2018年05月12日

『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』

フロリダ・プロジェクト子供たちの無邪気な笑い声こそ、全てを幸せにする魔法。
小さな子供が身近にいる方にとっては、これほど愛おしい映画はないだろう。これほど切なくなる映画もないだろう。
そしてパステルカラーの建物でさえも、フロリダの大きな空と同じように美しく見えてしまう。そんな真夏の魔法にかけられた映画もないだろう。

いつの時代も無邪気な笑顔が絶えない子供はどんな場所でさえも、どんな環境でさえも、全て遊び場に変えてしまう。
フロリダ・ディズニーワールドのすぐ隣、「マジック・キャッスル」という、紫のパステルカラーが印象的な安モーテルで暮らす6歳の少女ムーニーにとっても、その貧困層が日々の生活に四苦八苦する世界も、スクーティーやジャンシーといった友達とならば、あらゆる場所が遊び場。

ただムーニーが暮らす世界は大人目線で見ると、あまり教育上よろしくない環境だ。グリーンのパステルカラーヘアーで全身タトゥーだらけのシングルマザー・ヘイリーは失業中で労働意欲もなさそうなうえに、食事といえばスクーティーの母親の職場からもらってくる栄養に偏りがあるものばかり。
唯一、モーテルの管理人であるボビーが厳しくも優しく見守っていてくれる以外は、大人としては「子供のためにも」一日でも早く改善すべき環境だ。

しかしフロリダの大きな青い空にはムーニーたちの屈託のない笑い声が響く。子供たちにとっては、どんな環境であれ、楽しければそれで幸せなのだから。
モーテルの電源を切ってしまうこと、唾を吐いて汚した車の掃除でさえも遊びに変えてしまうこと、そこでジャンシーという新しい友達を作ったこと、プールで日光浴をする熟女のトップレス姿を遠くから眺めてはケタケタ笑うこと、牛のいる草原「サファリ」や空き家が並ぶ住宅街へ冒険すること。
その全てが楽しくて仕方ない様子が、若干7歳というブルックリン・キンバリー・プリンスの演技なのか、素の表情なのか区別のつかない姿から垣間見れる。

でも空き家を燃やしてしまった少女がブサイクな顔で写メに収まるくだりから、子供たちの笑い声が徐々に少なくなっていく。
その原因を作っているのは、まさしく無責任な大人、つまりはヘイリーの存在だ。

大人は子供に対して「優しい愛」だけを与えていればいい訳ではない。時に「厳しい愛」も与えてこそ、そこで初めて子供たちの無邪気な笑い声は守られる。
なのにヘイリーは子供の僅かな感情さえも見逃し、火事のことについては何もムーニーに問い質さない。子供の前でも平然とスクーティーの母親に悪態をつく。そして生活のためとはいえ、娘を風呂場に隔離したうえで売春を行う。

逆にあれだけヘイリーに追い出すぞと警告していながら、常にこの母娘を優しく見守っている管理人のボビーは、まさに大人が子供に対してすべき手本のような存在だ。
だからこそ、時にヘイリーにも厳しく接する。ムーニーのことをきちんと考えろと。でも何だかんだ言っても、この母娘のピンチの時にはすぐに駆けつけてきてくれる。

けれど児童福祉局が来てしまっては、ボビーにもムーニーを守ることは出来ない。警察が来てしまってはヘイリーを守ることも出来ない。
確かに大人の目線で見れば、ムーニーを保護してマトモな環境下で暮らさせることが賢明だが、大好きな母親と大好きな友達と一緒にいることが何よりも幸せな少女の目線で見れば、これほど不幸なことはない。ジャンシーの所へ助けを求めに行って泣くのも当然だ。

ただ、そのムーニーに対し、それまで控えめだったジャンシーが意を決して取った行動は予想外でありながら、不思議と自然に涙が溢れてくる。
2人の少女がディズニーワールドへと入り、そのまま振り返りもせずにシンデレラ城へと走っていくシーンで映画が終わることに少々呆気に取られながらも、不思議とEDロールでもいい余韻に浸っていられる。

その理由はいったい何なのだろうか。

笑顔の絶えない夢の国を目指して、文字通り現実逃避という選択を行った少女たち。
その姿を見て大人として考えることは何か、すべきことは何か。

子供たちの無邪気な笑い声という魔法から覚めた大人にはなるな。
心が幸せで満たされる魔法をかけてくれる小さな魔法使いを守ることこそ、大人の役目ではないだろうか。青い空だけではない、夕陽も曇り空も大きく感じるフロリダの空がそう教えてくれている。

深夜らじお@の映画館は表情の豊かさが凄いブルックリン・キンバリー・プリンスを見逃すのはあまりにも勿体無いと思いますので、是非みなさんこの映画をご覧あれ!

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acideigakan at 23:59│Comments(2)clip!映画レビュー【は行】 

この記事へのコメント

1. Posted by ノラネコ   2018年05月17日 23:06
見ていてだんだんと、アメリカ版の「火垂るの墓」に見えてきました。
ムーニーがせつ子で、ヘイリーが清太。
大人の苦境を子供が知らないで、ずっと天真爛漫なのが切ないです。
ラストはまた「テルマ&ルイーズ」と「パンズ・ラビリンス」を思い出しちゃって。
あの子達には現実に夢の国を見せてあげたいなあ・・・
2. Posted by にゃむばなな   2018年05月22日 23:17
ノラネコさんへ

『火垂るの墓』『テルマ&ルイーズ』『パンズ・ラビリンス』
確かにこの3作品に通ずる魅力がありましたよね。
ほんと、あの子供たちには夢の国を現実世界で見せてあげたいですよ。

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