2018年05月06日

『リズと青い鳥』

リズと青い鳥リズと青い鳥。ずっとずっと一緒だと思ってた。
京都アニメーションを代表するアニメ作品「響け!ユーフォニアム」の第二楽章であり、スピンオフであり、美しく切ない青春映画であり、完成度の高い吹奏楽映画でもあるこの作品を見て思う。
この素晴らしき作品を見逃さなくて良かった。演奏で涙する感動を知ることが出来て良かったと。

北宇治高校吹奏楽部でオーボエを担当する鎧塚みぞれは他人との交流が得意ではない物静かな少女。その長く伸ばした黒髪は彼女の実直さを、白い靴下は自分を持たぬ、誰かに染められる性格を表している。

フルートを担当している傘木希美は明るく活発で誰からも慕われる少女。その歩く度に躍動するポニテは彼女のフットワークの軽さを、黒い靴下は自分の意見を持った、誰にも染まらぬ性格を表している。

対照的でありながら親友でもあるこの2人。だがTVアニメを見ていた方は憶えているだろう。希美は1年生の時に練習に不真面目な3年生に反発して退部し、滝先生の顧問就任で息を吹き返した吹奏楽部に復帰を望むも、みぞれの精神状態を考慮してコンクール終了までそれが叶わなかったことを。

みぞれは唯一の親友である希美を友情以上の感情で見ている。だがそれは愛情というよりも一方的な依存。だから希美が自分の全てである彼女には童話「リズと青い鳥」でのリズの気持ちが理解出来ない。大切な人と別れるという決断をする気持ちが理解出来ない。

一方で希美はみぞれを親友として大事に想うも、決して特別扱いはしない。みぞれの友情以上の感情にも応えない。ただひたすら親友が自分以外とも交流を持つことを待っている。だから本当は分かっているはずなのに認めたくない「とある事実」から無意識に目を逸らしている。

「リズと青い鳥」を演奏するためには、みぞれのオーボエと希美のフルートの掛け合いが重要なのに、2人の気持ちの僅かなズレが音に現れてしまう。
それをトランペット担当の高坂麗奈にみぞれは指摘されてしまう。その高坂麗奈とユーフォニアム担当の黄前久美子によるセッションに、希美は自分たちの心のズレを認識させられてしまう。
そしてみぞれは新山聡美先生から音大進学を勧められ、希美はそのことに静かに嫉妬してしまう。

ただこの映画は、そんな徐々にすれ違ってしまう希美とみぞれをとても優しく描く。
特に個人的に好きだったのは、みぞれを心配する吉川優子と見守るだけにしている中川夏紀の部長副部長コンビの描き方。TVアニメを見ていた方ならこの2人の性格を知っている分、希美とみぞれだけではない、この3年生4人の「本人の前では言葉にしない」優しさ溢れる友情をより楽しめるのではないだろうか。

だからこそ、リズの気持ちだけではなく、青い鳥の気持ちを知ったみぞれが演奏する「リズと青い鳥:第3章 愛ゆえの決断」に誰もが心を震わせ、涙するだろう。
大切だから、ずっと手を握っていたい。けれど本当に大切だから、その握った手を解かなければならない。そのみぞれの精一杯の決断が宿った演奏はまさに圧巻という言葉でしか表現出来ない。

だが「愛ゆえの決断」をしたのはみぞれだけではない。親友と自分との実力の差を思い知らされた希美も同じく精一杯の決断をしている。
ただ彼女は演奏では表現しない。いつも通りの明るい笑顔で表現する。だから図書館で借りる本が小説と過去問題集というシーンはとても切ない。

人は皆違う魅力を持っている。だから性格の差を実感させられる。才能の差を痛感させられる。でもその差を受け入れ、愛することが最も大切なこと。

みぞれの白い靴下は何でも描くことの出来るキャンバス、でも何を描いていいのか迷うキャンバス。
希美の黒い靴下は描ける色が限られているキャンバス、でも何を描くかを決めやすいキャンバス。

そんなメタファーを感じながら思う。
いつか希美が髪を下ろし、みぞれが髪を括ってポニテにした時、この2人はどんな笑顔で語り合うのかと。
きっと今までの2人が見たことのない笑顔がそこには咲き乱れるのだろう。

でもそれは希美とみぞれが高校を卒業して、別々の人生を歩み始めてからのお話。
この映画では描かれない、この映画を見た方の心の中で描かれるお話だろう。

深夜らじお@の映画館はあえて「リズと青い鳥」の童謡シーンはセリフなしで見せるという演出でも良かったと思います。本田望結嬢の素晴らしき一人二役には驚きましたけど。

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この記事へのコメント

1. Posted by ノルウェーまだ〜む   2018年05月07日 22:55
にゃむばななさん☆
TVアニメもご覧になっていらっしゃったのですね!?それならば尚一層深く胸に響いたことでしょう。

演奏は本当に圧巻で、私も胸が震えてだーだー涙が出ちゃいました。
私はこの作品が初だったのですが、十分伝わってきて、心に残る作品となりました。
2. Posted by にゃむばなな   2018年05月08日 23:13
ノルウェーまだ〜むさんへ

TVアニメでは脇役だった2人をメインにすることで際立つシーンが凄く多いなと思えた作品でしたよ。
そしてそれがまたいいんですよね。
だからこそのあの演奏シーンの素晴らしさ。
音楽で泣けるってこういうことなんですね〜。
3. Posted by ノラネコ   2018年05月12日 00:14
TVアニメのスピンオフとしてはかなりの異色作ですが、良い意味で驚きの作品になりました。
二人の少女の繊細な心の物語にすっかり魅了されました。
オリジナル劇場版の第二弾も楽しみですね。
4. Posted by にゃむばなな   2018年05月13日 22:41
ノラネコさんへ

全く別作品のような雰囲気も醸し出しながら、やっぱりTVアニメのスピンオフという範疇を抜け出ない。
この微妙なところがいいですよね。
TVアニメを見ていた方も、そうでない方も楽しめることも素晴らしい作品でしたよ。

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