだけど、賞とるほどかなー?笑
復讐の展開は意外とフツーでした
4. Posted by にゃむばなな   2017年09月20日 23:27
migさんへ

ごめんなさいね。gooはTB専用に開設しただけなんですよ。
あくまでもlivedoorをメインにしておりますので、引き続き御贔屓を。

さておき、イザベル・ユペール様ファンが欧米には多いのかも知れませんね。
あの色気に負けた殿方が票を積み重ねたのかも知れませんよ。
5. Posted by ノルウェーまだ〜む   2017年09月29日 12:22
にゃむばななさん☆
本来被害者であるのに「レイプ」を「プレイ」に変えることで一枚上手を行くミシェルが、周囲のダメ男たちを掌で転がしていくその強さに驚くばかりでした。
彼女の演技あってこそですね〜
6. Posted by にゃむばなな   2017年09月30日 23:21
ノルウェーまだ〜むさんへ

女性はやっぱり怖いですよ、もとい凄いですよ。
所詮男なんて女性の掌の上で転がされてナンボですもん。
本当にそう思えた映画でもありましたよ。

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