2017年11月10日

『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』

IT己のペニーワイズに打ち勝て!
スティーブン・キング史上最恐小説の映画化。だがホラー映画としての怖さはあまりない。
しかしこの作品に触れた誰もがあの映画を思い出しながら、その先にある幼き頃の実体のないモノに対する恐怖を懐かしむだろう。
そう、誰もが己の心に棲まう赤い風船と共に現れるピエロと対決してきたのだと。

予告編がネットで解禁されてから24時間での再生回数が1億9700万回という史上最多の記録を作り上げたことでも話題になったこの作品は、スティーブン・キングの小説を'50から'80に変更したことで、ジュブナイル作品としても、またノスタルジー作品としても大きな成功を収めた映画だ。

だがホラー映画を期待して見ると、物足りなさを感じずにはいられない。OPでのジョージーが排水溝に引き摺り込まれるシーンや、博識の小太り騎士ベンが図書室で首のないゾンビに追い回されるシーン以外では、さほどゾクゾクすることがないからだ。

しかし吃音のビルが行方不明になった弟ジョージーを想う一方で、紅一点ベバリーが性的虐待を課す父に、喘息疑惑のエディが病気で朽ちていくことに、ラビの息子スタンリーが部屋に飾られた奇怪な絵に、転校生ベンが友達のいない現実に、黒人マイクが両親を火事で亡くした過去に、口達者なリッチーがピエロに怯える姿を見て、それが恐怖ではなく郷愁だと感じ始めた方も少なくなかったのではないだろうか。

子供の頃は誰もが想像力が豊かだ。ただ経験と知識の不足が招く限られた世界での自由を奪われた想像力の豊かさは、時にどんなものでさえも恐怖の対象に昇華させてしまう。夜中に一人でトイレに行くことが出来ないのも、そんな事例の一つだろう。

ではそんな恐怖に対して我々はどうやって対処し、また克服してきたのか。それは紛れもなく「逃げずに恐怖と向き合う」ことだろう。心の支えを作り、その恐怖に挑み、自らの勇気で成長を勝ち得たからこそ、我々は大人として今この時を生きているのだ。

この映画で描かれるルーザーズ・クラブの7人の少年少女もまた、誰もが自分の抱える恐怖に対して、掛け替えのない友人を心の支えにし、恐怖に打ち勝つという冒険を繰り広げている。
それは『スタンド・バイ・ミー』でリバー・フェニックスたちが死体を見に行くと冒険に出た日々と同じ。
だからこそ、年上不良グループで父親殺しのヘンリーが若き日のキーファー・サザーランドにどこかしら似ているようにも見えるのかも知れない。

そんな懐かしさに心を奪われる一方で、やはりこの映画で絶対に語らねばならないのはスウェーデンの名優ステラン・スカルスガルドの息子でもあるビル・スカルスガルドが熱演したピエロこと、ペニーワイズだろう。

不気味な笑みを赤い風船で隠しながらも、高笑いは一切せず、顔を横に振りまくりながら突進してくるあの気持ち悪さ。
悪事を繰り返す犯人として子供たちに退治されたのではなく、どんなトラウマにも変身出来る不快な存在だからこそ子供たちに排除されたと表現するのが似合うくらいの存在感は、現実世界でもピエロと赤い風船の組み合わせに拒否感を覚えさせるほどだ。

そして不思議なことにこのクリーチャーピエロがまだ生きているという終わり方が、またあの気持ち悪さを味わえるという快感に繋がってしまうのだから、EDロール前でこの作品が「第1章」と知らされた時の複雑な気持ちは何と表現したらいいものか。

血判の絆で結ばれた7人の若き騎士たちがペニーワイズと再び対決するのは数年後か、それとも定期的に悲劇が繰り返される27年後か。
その時、ポエムの騎士がキスで姫の心を射止めることは出来るのか。それとも別れのキスを忘れられない思い出にした騎士が姫の心を奪い続けているのか。

そんな思春期の男女関係も気になる素晴らしきノスタルジーなジュブナイル映画だ。

深夜らじお@の映画館は早くペニーワイズが…いや第2章が見たいです!

※お知らせとお願い
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acideigakan at 23:59│Comments(8)clip!映画レビュー【あ行】 

この記事へのコメント

1. Posted by BROOK   2017年11月11日 05:25
ホラーとしてはそんなに怖くはないのですが、
ストーリー展開は「スタンドバイミー」を彷彿とさせ、子供時代の青春を上手く描いていたと思います♪
そして、第2章は2019年公開ということなので、期待しています!
2. Posted by にゃむばなな   2017年11月11日 23:27
BROOKさんへ

さすがスティーブン・キング原作でしたね。
まさかホラー映画だと思って見たら、郷愁に満ちた作品だったとは…。
2019年公開の第2章が楽しみでなりませんよ。
3. Posted by ノルウェーまだ〜む   2017年11月12日 11:34
にゃむばななさん☆
前半の異様に怖いシーンが単に子供たちの感じる恐怖を映像化したもので、ホラーとしてでなくて、青春ものとして作ったという事であればなかなかの作品でしたよね。
誰もが体験したことのある、トラウマとの格闘。
己のトラウマを克服した大人たちは、次にどんな恐怖と戦うのでしょうか?楽しみです。
4. Posted by yukarin   2017年11月12日 20:48
こんばんは。
ドキドキしながら観に行きましたが、そんなに怖くはなかったですね。
ペニーワイズの動きが変で笑ってしまいました。
第二章ではどんな展開になるのか一応楽しみにしておきます 笑
5. Posted by にゃむばなな   2017年11月12日 22:55
ノルウェーまだ〜むさんへ

12〜13歳の少年少女たちの27年後はアラフォー世代。
思春期の子供がいてもおかしくない世代がどんな恐怖と戦うのか。
これもまたアラフォー世代としては楽しみですよ。
6. Posted by にゃむばなな   2017年11月12日 22:57
yukarinさんへ

ペニーワイズの動きは子供にはトラウマになるでしょうね。
27年後も同じ動きをしてくれるのでしょうか。
楽しみですよ。
7. Posted by ノラネコ   2017年11月13日 21:20
90年のTV版が結構好きなので、楽しみにしてましたが、予想を超える快作でした。
キングの両輪である青春と恐怖が実にうまくバランスしていましたね。
2年後の大人編はどこに力点を置いてくるのか、今からとても楽しみです。
8. Posted by にゃむばなな   2017年11月19日 22:53
ノラネコさんへ

ホラー作家でありながら、非ホラーの方が映画では成功しているスティーブン・キング原作だけに、このバランスの面白さは素晴らしかったですね。
2年後の続編が楽しみでならないですわ〜。

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