2018年04月29日

『ザ・スクエア 思いやりの聖域』

ザ・スクエア思いやり。それはエリート層が好む綺麗事。
第70回カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞したスウェーデン映画は、風刺劇としての面白さはあるものの、残念ながら見る人を選ぶタイプの映画だ。しかもテーマに沿っているとはいえ、話が多すぎるうえに、話があちらこちらに飛ぶ飛ぶ。
故に、そこが評価の分かれ目か。

美術館のチーフ学芸員でもあり、良き父親でもあり、慈善活動にも理解のあるクリスティアンは絵に描いたような「綺麗事が好きな」エリート層の人間だ。
インタビューを受ける席でも美術館に重要なことは資金だと、冗談も交えずに言ってしまうあたり、彼は根は真面目なのだろうが、ユーモアの意味を理解していなかったりといった、他人を思い遣る部分が欠けている人間だ。

そんな彼が人助けの合間に財布とスマホを盗まれたことで、徐々に偽善的な面がゆっくりと剥がされていく。
部下の黒人青年が探してくれたGPSにより、窃盗犯が潜むマンションの場所が見つかれば、彼は全戸に脅迫文を投函する。犯人が誰か分からないが、このマンションに住んでいるのは間違いないのだからという勝手な理由で。

ただ全戸に脅迫文を投函するなんて発想は、他人への迷惑云々を考えると、常人には出来ないものだ。普通は自分のスマホに発信しながら全戸を回ればと、あまり多くの人に迷惑を掛けない方法を探すからだ。

だが彼は無意識のうちに他人を見下しているタイプのエリート層。だから基本的には自分本位。
本来ならチーフ学芸員として、他人への思いやりを促すモニュメント「ザ・スクエア」の宣伝方法についても会議に出席すべきなのに、脅迫文のせいで親から犯人扱いされたと文句を言いに来た移民少年の対応で、その会議にも全く顔を出さない。

その結果、物乞いの少女を爆破するというSNSでの過激な宣伝に批判を浴びたことで、ようやく事態の大きさを知るのだから、本当に上辺だけの綺麗事が大好きな人間に見えてしまう。

しかし彼は根は優しい人間であり、2人の娘の良き父親でもある。学芸員という仕事を失い、ようやく自分の過ちに気付いた彼が脅迫状全戸投函のマンションへ、あの移民少年に謝罪するために訪れる。その時に幼い娘2人が父親を想って謝罪に付いていく姿は、逆に大人の情けなさも感じて切ない。しかもその移民少年は引越しして会えず、謝罪も出来ずの結果で終わるのだから。

とまぁ、本筋の話は絞ればそれなりに「風刺の効いた話」だとは理解出来るも、この映画の評価の分かれ目は、やはりその本筋とは少し離れた様々なエピソードの存在だろう。

チンパンジーを飼っている女性とのセックス後に使用済みコンドーム争奪戦とか、サル真似人間がセレブのパーティ会場で暴れまわるも基本的に誰も事態が深刻化するまでは助けに行かないとか、コンビニで玉葱抜きのサンドをマトモに発音出来ないスウェーデン語で要求してくる物乞いとか、様々な社会風刺の効いたエピソードはそれなりの面白さがあるが、それが本筋とさほどいい化学変化を起こしていないようにも感じてしまったのは、この手の作品を私があまり見ていないからかも知れない。

ともあれ、これは見る人を選ぶ作品であるうえに、予告編で「爆笑」という文字が躍っていても、実際の劇場は至って静かだった作品だ。
それを踏まえて、ご興味のある方はご覧になられてみてください。

深夜らじお@の映画館もまだまだ映画の修業が足りておりません。

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acideigakan at 23:59│Comments(2)clip!映画レビュー【さ行】 

この記事へのコメント

1. Posted by ノラネコ   2018年05月29日 21:53
爆笑というよりも、なんだかわからないけど、すごく居心地の悪い笑。
この監督の前作もそうだったのですが、人間の心にある指摘されたくないネガの部分を突いてくるのですよね。
知りたくなかった自分に気づいてしまった主人公を見て、結構身につまされた気分でした。
2. Posted by にゃむばなな   2018年05月31日 23:24
ノラネコさんへ

居心地の悪い笑いというのは、言い得て妙ですね。
まさにその通りだと思います。
その笑いは好き嫌いが分かれてしまいますもんね〜。

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