2017年12月11日

『オリエント急行殺人事件』

オリエント急行殺人事件善と悪では線引き出来ないこともある。
イギリスを代表するミステリー小説家:アガサ・クリスティーの代表作でもある小説を、イギリスをこよなく愛する英国映画人:ケネス・ブラナーが映画化したこの作品は、名作と語り継がれる所以を丁寧に描く、これぞお手本となる名作の映画化作品。
ただ本当にそれで良かったのか?

タイトルは誰もが知っているも、内容は知らないという人も意外と多いこのミステリーの代表作。
実は私もその一人ということで、ここは教養も兼ねて映画を楽しませていただこうと思いながら見てみると、さすが映画好きになればなるほどイギリスを代表する映画人として真っ先に名前が挙がるケネス・ブラナー閣下。この名作を映画化するにあたっては、ハナから古典作品としてのテイストを存分に味わせてくれること。

つまり名作を時代に合わせて独自にアレンジするという手法を取るのではなく、名作が名作と言われる意味合いをしっかりと見せることで、地味ではあるものの、作品の魅力を最大限尊重しながら引き出すという、名作への敬意が大いに感じられること。

その一方でラチェット殺害が判明したくだりなどに代表されるように、モノクロ時代には出来なかった上からのカメラワークなど、随所に現代の技術を取り入れたり、オリエント急行が走る雪山の美しさを存分に見せるなど、現代のカラー映画だからこそのシーンも多い。

ただこの映画にはミステリー作品に重要なテンポがどうしても足りないと感じたのが残念なところ。もちろん名作への敬意が丁寧な演出に繋がっているのは、どのシーンを見ても伺えるうえに、その敬意がこれだけの名優を必要とした証でもあるということも分かる。
特にジョニー・デップを被害者であるラチェットに起用するところなどは一見贅沢にも思えるが、作品全体を考えると、この配役は見事としか言い様がない。

さらにジュディ・デンチにミシェル・ファイファー、ウィレム・デフォー、ペネロペ・クルスを始めとする、助演としての演技力が高く評価されている面々も、この作品の面白さと豪華さと素晴らしさを語るうえで外せない存在として大いに輝いている。

しかし上記にもあるように、この映画は名作の作品としての魅力を味あわせてくれるもので、映画としての面白さがそれに勝るかといえばそうではないところが、テンポが足りないと感じる要因になってしまっているのだろう。

だからこの映画を見てワクワクもしなければ、ドキドキもしない。古典的名作を楽しむという気持ちがなければ、人によっては睡魔に襲われる方もいるだろう。
乗客全員が犯人だったというオチに至るまでに、アームストロング事件と絡んでいる人物が多すぎるな〜ということは、犯人が複数いること、もしくは全員が犯人もありえるだろうという推測も初見者に容易くさせてしまうところも、少々勿体無いとも思えてしまう。

けれどポアロが謎解きをするシーンを見て思う。容疑者を全員トンネルの入り口に設置したロングテーブルに横並びに一列に座っている姿を見て思う。
あぁ、これは「最後の晩餐」を意味しているのかと。真犯人の座り位置はユダの場所に近いのではないのかと。

そう思えた時、ふとポアロの言葉が脳裏を過る。

「この世には善と悪しかない」

そうとは言い切れないことが人類の歴史ならば、裏切者のユダも悪だとは言い切れない。それをイエス・キリストはご存知だったのではないだろうか。

やはり名作はどんなに時代を経ても名作なのは、そんな奥深さを読者や観客に想像させる魅力があるからではないだろうか。

深夜らじお@の映画館もポアロみたいな髭を生やしてみたいです。

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この記事へのコメント

1. Posted by BROOK   2017年12月12日 06:16
タイトルは知っているものの、内容は全く知らないままでの鑑賞となりました。
浅いものから深いものまで刺し傷が複数あることから、犯人のおおよその見当がついてしまいましたね…。
それでも、展開的には面白く、最後まで見入ってしまいました♪
2. Posted by yukarin   2017年12月12日 12:49
オチは知っているのでドキドキ感とかはなかったのですが、これだけの俳優陣はすごいですよね。豪華列車にはぴったりでした。
3. Posted by ノルウェーまだ〜む   2017年12月14日 00:43
にゃむばななさん☆
私もタイトルだけ知っていた一人です。
豪華キャストに美しい映像、見事な演技バトルを楽しめました。
ただ、最後の審判を下すのは本来なら彼らでもポアロでも無いはず。
何とも釈然としない結末に悶々としております。
4. Posted by にゃむばなな   2017年12月15日 15:43
BROOKさんへ

さすが名作と謳われ続けている作品だけあって、最後まで楽しめるものでしたね。
犯人の検討がついてしまうのも、こういうネタをこれまでたくさんの作品がこの名作にインスパイアされてきたからという証でもあるのでしょうね。
5. Posted by にゃむばなな   2017年12月15日 15:43
yukarinさんへ

これだけの俳優を集めるって、まさに「ドクターX」級ですよ。
これもケネス・ブラナー閣下の為せる業なのでしょうね。
6. Posted by にゃむばなな   2017年12月15日 15:45
ノルウェーまだ〜むさんへ

最後の審判を下すのは、神であって、でも神でないのが現実なのでしょうね。
その辺りの描き方もまた難しいのでしょうね。
7. Posted by mig   2017年12月18日 21:00
こちらにも。
キャストは昔と一緒で豪華でしたね♪
ケネス監督作、ハズレなしです。
8. Posted by にゃむばなな   2017年12月25日 00:30
migさんへ

ほんと、豪華なキャストに豪華な映像でしたね。
ケネス・ブラナー閣下はしばらくこの路線で行くのでしょうかね?
9. Posted by ジョニーA   2018年01月12日 23:40
冒頭から、物のバランスを神経質なほど気にするポアロ。
善と悪はきっちり分けて然るべき!という、ある種の厳格さを
強調しておいてのその心境の変化、というテーマは解りやすくて
スッとしました。ただ、途中が如何せん長すぎましたよねぇーー。
ワタクシはっきり言って3回ほどうたた寝しました。あたかも
心地よい列車の揺れに身を任せてでもいるかのように・・・
10. Posted by FREE TIME   2018年01月13日 08:48
こんにちは。
年明けになってからの鑑賞しました。

以前、日本版にアレンジしたスペシャルドラマを見ていたので、犯人はわかっていたのですが、改めて違う役者で観てみると、殺人に至るまでの過程に衝撃を受けましたね。

11. Posted by にゃむばなな   2018年01月16日 23:39
ジョニーAさんへ

ミステリーとしての魅力に欠けているところが睡魔の原因かも知れませんね。
やはりミステリー作品にはミステリーの面白さを求めてナンボですからね。
12. Posted by にゃむばなな   2018年01月16日 23:39
FREE TIMEさんへ

この役者陣にてこの豪華さ。
まさに映画でしか味わえない魅力ではないでしょうか。

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