2018年06月21日

『空飛ぶタイヤ』

空飛ぶタイヤ120分では物足りない!
さすが池井戸潤先生原作の面白さだ。少しずつしか進まない物語の展開といい、魅力的なキャラクターたちの掛け合いといい、どれも面白いうえに、赤松社長を演じる長瀬智也がとにかく男気溢れるほどに格好いい!
ただ熱のない演出と120分の尺では、物足りないという感想が強く残ってしまうのが残念無念。

とある主婦の命を奪ったトラックの脱輪事故は整備不良だったのか。経営の基本は社員を大事にすることを是とする赤松社長は悩む。
しかしどこまでも社員を信じる熱い男である彼は、この若き社長を慕う赤松運送の社員たちからの情報を基に一つの結論に辿り着く。これはトラックの構造上の欠陥による事故、いや事件ではないのかと。

製造元のホープ自動車はリコール隠しをしている。これに赤松運送からのクレーム担当にあたっていた販売部の沢田課長も気付き始める。小牧や杉本といった社内で信用の出来る仲間からの情報を集めるも、人命よりも利益を優先する大企業の内部には厚い壁が何枚も立ちはだかり、リコール隠しという事実を隠蔽しようとしている。

大企業に対し、外側から戦いを挑む熱き男・赤松社長と、内部から戦いを挑む冷静な男・沢田課長。先の展開も読めない、様々な登場人物も入り乱れる。そんな池井戸潤先生の世界観は、やはり「半沢直樹」などと同様にじっくりと見たくなるものだ。

だがこの映画の尺は120分。あまりにも短すぎる。
せめて180分。本音をいえば、連続ドラマで見せてほしい。

そう、池井戸潤作品は映像化すれば見応えのある作品に昇華するからこそ、逆に本木克英監督の冷静に見せる演出は120分で見せ切る映画には似合わない。この手の演出で見せるなら、やはり3時間越え、もしくは連続ドラマだ。

特にそれを強く感じるのは、整備不良を疑われ、仕事が激減していく赤松運送に倒産寸前という空気が全く感じられないうえに、赤松社長が調査のため社用車で全国を飛び回る資金もどこから捻出したのかも不明のままなことや、沢田課長が人事異動による村八分を受けても閉塞感が感じられないうえに、証拠集めのために犯罪スレスレのことをしてもスリリングな空気が流れないことといった、彼らが追い込まれていくという怖さがなかったことだろう。

また被害者遺族の柚木が、警察や国交省といった公的機関が赤松運送の整備不良を認めていない状況下で民事訴訟を起こすというのも、全てを描き切れていないこの映画においては逆に話の腰折りにも見えてしまう。

さらにその陰の活躍がほとんど描かれていなかったホープ銀行の融資審査担当・井崎に関しては、元彼女でもある記者の榎本から情報を得ているとはいえ、最終的には上司である濱中の方が見事な根回しという陰の大活躍をしていたとしか見えなかったのも残念。

つまりこの映画は尺と演出のバランスがよろしくないのだ。確かに面白い作品ではあるが、それは原作が面白いのであって、映画はその面白さをどこまで引き出せているかという面において、やはりこの映画の場合は物足りないという答えにしか辿り着かないのだ。

短い尺には短い尺用の演出がある。あざとさ、熱のある演出、細かい編集、必要最小限の人物への焦点。それらが面白い作品を面白い映画にするのだ。

だがこの映画における演出は長い尺用のもの。じっくりと見せるという演出は、3時間越えの映画や連続ドラマでこそ、その威力が存分に発揮される。

赤松運送に対する銀行融資で2行が火花を散らすシーンも、もっと見たい。
群馬の野村や富山の相沢が赤松にその想いを託すというシーンも、もっと見たい。

外から戦う赤松、内から戦う沢田、陰から戦う井崎。その3者の想いが結実する一点を満を持して迎えるというよりも、唐突にホープ自動車への捜査で大逆転劇を迎えるというのも、何だか勿体無いというか、物足りない。

やはり池井戸潤作品は短い尺である単発映画には不向きなのだろう。

けれど、そんな映画の中で一際目立っていた熱き男を熱演した俳優・長瀬智也を見て思う。
見た目以上に中身が格好いい、まさに男が惚れる男。そんな社長と一緒に働ける人生を歩みたい!

深夜らじお@の映画館は先日の加計学園広報担当者の地元記者以外お断りの態度や昨今の日本大学の悪質タックル問題に対する態度を見ていると、どうしても彼らがホープ自動車社員のように見えてしまいます。

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acideigakan at 19:00│Comments(4)clip!映画レビュー【さ行】 

この記事へのコメント

1. Posted by BROOK   2018年06月21日 20:31
やはり120分では足りませんよね。
上手く纏めてはあったと思うのですが…。
既にWOWOWでドラマ化されているので、そっちも気になっています。
2. Posted by にゃむばなな   2018年06月24日 00:02
BROOKさんへ

やはり池井戸潤作品は映画向きではないのでしょうね。
ドラマという時間をたっぷり使ってじっくり描いてこそ、映像化の意味がある作品だと思いましたよ。
3. Posted by FREE TIME   2018年07月01日 21:27
こんばんは。
まさに池井戸作品の王道を行くストーリーでしたね。
結末がわかっていながらも、そこに至るまでの過程に一波乱もふた波乱もあるので楽しめます。
でも、長編小説が原作だけに120分では足りなかったようですね。
前後編にした方が、もっと中身の濃い作品に仕上がっていたと思います。
4. Posted by にゃむばなな   2018年07月04日 23:28
FREE TIMEさんへ

ほんと、前後編にしなかった理由がよく分かりませんでしたよ。
多分、大人の事情なんでしょうけど、こういう作品にそんな事情は存在してほしくないですよね。

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