2018年03月02日

『15時17分、パリ行き』

15時17分、パリ行き15時17分、パリ行きに偶然乗り合わせたサクラメントの三銃士。
2015年8月21日、アムステルダムからパリへと向かう高速鉄道タリスの車内で起きた、イスラム過激派青年による銃乱射事件。その時、偶然その場に居合わせ、事件を解決に導いた3人の青年が本人役で出演するこの映画。
ただこれは単なる再現ドラマではない。間違いなく新しい映画だ。

御歳87歳のクリント・イーストウッド監督が新たな挑戦として作り上げたこの作品は、単なる史実の映画化ではない。大胆にも主役の3人だけでなく、あの事件現場に居合わせた乗客までもを本人役として出演させたうえに、実際に事件が起きた現場で撮影するという、まさに常識破りで前代未聞の映画だ。

しかし近年「ごく普通の人々に捧げた物語」を撮り続けるクリント・イーストウッド監督の演出は、演技の素人である彼らに「演技」ではなく「再現」を求めている。運命に導かれて、偶然にもこの事件に遭遇した彼らの「勇敢な行動」を際立たせるため、あえて一見退屈にも思えるイタリア旅行のシーンも長々と作っているのだ。

もしこれがプロの俳優による映画なら、恐らく誰もが「運命に導かれて」という部分を少々過剰な演出だと思ってしまうのではないだろうか。もしくはこの3人を特別な人間として見てしまうのではないだろうか。

だが小学生時代からはみ出し者同士の友情を育んできた小太りなスペンサー・ストーン、窓の外を眺めがちなアレク・スカラトス、機転の利くアンソニー・サドラーはどこにでもいる普通の人間だ。パラレスキュー部隊に所属出来なかったという「挫折」も、アフガンでGPSの入ったバッグを一時紛失するという「失敗」も、友の誘いに乗ってヨーロッパ旅行に出かける「友情」も、いわば誰の日常にでも起こりうることばかりだ。

だからこの映画を見ていると、不思議と彼らに親近感を覚える。と同時に改めて、無差別テロに遭遇した時に彼らのような行動が取れるかという自問自答も生まれる。

スペンサー・ストーンは落第したとはいえ、SEREを学び、柔術にも巡り会えた。奥行知覚の欠如も結果的には功を奏したかも知れない。だが彼のように自動小銃を構えたテロリストに向かって行くことが我々に出来るだろうか。犯人制圧後に即座に怪我人の手当てを行えるだろうか。

アレク・スカラトスはオレゴンの州兵で、しかも戦場を経験している。だがたったそれだけであの狭い車内で的確な判断を下せるだろうか。犯人制圧後に、友の心配ではなく銃弾の確保と残党の有無を確認するという冷静な行動が取れるだろうか。

アンソニー・サドラーは軍事訓練も受けていない、ただの大学生だ。だが戦う友のために素手でテロリストを殴りに行くという行動を咄嗟に取れるだろうか。犯人制圧後に止血用タオルの確保や怯える女性に寄り添うといった細かな気配りが出来るだろうか。

「その時」というものは、いつも突然やってくる。しかも一瞬の出来事だ。
だからこそ、その「突然」で「一瞬」の出来事にこれだけの勇気ある行動が出来る彼らは間違いなく「格好いい」のだ。男としてだけではない、人間として「格好いい」のだ。

そしてフランスのオランド大統領から勲章を授与される感動的なラストシーン。さすがにオランド大統領が本人役で出演はないだろうと思っていたところで、当時の映像に切り替わった時のあの違和感の無さに驚きつつ、ここであることに気付かされてしまう。

事件解決に協力してくれたイギリス人ビジネスマンであるクリス・ノーマンを含めた四銃士をこのまま母国へは帰したくないと演説したオランド大統領を囲むように立つ彼らを誇らしく思えたこと。つまり彼らを身近に感じたということだ。

それこそ、クリント・イーストウッド監督がこの映画で伝えたかったことだろう。これは誰の日常でも起こりうる現実だと。何も特別な出来事でもない実話だと。
そして努力した者にだけを運命は導いてくれるのだと。

深夜らじお@の映画館は予告編でも流れていた軍事訓練での教官の言葉が好きです。詳しくは追記で。

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自分の過去を振り返ると、何を優先してきたかがわかる。

誰もが困難を避け、傷つくことから逃げてしまうが、
向き合わないとわからないこともある。

夢を叶えようとすれば、必ず“変化”は訪れる。

更なる高みを目指し、限界まで自分を追い込むのだ。

そして初めて、眠っていた能力が呼び覚まされる。

近道を探すな。本当の自分を信じろ。

君にならできる。

この記事へのコメント

1. Posted by BROOK   2018年03月02日 14:52
やはりイーストウッド監督作品にはハズレが無いような気がします。
今作は賛否両論あるようですが、私は面白かったです♪
人間ドラマをきちんと描いていることで、テロ事件がかなり活きてきたような感じですね。
その人間ドラマ部分が今作ではかなり重要だと思います。
2. Posted by にゃむばなな   2018年03月02日 23:33
BROOKさんへ

この作品は「描く」という概念をこれまでとはまた違った形で表現していますよね。
従来の映画の「描く」を期待しちゃった方には不評かも。
でも87歳がこんな挑戦的なことをすることに、我々ももっと学ばないとあきませんね。
3. Posted by mig   2018年03月03日 00:10
こんばんは〜。試写で見たんですが、私はいまいちでした、、、
>もしこれがプロの俳優による映画なら、恐らく誰もが「運命に導かれて」という部分を少々過剰な演出だと思ってしまうのではないだろうか。もしくはこの3人を特別な人間として見てしまうのではないだろうか。

確かに実在の3人が演じたから逆に面白い試みではありましたけど、、、、
4. Posted by にゃむばなな   2018年03月03日 00:48
migさんへ

私はこの試みを好意的に受け取った最大の理由は、やっぱり最後のオランド大統領の演説にすんなりと繋げたところかなと。
確かに英語が分かる方には素人の芝居はキツいと思いますが。
5. Posted by onscreen   2018年03月03日 23:26
私はダメダメ派です。

本人が出たから、ではなく台本が....


6. Posted by にゃむばなな   2018年03月04日 00:14
onscreenさんへ

まぁ映画は出逢った時のタイミングですからね。
脚本が自分に合わなかったということも、たまにはありますよ。
私もしょっちゅうありますから。
7. Posted by onscreen   2018年03月04日 09:53
ご理解いただき、ありがとうございます!
8. Posted by にゃむばなな   2018年03月07日 23:22
onscreenさんへ

映画ファンなら誰しもが通る道ですよ。
9. Posted by FREE TIME   2018年03月10日 19:08
こんばんは。
てっきり「ユナイテッド93」みたいな映画なのかと思っていましたが、ドキュメンタリ形式っぽい内容の映画でしたね。
テロはいつどこで発生してもおかしくないですが、一方でテロを食い止める英雄に誰もがなれる可能性を持っていると言ったメッセージをイーストウッド監督は伝えたかったのだと思います。

もし、自分がテロ現場に居合わせてしまったらどうなるか?
うーん、想像できません。
10. Posted by yukarin   2018年03月13日 10:28
キャストのほとんどが本人が出演という作品はなかなか無いですよね。
役者さんではないのに演技も上手で観ていても違和感がありませんでした。
いつ自分がその場に居合わせるかわかりませんもんね...でも自分はどういう行動ができるのかは想像できませんが...
普通じゃない作品をつくってしまうイーストウッド監督はやっぱりすごいなと思います。
11. Posted by にゃむばなな   2018年03月13日 22:52
FREE TIMEさんへ

ドキュメンタリー形式に近いけど全然違う、新しいタイプの映画でしたね。
テロ現場だけでなく、普段の生活でもトラブルに見舞われた時、こんな風に行動できる人はやっぱり凄いと思いますよ。
12. Posted by にゃむばなな   2018年03月13日 22:59
yukarinさんへ

87歳で常に挑戦を続ける。
テロ現場に居合わせたあの3人も凄いですけど、クリント・イーストウッド監督もまた凄い。
こういう新しい映画をこれからもまだ作り続けるのでしょうね。
13. Posted by latifa   2018年07月27日 13:38
にゃむばななさん、こんにちは!
台風が接近してきているようで、もう日本は災害だの台風だの大変なことになってますね・・・。

ところで、この映画。
普通の人が、ヒーローに、っていうのが良く分かって、とても感慨深い作品になっていましたね。
彼らの少年時代に、彼らのママさんたちに、すっかり感情移入してしまいました。
14. Posted by にゃむばなな   2018年07月28日 23:06
latifaさんへ

誰かがやらなければならない。でも誰にでも出来ることではない。
本物のヒーローってそうやって生まれるのでしょうね。
この映画を見ていると、そんな気がしましたよ。

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