2017年12月07日

『gifted/ギフテッド』

ギフテッドメアリーがメアリーであるために。
7歳にして天才的な数学の才能を持った少女に与えるべきは、どこにでもある笑顔の絶えない普通の生活か、それとも世界に一つしかない特別な英才教育か。
優しさに溢れた演出が戻ったマーク・ウェブ監督の復帰作は、いろんな意味で「おかえり」という言葉が似合う作品だ。

歴史に名を残す直前で命を絶った姉が遺した姪のメアリーを、片目の猫フレッドと共に育てる元・哲学准教授で現在はボートの修理工をしている叔父のフランク。
生意気で気が強いけれど、無邪気で優しさに満ち溢れた姪っ子は、学校の担任教師ボニーだけではなく、近所の世話焼きロバータも、元数学者でもある実母イブリンも認めるほど、天才的な数学の才能を持っていることは分かっている。

けれど彼は決して姪っ子を特別扱いすることはない。だからどんなに周囲が勧めてもメアリーに英才教育を施すために飛び級をさせることもない。ただただ普通の子供と同じように育てたいと、今日もまたメアリーと喧嘩したり、笑顔でじゃれたり、手を繋いだりして一緒に過ごすだけ。

だがイブリンが裁判でメアリーの処遇を決めようと動き出してしまってから、彼は悩み始める。果たして特別な才能を持った姪っ子に必要なのは「普通の生活」なのか、それとも「特別な教育」なのかと。
答えが一つしかない数学を専攻してきたイブリンはその一つの答えに邁進するが、答えがあるとは限らない哲学を専攻してきたフランクはその正しき答えを探し苦悩する。

もちろんイブリンの言い分も正しい。けれどフランクの言い分も決して間違ってはいない。
ただ「超難問を解ける世界でたった一人」が「誰でも出来るインスタント麺さえ作れない存在」になった時、果たしてそれは幸せと言えるのだろうか。恋も愛も知らずに年老いて、歴史に名を残したから幸せだったと人生を振り返ることが出来るだろうか。

幸せの価値観は人それぞれではあるけれど、間違いなく「愛すること」と「愛されること」は誰にでも共通する最大の幸せだ。
特に実父に愛されていなかったと泣くメアリーに病院の待合室で見せた、子供が生まれた時の一般的な家族の喜ぶ様子は、まさに人生最高の幸せにして、愛を教えるにはこの上とない最高の教育でもある。

だから数学の才能を活かすために娘の恋愛さえダメにしたイブリンの行動は、母としては決して間違えとは言い切れないが、人としては決して正しいとは言えない。
対してフランクがメアリーに施す教育は、叔父としても人としても最低限正しいというものを模索し続けている。つまりフランクは基本的なことだけを教えているだけで、最終的な判断はメアリーに任せるという教育だ。

その教育が結実していたのが、イブリンが連れ出した大学での教授からの問題にメアリーが答えを出さなかった理由。年上の間違いを正すな、嫌われるから。

人は誰でも自分が優秀だと思い始めると、知らないうちに周りから嫌われ出す。
逆に他人が持っている自分よりも優秀なものを見つけ続けると、知らないうちに気配りが出来るようになり、自然と周りから好かれていく。

恐らくメアリーは成長すれば成長するほど、自ずと自分の能力を活かす道を選ぶだろう。周りもそんな環境を彼女に与えるだろう。
ただその時、周りが「優秀な少女のために」与えるのか、それとも「愛するメアリーのために」与えるのか。そのどちらが「幸せ」なのかは考えるまでもないだろう。

私も2人の姪っ子を持つ叔父として、フランクの苦悩から想いまで全てが共感出来ると共に、この映画を見て確信したことがある。
小さな子供に「愛」を教えることは、近くにいる大人にしか出来ないこと。才能を活かすかどうかは大人が考えることではない。本人が決めることだ。大人は大人しく情報提供するだけで十分なのだと。

深夜らじお@の映画館も姪っ子たちにこれからも愛とお小遣いを与えて、いつまでも好かれる叔父でいたいと思います。

※お知らせとお願い
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acideigakan at 12:00│Comments(8)clip!映画レビュー【か行】 

この記事へのコメント

1. Posted by BROOK   2017年12月07日 12:42
フランクの言い分とイブリンの言い分…どちらも正しいんですよねぇ…その部分を上手く描いていた作品だと思いました♪
そして、落ち着くべきところに落ち着いた結末だったのは良かったです。
2. Posted by yukarin   2017年12月12日 12:54
フランクもイブリンも間違ってはいなんですよね。難しいところです。
そのへんをとても丁寧に描かれていたのが良かったです。
そして片目の猫フレッドが本当に可愛い♪
3. Posted by にゃむばなな   2017年12月15日 15:41
BROOKさんへ

ほんと、落ち着くべきところに落ち着いてくれましたよね。
フランクもイブリンも決して間違ったことは言っている訳ではないのが難しいところでしたからね。
4. Posted by にゃむばなな   2017年12月15日 15:44
yukarinさんへ

あの片目猫のフレッドはいい味出してましたよね。
おませでズバ抜けて賢い少女にもピッタリの相棒でしたよ。
5. Posted by ノルウェーまだ〜む   2017年12月16日 12:07
にゃむばななさん☆
本当にそうですね!
数学的思考のイブリンの言い分も哲学的思考のフランクの言い分も正しいしというの非常に納得しました。
誰もがメアリーの為にと思っているのだけれど、一番大切なのは「愛するメアリーのために」ですよね☆
6. Posted by にゃむばなな   2017年12月17日 23:39
ノルウェーまだ〜むさんへ

そうそう、「愛する」メアリーのためにというところまで考えているかどうかで、一番いい答えに辿り着けるのでしょうね。
その過程に数学も哲学も関係ないのだと思いましたよ。
7. Posted by mig   2017年12月18日 20:58
なんか、昔見たようなちょっとありきたり感があるのでインパクトに欠けました。まぁまぁかなぁ、、、。
子役ちゃんは上手でしたね!
8. Posted by にゃむばなな   2017年12月25日 00:28
migさんへ

確かに既視感のあるストーリーではありましたね。
それでも個人的にはこういうストーリーは好きなんですよね。

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