2017年10月28日

『ブレードランナー2049』

ブレードランナー2049奇跡を見たことがあるか。
SF映画史に燦然と輝く名作の30年後を描く35年ぶりの続編。それは映画史に残る素晴らしき傑作。
名作をなぞるのではない。名作を独自解釈で語るのではない。名作のテーマを突き詰めるがゆえに、あらゆる形で「人間性とは何か」を表現する。
その結果、「Tears in rain」は雨天の日にこそ名曲と化す。

「人間もどき」と揶揄される新世代レプリカント。物静かなブレードランナー。Kと呼ばれるその無表情な男を誰もが人造人間として見ようとするが、どうしても人間として見てしまう。

旧型レプリカント:ネクサスシリーズを「解任」という名で処分する職務を全うしているからだろうか。上司マダムが人間らしく接するからだろうか。電子彼女ジョイと慎ましく自宅で過ごしているからだろうか。それともこれがこの世界観の魅力だからだろうか。

人間には喜怒哀楽がある。愛や恐怖もある。だがこれらはレプリカントにもある。
しかし何かが足りないと我々はそこに人間とレプリカントの違いを見い出す。それは何なのか。

恐らく愛を意味し、テニス用語ではゼロを意味する「ラヴ」がその答えではないだろうか。我々は愛を感じないと、そこに人間であることを意識出来ないのかも知れない。

例えばKが移植された幼少時の記憶を自分のものだと信じたい気持ち。それは自分が何者であるかを証明したいという想いであると同時に、誰かと繋がっていたい、孤独から抜け出したいという、愛を求める願い。それらがライアン・ゴズリングの無表情ともいえる豊かな表情で表現されている。

また肉体を持たぬ電子彼女ジョイと心でしか繋がれないのは分かっている。だからこそジョイと同化したマリエットと肉体関係を持つ。でもそこにマリエットの心が見え隠れする。そんな複雑な3人の心の交わりを2人の女性が映像的に同化しながらも、動きがズレるという見事な映像で表現されている。

愛が様々な形で表現されていくたびに、我々はレプリカントが妊娠するはずがないという先入観を捨ててでも、あの遺骨がレイチェルであることを受け入れてしまう。Kがその息子であるかも知れないという偶然を願ってしまう。「ありえない」を「奇跡」に変えたいと願ってしまう。

だが、30年を経てもレイチェルの目は緑色だと即答できるデッカードの前では、ウォレスが目論むレプリカントによる生殖活動も「ありえない」から抜け出せない。「奇跡」も起こらない。

しかしジョイを失ったKには「奇跡」の意味が分かる。彼女が最後に残してくれた「愛してる」という言葉。彼女を失った喪失感。例えシステム上、怒りが込み上げてこないとしても、自分がレイチェルの息子ではなかったという虚無感が、娘の存在を旧型レプリカントと隠し続けたデッカードにアナ・ステリン博士を逢わせてあげたいという想いが、彼に愛の意味を体現させる。

前作で雨の日に「哀」と共に流れた「Tears in rain」が、35年の時を経て雪の日に「愛」と共に静かに降り注ぐラストシーン。

マリリン・モンローやエルヴィス・プレスリーのライブは映像データとして永遠に残すことが出来るが、その舞台を見た感動はデータとして残すことは出来ない。
同様にこの素晴らしき続編を見た感動もまた、データとして残すことなどは出来ない。

不穏と不安を煽る音楽で観客の心を掴み、照明と影を巧みに操り、漢字と日本語とハングルをワンポイントで使うことでで世界観を踏襲し、そして「人間性とは何か」というテーマを考えた者が深層心理で本当に見たかった物語を描いたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督。

改めて「人間性とは何か」を問うと、「愛のテーマ」を聞きたくなる。

深夜らじお@の映画館はこの続編もまた名作と評します。

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この記事へのコメント

1. Posted by BROOK   2017年10月29日 06:29
人間とレプリカントの“境界”を曖昧にした今作…
非常に濃密なストーリー展開に大満足となりました♪
映像も非常に良く描き込まれていたと思います。
2. Posted by kossy   2017年10月29日 09:27
人間らしさとは何かという描き方が良かったですね。
映像美に酔いしれると同時に、
ジョイが一番人間らしかったな〜などと感じました。
3. Posted by latifa   2017年10月29日 09:48
にゃむばななさん、こんにちは!
私も見てきました。
あんまり期待してなかったのですが、なかなか良かったです!

3人?(そのうち2人は、人じゃないけど)のシーンは、印象的でした。
キスシーンだけで終わってしまったのが、ちょっと残念、もうちょっと先まで見せてほしかった(すいません)
4. Posted by 源之助   2017年10月29日 12:11
こんにちは、
見終わって見ると良くも悪くもドゥニ・ヴィルヌーヴ作品になってましたねぇ。
私は好きですが人によってはあの冗長とも取れる間が気になるでしょう。

それにしても「人間性とは何か」、作品内で具体的に明示される訳ではないのに、
観てる此方には言葉にせずとも伝わってくるものがある、そんな映画でした。
5. Posted by にゃむばなな   2017年10月29日 23:04
BROOKさんへ

レプリカントと人間の違いが分からなくなる時代がすぐそこまで来ている。
そんなことさえも感じる映画でしたね。
ほんと、人間性って…難しいですなぁ〜。
6. Posted by にゃむばなな   2017年10月29日 23:05
kossyさんへ

ほんと、肉体を持たぬジョイが最も人間らしかったですね。
自分の感情と意見があり、表情も豊か。
こういう表現が出来てこそ、そこに人間性が見えるのかも…。
7. Posted by にゃむばなな   2017年10月29日 23:07
latifaさんへ

情事のシーンはあれが精一杯だったのではないでしょうか。
それ以上は映像的に2人の女性のリンクなども難しく…と考えると、
あそこまでの映像を作り上げたことでも凄いことだと思いましたよ。
8. Posted by にゃむばなな   2017年10月29日 23:09
源之助さんへ

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品は映画好きほど好まれる作品だと私は思うので、個人的にはこういう作品は好きです。

>作品内で具体的に明示される訳ではないのに、観てる此方には言葉にせずとも伝わってくるものがある

まさにこれですね。これがドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の凄さなのでしょう。
9. Posted by ノルウェーまだ〜む   2017年10月29日 23:32
にゃむばななさん☆
見事な作品でした。
35年経って作られた続編が、前作と同様、またはそれ以上に素晴らしい事って今まであったでしょうか!?
人間性の境界線が薄れる事への警鐘を鳴らしているかのようなこの作品、ラストは思わず泣いてしまいました。
10. Posted by にゃむばなな   2017年10月29日 23:44
ノルウェーまだ〜むさんへ

ローランド・エメリッヒなんて20年ぶりでも駄作しか作れなかったのに、それが35年ぶりでこのクオリティーの高さは凄すぎますよ。
そしてあの余韻を残すラストも前作同様に大人の心地よさを感じさせてくれましたよね。
11. Posted by yukarin   2017年11月01日 13:31
こんにちは。
観ていると人間とレプリカントの違いがわからなくなってきます。
人間性とは.....なかなか難しくて深い作品でしたね。
映像がとても美しく3時間近くの長丁場でしたが飽きることなく観られました。
12. Posted by にゃむばなな   2017年11月01日 23:50
yukarinさんへ

人間とレプリカントの違いが分からなくなる時代がそこまで来ているというのも恐ろしいですが、映画で描かれるような時代が来るのも怖いですね。
もう自分が本当の人間かどうかも分からなくなってしまいますもんね。
13. Posted by q   2017年11月05日 21:32
パラレルワールドで表現する世界感。富と貧の格差社会も描く。雪は「母なる大地」の意味かしらね・・・上手いなぁと
全体でアイデンティティーを求めるレプリカントかな。人間とレプリカントの間にある溝
ラストにかけて余韻。でしたね。
14. Posted by にゃむばなな   2017年11月06日 23:15
qさんへ

ほんと、いい余韻の残る作品でしたね。
やはり時代を超えても愛される作品の続編もまた時代を超えるのでしょうね。

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