2018年07月20日

『未来のミライ』

未来のミライ細田守監督よ、映像作家に戻れ!
初夏の暑苦しさ、日没前の涼しげな淋しさ、これから始まる本格的な夏への期待感。細田守監督作品には欠かせない要素が帰ってきた!
それゆえにさりげない日常の大切さがまだ戻ってきていないことに淋しさを感じずにはいられない。
てな訳でここからは完全ネタバレで参ります!

4歳児のくんちゃんに妹が出来た。大好きな母親を始め、家族の愛情を新参者に奪われた第一子が「赤ちゃん返り」をするのはどこの家庭でもよくある話。
そんな嫉妬に狂う4歳児が建築家で子育てや家事には頼りない父親がリフォームした家の中庭で異世界に迷い込むことで少しずつ成長していくというお話は、とても心温まるものだ。

しかしラベンダーの匂いを嗅いでタイムリープするというような分かり易さがないため、中盤までくんちゃんがご機嫌斜めになった時に中庭に降り立つと異世界に迷い込むという法則になかなか気づくことが出来ない。

加えて中庭異世界で出逢った「ゆっこ王子様」「未来のミライちゃん」がお雛様お片付け大作戦でくんちゃんの世界に入り込んでしまうのに、子供の頃の母親や戦後の若かった曾祖父に出逢うくだりはくんちゃんがタイムリープするという統一感のなさも、どうしても作品のテーマを深掘り出来ていないのではないかという疑念と違和感を感じずにはいられないのだ。

要はくんちゃんが異世界に迷い込むたびに、何かしらを学んで帰ってくることで成長していくことがこの物語の主軸なのだから、お雛様お片付け大作戦はくんちゃんが父親をどうにかして動かすべきだ。
幼き母親と出逢って靴に願い事を入れる手法を覚えたことや、馬やバイクに乗せてくれた曾祖父の「遠くを見ろ」という言葉を信じて補助輪なしの自転車に乗れるようになったように、くんちゃんが自分の力で成長していくべきなのだから。

終盤での高校生になった自分との出会いから続く独りぼっち専用新幹線に幼き妹を乗せまいと奮闘する様も大きな成長のはずなのに、その結果が自分が未来ちゃんのお兄ちゃんであるというだけなのも少々淋しい。大事な家族の一員であり、大事な妹というところまで掘り下げて欲しかった。

だからなのか、やはり気になるのはくんちゃんが未来のミライちゃんと共に家族の成り立ちを上空から眺めるくだりでの、ミライちゃんのナレーションが蛇足に感じることだ。
自転車に乗ることに苦労した幼き頃の父親、命の大切さに心を痛めた幼き頃の母親、くんちゃんが生まれる前にもらわれてきた愛犬ゆっこ、そしてマトモに走ることも出来なかった曾祖父が曾祖母と徒競走をしたという馴れ初め。

そのどれもを言葉なしに音楽と映像だけで見せ切ることは細田守監督なら出来たはずだ。『時をかける少女』を見直しても分かることだが、さりげない日常や仕草に意味や心情を持たせるという演出をしてきた実力派監督だからこそ、ファンはそんな監督の復活を心から待ち望んでいるのだ。

スタジオ地図を立ち上げて以降、細田守監督作品から「さりげない日常や仕草に意味や心情を持たせるという演出」も「初夏だからこそ感じる淋しさや楽しさ」は影を潜めてきた。
だがこの作品で後者の「初夏だからこそ感じる淋しさや楽しさ」は戻ってきたからこそ、次こそは前者も復活し、細田守監督らしい細田守監督作品を是非見てみたい。

ちなみに私も長子なので赤ちゃん返りをしていたそうで、そのこともあってか妹夫婦に2人目の子供が生まれてからは、妹夫婦が下の娘に手が掛かっている時は叔父の私が上の姪っ子と遊び、妹夫婦が上の娘の勉強を見ている時は私が下の姪っ子とお勉強をするという臨機応変な子育て応援をしているが、いやはや子育てって本当に大変だなと思うと、改めて両親には感謝感謝であります。

深夜らじお@の映画館はスタジオ地図を設立する前の細田守監督作品の方が好きです。

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acideigakan at 23:45│Comments(8)clip!映画レビュー【ま行】 

この記事へのコメント

1. Posted by BROOK   2018年07月21日 05:30
映像は細田監督作品らしさがあり、とても綺麗だったのですが…
ちょっと展開に難があったように思います。
中庭から異世界に迷い込む…なぜそうなるのかの説明というか設定がちょっと強引過ぎたように感じますね。
あくまでくんちゃんの成長物語だとしても、そこはきちんと描いて欲しかったです。
2. Posted by にゃむばなな   2018年07月22日 22:42
BROOKさんへ

あの樫の木がこの土地に古くからあるとか、そういう設定説明だけでも十分だったのに、なぜにそれをも省いちゃったのでしょうね?
そこらへんは勿体無いなぁ〜と思いましたよ。
3. Posted by ジョニーA   2018年07月24日 02:45
もっと単純に、「くんちゃんが未来のミライちゃんと一緒に、ひい爺ちゃんとひい婆ちゃんの仲をとりもちに過去へ・・・」みたいな話で良かったような。あ、それだとただの「バック・トゥ・ザ・フューチャー」か。。。
4. Posted by FREE TIME   2018年07月26日 22:42
こんばんは。
構成自体は良かったと思いますが、過去と未来を行き来する場面では、本当に一貫性がなかったのが残念でしたね。
上映時間も短かったし、ちょっと思っていたのとは違う作品でした。
5. Posted by ノラネコ   2018年07月27日 00:51
いやー、本作こそ細田守の一番ピュアな作家モードでしょう。
「おおかみこども」までの彼は雇われ監督で、奥寺佐渡子のブーストの効果も得てるわけですからね。
独立した今こそ自分の作りたいものを存分に作っていて、今までの作品はむしろ誤解されていたのだと思います。
たぶん、以前のような細田守は二度と戻ってこないんじゃないかなあ。
6. Posted by にゃむばなな   2018年07月28日 23:01
ジョニーAさんへ

確かに、それだとまんまですね。
でもそれくらいベタでも良かったのにって思いますよ。
7. Posted by にゃむばなな   2018年07月28日 23:03
FREE TIMEさんへ

過去や未来へ行き来するなら、あの中庭だけで十分だったのに、なぜにこうも一貫性のないままにしちゃったんでしょうね。
やっぱり細田守監督は脚本から手を引くべきでは?と思いましたよ。
8. Posted by にゃむばなな   2018年07月28日 23:05
ノラネコさんへ

作家性という面から見れば、確かに細田守監督は自身が描きたいことを描かれていると思います。
でもその描き方・伝え方が雇われ監督時代の方が良かったんですよね。
以前のような細田守監督は二度と戻ってこないなら、新たなる細田守監督の誕生に期待します!

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