カナダの女性アクチュアリーを紹介するフィナンシャルポストの記事「Joint Venture: Turning actuarial prowess into legal power

保険と年金の世界で働いていた彼女は2002年にオタワで起業した。アクチュアリアルなスキルを法定手続きに活用するために。

1970年後半からカナダの裁判所は、金銭的損失を決定するためにアクチュアリーのスキルが必要であると認識したという。

アクチュアリーは将来の事象を金額に換算するスキルを有する。訴訟では、死亡率、年金数理、将来の一連の支払を一時金額に換算する金利理論がよく登場する。他の専門職は、この種のトレーニングを受けていない。

彼女は時には原告、時には被告の為に働く。公平かつ客観的に。カナダのアクチュアリー会が定める実務基準の「公共の利益のために行動し、独立かつ客観的な助言と意見を提供する」という記載とも整合的だ。

彼女は言う。「I love it. Every file is different. I'm always learning.」

日本でも、例えば交通事故で死亡したケースの逸失利益が少なすぎるという意見もある。理論的には、逸失利益を計算するには死亡率と金利の概念が必要。でも、日本の法令では、電卓でも計算できる画一的な手法が用いられている。そして、中間利息の控除に用いられる金利は5%。

実際、「生命保険数学の基礎」の中でも以下のようなくだりがある。

「要するに、採用する金利で実際の支払額(すなわち、多くの場合、損害保険会社の負担額、ひいては自動車保険の保険料)が極端に変わることがわかるであろう。世情の金利状況にかかわらず5%の利率を用いるべきか否か、という問題が惹起されるのもやむをえないのである。」

生命保険数学の基礎―アクチュアリー数学入門
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また、「ブラックトライアングル」の中では、

「そもそもこの数字自体に妥当性があるのかという議論もある。ここで問題になるのが法定利率だ。法定利率とは、裁判で金利の計算が必要になった時に用いられる固定の金利であり、民法第404条では5%と定められている。ところが、この法定利率を定めたのは何と明治29年(1896年)なのである。もはや110年以上前のことだ。逸失利益の計算では、元本がこの5%で運用されていることを前提にして、ライプニッツ係数の値をはじき出しているのである。」

ブラック・トライアングル―温存された大手損保、闇の構造
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日本でも、いつかこの問題と戦うアクチュアリーが出てくるかもしれない。カナダのように。